プロフィール
杉岡 秀紀
杉岡 秀紀
1980年、奈良県生まれ。2003年同志社大学経済学部卒業、2007年同大学大学院総合政策科学研究科博士前期課程修了。2009年同博士後期課程退学。臨床政策学者。周旋家。2016年から福知山に移住。

専門は、公共政策、地域政策、地域公共人材論、大学まちづり論、NPO論、大学評価論。

大学時代から環境問題、まちづくりに関心を持ち、2003年にまちづくりNPO「きゅうたなべ倶楽部」を主宰(発起人)。地域に開かれた大学祭の創造や商店街活性化、フリーペーパーの発行・産学連携ITプロジェクト・商品開発・リユースフェアなどのコミュニティビジネスを武器に京都府南部地域におけるまちづくりに取り組む。

2007年からは、いったん地域から離れ、霞ヶ関(内閣官房)へ。行政改革推進本務事務局にて、社会保険庁改革に従事する。

同志社大学政策学部嘱託講師(2009〜2014)、一般財団法人「地域公共人材開発機構」事務局総括(2009〜2012)、京都府立大学公共政策学部講師・地域連携センター副センター長(2012〜2016)を経て、2016年秋より福知山公立大学地域経営学部准教授。京都府立大学京都政策研究センター特任准教授。

社会貢献活動として、龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター 客員研究員、一般財団法人地域公共人材開発機構常任理事、一般社団法人社会的認証開発推進機構評議員、NPO法人グローカル人材開発センター理事、NPO法人京都子どもセンター監事、きゅうたなべ倶楽部アドバイザー、真庭市政策アドバイザーなどを務める。

主な著書は、『地域力再生の政策学』(ミネルヴァ書房、2010年、共著)、『地域貢献としての大学シンクタンク』(公人の友社、2013年、編著)、『地域公共人材をつくる』(法律文化社、2014年、共著)、『住民自治を問いなおす』(法律文化社、2014年、共著)、『もう一つの自治体行革』(公人の友社、2014年、編著)、『持続可能な地域実現と大学の役割』(日本評論社、2014年、共著)、『地域力再生とプロボノ』(公人の友社、2015年、編著)『地域創生の最前線』(公人の友社、2016年、編著)、『自治体政策への提言』(北樹出版、2016年、共著)など。

大学時代(2000年)に結成したバンド「シカゴプードル」では、2003年に京都学生祭典(KYOTO STUDENT MUSIC AWARD)でグランプリを受賞。2004年にCDデビューも果たした(2006年に卒業)。

【HP】 http://sugiokahidenori.jimdo.com
【ブログ】http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/
【facebook】http://www.facebook.com/hidenori.sugioka/

【主な受賞歴】
2002年 「REALIZE In Kyoto(京都府南部地域における学生による地域政策・ビジネスコンテスト)」グランプリ受賞
2003年 「京都学生祭典 全国学生音楽コンテスト(kyoto student music award)」グランプリ受賞(Chicago Poodle)
2003年 「同志社大学育英賞」受賞
2004年 「エコ京都21」認定(きゅうたなべ倶楽部)
2004年  関西文化学術研究都市「都市びらき10周年」感謝状授与(きゅうたなべ 倶楽部)
2005年  内閣府「生活達人」認定
2005年  京都人間力大賞ファイナリスト
2007年  日本都市計画家協会「全国都市再生まちづくり会議」奨励賞受賞(きゅうたなべ倶楽部)
2012年  京都府「明日の京都」推進特別賞(地域公共人材開発機構)
2013年 「第7回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2013年 「第9回京都から発信する政策研究交流大会」優秀賞(杉岡ゼミ)
2014年 「京都府立大学学長賞」受賞(杉岡ゼミ)
2014年 「第10回京都から発信する政策研究交流大会」京都市長賞、優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2014年  2013年度京都府創発事業認定(京都丹波・写ガール隊)
2015年 「第9回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所賞受賞(杉岡ゼミ)
2015年 「2015年京都丹波観光プランコンテスト」優秀賞受賞(杉岡ゼミ・京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第4回 京の公共人材大賞」奨励賞受賞(京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第10回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所奨励賞受賞(杉岡ゼミ)
2016年 「京都府公立大学法人 理事長表彰」(京都丹波・写ガール隊、地域連携センター学生部会かごら)
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2017年06月25日

石川善樹『友だちの数で寿命はきまる』

石川善樹『友だちの数で寿命はきまるー人との「つながり」が最高の健康法ー』マガジンハウス、2014年。

タイトルだけ見ると「えっ?」と思いますよね。
しかも最近はSNSの浸透により、

「実際は会ったことことがない「友達」」

も増えています。

つまり、友達の定義も広義化している中で、そんな友達も含むの?との疑問も聞こえて来そうです。
そんな問いにも答えてくれるなるほどの一冊なっていました。

著者は石川善樹さんという方。予防医学研究者で(株)Campus for Hの共同創業者。
1981年の早生まれなので私と同い年です。
東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学にて博士(医学)取得された、
肩書きだけ見ると超エリートですが、意外にも文章はやわらかく、何より分かりやすい仕上げになっています。
最近はダイエット本や脳に関する著作もあるようです。

さて、内容ですが、今回のタイトルの根拠になったのは、2010年にアメリカのブリガム・ヤング大学の
ホルトランスタッドとい研究者によるもののようです。
何でも20世紀と21世紀に行われた148の研究(総勢30万人)をメタアナリシスした結果、寿命に与える影響は

①つながりがある
②たばこを吸わない
③お酒を飲み過ぎない
④身体を動かす
⑤太り過ぎない

という順位が明らかになったようです。

なぜつながりが健康(寿命)につながるのか?これについても様々な研究報告が紹介されます。
たとえば、シカゴ大学のカーマイン博士によって230人野球選手を対象に行われた笑顔に関する研究では、

「作り笑いでも寿命は2年延びる」

ということが分かったとか。この他にもアメラダ研究のバークマン教授の研究によれば

「お見舞いに来てくれる人が2人以上であれば6か月以内の死亡率は26%と低いが、0人だと69%まであがる」

という結果も出ているようです。

社会学で有名なグラノヴェッター教授の「weak tie(弱い絆)の強み」の話を思い出しますね。

また、SNSでのつながりついては、コーネル大学のジェフ・ハンコック教授らの研究が紹介され、

「ポイジティブな投稿を多くみた被験者は、ポジティブな投稿をする(その逆も然り)」

ということが明らかになっています。


では、ここまでは科学である程度証明されたとして、関心は、

「で、どうすればつながりを大事にして、寿命を伸ばせるの?」

という点だと思います。この点についても著者は具体的にアイディアを記しています。たとえば

①瞑想をする。
②弱さをさらけ出す。
③寄付をする。誰かのためにお金を使う。
④誰か(相手)を思いやる。
⑤妻(夫)に言葉と笑顔で表現する
⑥職場では、飲み会よりも雑談を重視する
⑦複数のコミュニティを属する。またその中で責任ある立場につく。

この他にもまだ色々とありますが、私が明日から出来そうでいいなと思ったものは以上になります。


最後にこの本の著者のご専門は予防医学でした。

病気にならないことは難しいですが、なるべく発症の確立を減らし、遅らせるためにも
つながりを大切にしたいですね。

(参考)目次

はじめに~「つながり」の世界へようこそ~

第1章 健康と寿命を決めるのは「つながり」だ。

私たちは病気を起こす大きな何かを見逃している。
孤独は喫煙よりも身体に悪い。
モーリス博士が発見した意外な事実
高血圧もタバコも健康に良いと考えられていた。
遺伝子では病気のリスクはあまり説明できない。
日本人は健康診断が大好き。
作り笑いでも寿命は2年延びる。
アカデミー賞を獲ると寿命が4年延びる。
ポジティブ思考は長生きである。
日本人は真面目だから長生き?
孤独な人は死亡率が2倍になる。
男子校の出身者は未婚率が高く、短命である。
「つながり」を拒む、孤独遺伝子の発見。
一方「つながり」遺伝子もある。
脳は「つながり」によって進化した。
「つながり」はなぜ健康に良いのか?
友達がもたらす、最大の効用。
中長期的展望がないと、生きる意欲が湧かない。

コラム 予防医学が教える最新健康常識1健康作りの目標設定のコツ


第2章 日本人の「つながり」の意外な問題点。

日本人は「つながり」が少なく、孤独死が多い。
汚いだけではないゴミ屋敷の怖さ。
お見舞に来てくれる人の数で死亡率が変わる。
弱い「つながり」がスネップ、ニートを救う。
男性は息子の嫁に介護されると長生き。
日本の高齢者は幸せ度が低い。
日本人男性特有の、宴会効果にご用心。
女性の方が男性よりも「つながり」を作るのがうまい。
女性は「つながり」をメンテナンスするのも得意。
妻は“定年後"に備えて「つながり」を再構築する。
夫は、犬の散歩で地域コミュニティ・デビュー。
男性にとっての戦略的老後の生き方とは。
日本人は休養の取り方を知らない。
積極的休養で「つながり」を作る。
「攻めの休暇」で仕事の能率も上がる。
低成長時代には仕事以外のアイデンティティを持つ。
日本人は4段階にわけて健康をデザインすべき。
76歳以上は毎日やっても飽きないルーティンを持つ。

コラム 予防医学が教える最新健康常識2サプリメントは健康作りに有効か

第3章 健康に効く「つながり」の作り方

「つながり」、その作り方がわからない人へ。
世界は6次の「つながり」でできている。
感情や行動は3次まで影響している。
「つながり」は質よりも量を追求した方がいい。
良い「つながり」、悪い「つながり」。
家庭での「つながり」の作り方ー「亭主関白」と感謝の言葉で夫婦関係を見直す。
妻に言葉と笑顔で感謝を表現する。
職場での「つながり」の作り方ー若い世代が職場で「つながり」を持とうとしない。
職場の同僚があなたの寿命を左右する。
鍛えるべきは、同僚との雑談力。
雑談が多いほど、生産効率も上がる。
社会的地位と寿命の関係。
地域でのつながりの作り方ー複数のコミュニティに属する。
コミュニティには責任ある立場で属した方が長生きする。
友人が増えると健康への意欲が高まり、親密度も上がる。
自身でのつながりの作り方ー瞑想で「つながり」を作る
姿勢、呼吸、心を順番に整える。
ポジティブになれるSNSは良い「つながり」である。
私は「つながり」を作るのがヘタだった。
弱さをさらけ出すと「つながり」が生まれる。

コラム 予防医学が教える最新健康常識3脂肪をめぐるウソとホント

第4章 「つながり」は心を健康にし、幸せを作る。

東洋と西洋とでは健康の定義が違った。
WHOの定義で健康の概念が変わった。
これからは心の健康の時代である。
ポジティブ心理学でわかった「幸せ」と「つながり」の大切さ。
人が幸せを感じる3つのパターン。
年収700万円を超えると幸せ感に差がない。
愚痴るとストレスが倍増して老ける。
世界のトップ企業が愚痴らない教育をしている。
思考と感情は変えられない。だから行動を変える。
イギリスで行なわれている「感謝の訪問」の効能。
寄付によって幸せ感は高まる。
ビル・ゲイツが寄付をする理由。
相手を思いやると幸福度が高くなる。
誰かのためにお金を使うと脳は幸せを感じる。

コラム 予防医学が教える最新健康常識4間違いだらけのダイエット法

おわりに~これから病気と元気を共存させる時代が始まる~


平成29年6月25日
杉岡 秀紀 拝


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年05月17日

【書評】『先生は教えてくれない大学のトリセツ』

田中 研之輔 『先生は教えてくれない大学のトリセツ』 ちくまプリマー新書、2017。

「大講義は聞きっぱなしでいいの?発表が苦手なのはなぜ?レポートはコピペじゃもったいない。
平凡なんてヤダと思う君へ」

「大学を卒業するとみんな就職するのに、大学では「その先のこと」は教えてくれない。
ただ漠然と4年間を過ごすのではなく、より良い未来を自らの学びで手に入れるのです」


これが帯や背表紙に書かれたメッセ―ジです。

事実、本書では、第1章から第3章にかかけて、講義やプレゼン、論文の書き方について
コンパクトにポイントがまとめられています。

(参考)目次
プロローグ 学費四三〇万円を無駄にしない
第1章 三〇分に一つの質問メモで講義を楽しむ
第2章 プレゼンは三回やれば好きになる
第3章 論文を磨く秘訣はチームワーク
第4章 バイトするならダブルワーク
第5章 白熱しない講義の裏事情
エピローグ 生き方をデザインする学び


その意味においては本書はトリセツ、すなわち「取り扱い説明書」にふさわしい内容となっていますね。

プロローグでも述べられているように、ぜひ現役の大学生はもとより、高校生、親御さん、大学関係者に加え、
筆者が強調されている「中2」の皆さんに読んでもらったら面白いと思います。

ただ、私が読んでいて一番共感したのは、

①米国の大学と日本の大学の違い
②昔の大学と今の大学の違い
③高校までの教員に求められる資質と大学教員に求められるそれの違い


でした。

①③はこれまでの色んな方が指摘されているので、割愛しますが、
②については、スマホ、いな、携帯がまだ普及時代に大学で学んだ経験がある者として、
本当になるほどな〜と考えさせられました。

つまり、

「昔の大学講義は回数も少なく、また板書型であったため、手を動かしながら学んでいたが、
現在は出欠が半ば強制され、ICTの普及もあり、手を動かさずになった」


という指摘です。

筆者はこの結果、ゆえに私語が増えたと論を展開しますが、私が感じたのは、
今後AIやIoTが進めば進むほど、私語の問題に留まらず、

「知識(記憶)の定着」

の観点から人間(脳)が退化するのでは、という危惧。

実際に我々20世紀に生まれた者の脳と21世紀のスマホネイティブの皆さんの脳では
使っている(発達している)箇所が違う、という指摘を聞いたことがあります。

哲学的なまとめになっちゃいますが、やはり

「何かを得ることは何かを失う」

ということですかね〜(その逆も然り)

ともあれ、時代の変化は早く、大学(教員も学生も)も常に変化(対応)が求められます。

「適者生存」

を肝に銘じつつ、明日からもがんばろうと思えた一冊となりました。

ちゃんちゃん。


平成29年5月17日
杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 18:59Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年05月08日

【書評】荻原浩『メリーゴーランド』


荻原浩『メリーゴーランド』新潮文庫、2006 読了。

タイトルからは想像出来ないと思うが、赤字の公共施設の立て直しを命じられた民間出身の自治体職員の奮闘記小説である。

本は毎日読むが、小説はあまり読まない私。だが、テーマが面白そうだったのでGWの一冊で読んでみた。

感想は小説として面白かったのは言うまでもなく、よく取材されててすごい、の一言。

公務員の体質、決裁文化、予算制度、出向制度、市長と議会との関係性、市長の権限と選挙、など教科書を読む前に副読本としても良いかもしれない。

また公務員を目指す人にも自治体職員のイメージを掴むためにオススメ。

もちろん普通の小説として楽しむのも問題ありません。

最後にメリーゴーランドとあるため、市営か三セクの遊園地かな、と思われた方はするどい(蛇足ですが、私も昔『メリーゴーランド』という曲をデビューアルバムに書いたことがあり、その曲が読書中、BGMとして頭の中をグルグル回り続けていました笑)

https://www.amazon.co.jp/dp/4101230331/  

Posted by 杉岡 秀紀 at 08:12Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年04月29日

【書評】観光立国の正体

藻谷浩介・山田桂一郎『観光立国の正体』新潮社、2016 読了。







まさに『デフレの正体』の藻谷浩介さんと「観光カリスマ」の山田桂一郎さんとのコラボならではのタイトル、そして内容であった。

本書のキーワードは

「ブルガーゲマインデ」と「感幸地」

である。

ブルガーとはドイツ語で「市民/住民」のことで、

「住民自治経営組織(役所や役場のような行政機関とは違う住民主体の独自組織)」

の意味とのである。

ともあれ、これまで観光というのは、ややもすると、観光協会や旅行代理店、行政が主導しがちであったが、これからの観光というのはそうではなく、スイスのツェルマットのようにブルガーゲマインデが中核となり、持続可能で自律的な「感幸」を作ることが重要であるという。

確かに日本では基本的に

「訪れたいまちと住みたいまち」

が別個に議論されているきらいがある。

その証拠に、いわゆる観光地であるにも関わらず、人口減少が止まらず、賛否はともかくとして「消滅可能性都市」にノミネートされているまちなどはその典型なのだろう。

本書ではそうではなく、まさにリピーターをどのように作るか、すなわち

「訪れたいまち=住みたいまち」

にすべきではないか、と投げ掛ける。

色々と新しい気づきがあったのだが、詳細は読んで頂くとして、ここでは私が響いた言葉だけを列挙しておきたい。いずれも至言ですね。
(藻谷さんは基本的に対談しか登場しないので、表記がなければすべて山田さんの発言)

・「住民の生活満足度を満たすことを最優先して地域を育てていくと、住民の表情や態度はごく自然に生き生きとしてくるもの」(p.26)
・「高品質・高付加価値体質と共に質的向上を続ける経営体質」(p.39)
・「リピーターあってのサービス業」(p.45)
・「観光だけではまちおこしはできない」(p.47)
・「観光は世界のGDPの約1割を占める」(p.51)
・「ヨーロッパを始め世界の観光統計は全て「延べ泊数」」(p.53)
・「地域のやる気の人々が少人数でも良いので団結し、目先の利益を超えて「一緒に稼ぐ」ことを前提に、地域内利潤を最大化させる」(p.60)
・「お客様一人一人の消費額を高めるためには、(中略)むしろ一分一秒でも長く「時間を作ってもらう」発想が重要」(p.68)
・「住民参加ではなく、行政参加」(p.82)
・「一期一会は一語一笑」(p.105)
・「地産地消より地消地産」(p127)
・「地域経営を担う自治体の多くは、理念がないか、不明瞭の状態のまま」(p.130)
・「マーケティングとは、顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動の全て」
(p.158)
・「今、国内旅行は個人客が中心で、周遊よりも一箇所で連泊を選ぶ方が多くなっています」(p.161)
・「デスティネーションキャンペーン(中略)はドーピングキャンペーンと呼ばれています」(p.163)
・「マーケティング4.0(自己実現満足)では、顧客が享受する商品・製品・サービスにより要望、欲求が達成されたかどうかの結果が重視される」(p.167)
・「ヤクゾンビ(役職だけを欲しがる役害)」(p.179)
・(藻谷)「経営学では、SWOT分析が流行っている(中略)けど、これは観光業の分析ではワークしない。なぜか。SWOTはお客は誰かによって変わるから」(p.205)
・「一度外に出るのは良いと思うのですが、二度と帰ってこないことが問題」(p.240)



最後に目次は以下のとおりである。

(参考)『観光立国の正体』目次
はじめに 観光業界の「ルパン」 藻谷浩介

I 観光立国のあるべき姿 山田桂一郎

第1章 ロールモデルとしての観光立国スイス
「非日常」よりも「異日常」を/リピーターを獲得せよ/常に生き残るために必死な国/英国富裕層によって「発見」されたアルプスの山々/目前の利益を追わず、「ハコモノ」を作らない/国そのものをブランド化/日本の観光地がダメになった理由/寂れた観光地に君臨する「頭の硬いエライ人」/「観光でまちおこし」の勘違い/「人手がかかる産業」を大事にせよ

第2章 地域全体の価値向上を目指せ
キャパシティを増やさず、消費額を引き上げる/ブルガーゲマインデという地域経営組織/足の引っ張り合いを避け、地域全体の価値向上を/地元で買う、地元を使う/スイスの観光局は自主財源を持った独立組織/自然と調和した景観を保持/馬車と電気自動車がもたらす「異日常」/「時間消費」を促すことが「地域内消費額」をアップさせる/ガイド・インストラクターは憧れの職業/最も重要なのは人財

第3章 観光地を再生する──弟子屈町、飛騨市古川、富山県の実例から
地域振興に必要な住民主体の活動/忘れ去られた「高度成長期型」の観光地/「住民主体、行政参加」の組織に一本化/住民ならだれでも参加OK/株式会社を設立、初年度から黒字に/エコロジーとエコノミー/外国人旅行客に大人気の「里山体験」/「なんにもない」から「クールな田舎」へ/とやま観光未来創造塾/「新幹線効果」の誤解/国際水準とユニバーサルツーリズム

第4章 観光地再生の処方箋
「ピラミッド型のマーケット」を構築せよ/富裕層を取りはぐれている日本/北海道の「一万円ランチ」に人気が殺到した理由/負のスパイラルを防げ/格安ホテルチェーンが地域を壊す/近隣のライバルと協力した方が儲かる/休日分散化を真剣に考えよう/社会全体に「観光」を位置づける重要性/「地産地消」より「地消地産」/高野山が外国人に高評価のワケ/明確な将来像を描け

II 観光立国の裏側 藻谷浩介×山田桂一郎

第5章 エゴと利害が値域をダメにする
「地域ゾンビ」の跋扈/間違った首長が選ばれ続けている/「改革派」にも要注意/行政が手がける「劣化版コピー」の事業/補助金の正しい使い方/ボランティアガイドは「ストーカー」と一緒/観光業界のアンシャンレジーム/JRの「ドーピングキャンペーン」/顧客フィードバックの不在/竹富町の革新的試み/自治体の「旅行会社依存体質」/有名観光地でゾンビたちが大復活! /観光庁の構造的問題

第6章 「本当の金持ち」は日本に来られない
世界一の酒がたったの五〇〇〇円/「アラブの大富豪」が来られるか/近鉄とJR東海という「問題企業」/「ポジショニング」を理解せよ/野沢温泉と白馬/悩ましい大手旅行会社との関係/玉石混淆のリクルート

第7章 「おもてなし」は日本人の都合のおしつけである
北海道ガーデン街道/「熱海」という反面教師/せっかく好循環が生まれても……/大河ドラマに出たって効果なし! /戦術の成功、戦略の不在/頑張っても大変な佐世保/「爆買い」に期待するなかれ/「おもてなし」は日本人の都合の押しつけである/医療ツーリズムでも「マーケットイン」が不在/カジノが儲かるという幻想/それでも日本の観光には無限の可能性

おわりに 山田桂一郎


平成29年4月29日

杉岡 秀紀 拝  

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2017年01月09日

【書評】高野誠鮮『頭を下げない仕事術』(宝島社、2016)

高野誠鮮『頭を下げない仕事術』宝島社、2016。

https://www.amazon.co.jp/頭を下げない仕事術-高野-誠鮮/dp/4800231477/

「ローマ法王に米を食べさせた男」。



「スーパー公務員」

この言葉で高野さんの顔が浮かんだ人は、地域通、公共通(こんな言葉あるかな笑)の方だと思います。
また、

「ん?何かドラマで見たぞ」

と思った方は情報通ですね。というのも、東京都職員扮する唐沢寿明が過疎地域に出向し、
地域づくりを展開するドラマ

「ナポレオンの村」

のモデルが、言わずもがな、高野さんでしたから。


本書のはじめに(p.5)にもあるのですが、高野さんのデビュー作であり、代表作となった

『ローマ法王に米を食べさせた男』(講談社α新書、2015)

は高野さんの仕事において

「何をやったか」

をまとめた本でした。それに対して本書は、

「どうやったのか」

の本と言えます。
(補足をすれば、ローマ法王に留まらず、「一地方公務員」という立場でありながら、
NASAやロシア宇宙局、石破元大臣などトップを動かしてきた)

目次は下記のとおりです。

はじめに 仕事でやってはいけない、あること
序 わたしが「ローマ法王に米を食べさせる」まで

◆第1章 仕事以前のこころ構え
仕事術1 「やろうと思う」を「やってみる」に
仕事術2 目標を周囲に宣言する

◆第2章 「情報」と「人脈」の生かし方
仕事術3 すべての「情報」は「発信源」にあたる
仕事術4 「好奇心」を情報収集に生かす
仕事術5 「大きな人」とつながる

◆第3章 成功への「戦略」
仕事術6 「戦略」は立てても「計画」はしない
仕事術7 戦略はアメリカを参考にする

◆第4章 相手のこころを動かす
仕事術8 交渉では「お願い」しない
仕事術9 はじめに「相手の喜び」を考える
仕事術10 「条件」をつきつけない

◆第5章 価値を高めて売る
仕事術11 売りたい時ほど、売らない
仕事術12 大々的に宣伝しない
仕事術13 情報は「遠方」から流す

◆第6章 仕事をつぶす「余計なもの」
仕事術14 「金色夜叉」にとらわれない
仕事術15 「嫌われる覚悟」をもつ
仕事術16 「セクショナリズム」に呑まれない
仕事術17 「余計なもの」を入れない

◆第7章 挫折を乗り越える
仕事術18 挫折のときには「雑草の根」を見る
仕事術19 ピンチを「チャンス」と考える
仕事術20 「頭」ではなく「身体」で考える
仕事術21 「肩書き」がないことを「強み」にする

◆第8章 大きな仕事をするために
仕事術22 大きな視点をもつ
仕事術23 敵を味方にする
仕事術24 神仏を敵にしない

この中で私が特に勉強になったのは、

「頭を下げないことで、利他の心で仕事ができる」

という一見矛盾しそうな、それでいて言われてみれば納得する至言でした。

すなわち、仕事を進める上で最も重要なのは、「利他のこころ」であり、
相手のためを思い、提案を持ちかけるのであれば、頭は下げようがない。
頭を下げるのは「利己」だからだと。

じゃあ頭を下げる代わりにどうするか。

「利他の心で行動し、協力をしてほしい人には良い質問をすればいい」

と高野さんは喝破します。

そして、もう1つ重要な学びがありました。それはこうした言わば

「高野哲学(「人体主義」とも説きます)」

はどこから生まれたのかのルーツについて。

その1つが仏教であり、いま1つはコールマンという米国の元将校、そして最後は元職場の直属上司の一声
ということが本書から分かりました。

高野さんにはつい先月、府北部は京丹後市に講演のためにお越し頂き、ランチもご一緒させて頂きましたが、
講演の中でも、書物の中でも、また日常会話の中でもぶれない軸というものも感じざるを得ません。

本書では強調されていませんが、この高野哲学を作ったのも頭ではなく、人体主義そのものだったのですね。


というわけで、最後に本書の至言をご紹介しておきます。

・どんなに仕事ができる人でも、いつも鉄仮面のような表情で冷めてばかりいては、周囲に人はついてこない。涼しい顔をして、適当に流して、何か大きなことをなした人にはあったことがない。何か大きなことを成そうと思ったら、「熱量」が必要不可欠。

・知っていることは、体を駆使し、体にしみ込ませて初めて使えるようになる。これが識(し)るということ。

・人脈を生かすというのは、人を利用することではなく、相手が喜び、自分も喜び、相手が喜んで協力してくれること。ウィウィンの関係にしないと人は動いてくれない。利他の気持ちを持つこと。ただひたすら頭を上げるのではなく、相手の喜びを考え、行動する。

・戦略を立てる際に気をつけなくてはならないことがある。それはやったことがない人=「予言者」の言葉に惑わされないこと。「予言者」の言うことは耳は貸さない。

・コミュニティの中にいると内部の悪いことしか見えてこず、なかなか良いところには気づかない。日本人は特にその傾向が強い。自分の子どもは悪いところがよく見えて叱るけれど、他人の子って、良いところがよく見える。それと同じ。

・情報は遠くから、多くの場所を通過して発信元に戻ってくることで、その価値があがる。(中略)情報を流すなら、今いる場所からできるだけ距離が離れた遠方に飛ばした方が勢いをもって戻ってくる。

・仕事をしていくうえで、あまり関わらない方が良いというタイプの人。①失敗の心配ばかりする人、②「知」を「識」にしていない人、③私心(金色夜叉=金欲+権力欲)だけの人。

・様々な問題を考えていくうえで「人体」を用いて考える「人体主義」を意識するよう心がけている。村を人にたとえて考えることで様々な道が開け、それまで思いつかなかった解決策がみつかる。村はいくつもの家族から構成されている。家族は人の集まり。結局村というのは人の集合体

・会社のためを考え、相手が喜ぶようなことを考え仕事に取りくんできた人は、みんな惜しまれながら退職する。これが「枯れる」姿。我欲という余計なものこころにいれず滅私奉公で勤め上げてきた人間というのは枯れる。しかし、自らの金欲や出世欲のためだけに働いていた人間は決して枯れない。余計なものでこころが満たされるので腐る。

・視野が狭い人間というのは、「立場が違う」「言っても無駄だ」「どうせ認めてくれない」などとやってものないくせに「出来ない理由」ばかりを並べ立てる。否定から入るので努力もしない。視野の狭さは愚痴につながる。(逆に)視野が広がると行動につながる

・騙さない。ごまかさない。卑怯な真似をしない。偽善を行わない。他人を蹴落とさない。自分の利益だけを追求しない。神仏を敵に回さない生き方をしよう。


平成29年1月9日
杉岡 秀紀 記


  

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2016年12月31日

2016年10大ニュース

年の瀬ですね。

年々過ぎ去る日々が早くなっている感じがします。

というわけで、記憶の記録に留めるために、毎年恒例の

「10大ニュース」

を記しておきましたと思います。

【10位】高知への出張×4

今年は高知に4回出張に行くご縁がありました。

1回目は京都府北部地域・大学連携機構の仕事(バーチャル大学部会視察)、2回目は京都府立大学の京都政策研究センターの仕事(協働研究視察)、
3回目は与謝野町の仕事(総合計画の視察)、4回目は福知山公立大学の将来構想委員会の仕事(公立大学先進事例視察)です。

同じ地域に4回目も視察に行くことはなかなかないですよね。
とりわけ、高知大学の存在感を感じ続けた一年でした。


【9位】母校からの取材

「京田辺キャンパス開学30周年」

ということで、母校の同志社大学から取材が来ました。

私の今があるのは、京田辺のお陰と言っても過言ではなく、
最近はあまり恩返しが出来てなかったので、メッセージだけでも貢献でき、何よりでした。

https://www.doshisha.ac.jp/attach/page/OFFICIAL-PAGE-JA-117/78000/file/no189.pdf


【8位】第10回全国大学まちづくり政策フォーラムin京田辺で奨励賞受賞

毎年京田辺で開催され、ゼミで出場している

「全国大学まちづくり政策フォーラムin京田辺」

で杉岡ゼミ生が

政策マネジメント研究所奨励賞

を受賞しました。

https://www.kyotanabe.jp/0000009241

第10回という節目の回でもあり、学生にとっても教員にとっても印象深い受賞となりました。


【7位】国の委員でネット会議

京都で仕事をご一緒させて頂いたご縁で

「国土交通省の建設業イメージアップ戦略実践PT」

http://www.mlit.go.jp/common/001141404.pdf

の委員をさせて頂くようになりました。

この委員会のメンバーは東京から九州まで幅広くいるため、最初の委員会こそ東京で集まりましたが、
あとの分科会(ワークショップ)はネット会議(スカイプビジネスというソフト)で参戦。

これからは物理的な距離よりもミッションの距離が重要になるかもですね。


【6位】2冊の共著本出版

毎年1〜2冊ずつ出させてもらっている共著本ですが、今年は政策フォーラムのことを題材にした

『自治体政策への提言』

http://www.hokuju.jp/books/view.cgi?cmd=dp&num=995&Tfile=Data

という本と、地方創生本で

『地方創生への最前線』

https://www.amazon.co.jp/地域創生の最前線-京都政策研究センターブックレット-青山-公三/dp/4875556810/

という本を出版させて頂きました。

特に『自治体政策への提言』は【8位】の政策フォーラムとセットの存在になっています。


【5位】日本地方政治学会・地域政治学会「現代政治コンペ審査委員長」、日本オンブズマン学会「企画委員」拝命

今年は所属する2つの学会でお仕事させてもらいました。

一つは日本地方政治学会・地域政治学会で

現代政治コンペ

の審査委員長として大学生チームの10チームの審査をさせて頂きました。今年のテーマは

「18歳選挙権と民主主義:若者の政治参加に向けて」

という1テーマだったのですが、大学生らしいアプローチもあれば、
大学院生顔負けの研究的アプローチのものもあり、こちらも多いに勉強になりました。

https://chihoseijigakkai.jimdo.com/総会-研究大会/地方大会/2016年度/

また、開催は次年度ですが、来年4月に福知山で開かれる日本オンブズマン学会の企画委員も拝命しました。
こちらも良い学会になるよう、がんばります。

http://jpn-ombudsman.org


【4位】母の足の手術

私ごとになりますが、母の足の状態が思わしくなく、10数年前から生活に支障が出ておりました。
(病名は変形性股関節症)。

他方で、手術するまでの勇気までなかなかいかず膠着状態が続いてました。

ただ、今年は母の気持ちの整理もでき、また縁あって京都の

「第二日赤病院」

にお世話になれることとなり、3週間の入院で手術も一気に終えることができました。

執刀医の先生も看護師の皆さんも素晴しく、本当にすばらしい病院でした。
改めて感謝申し上げます。

https://www.kyoto2.jrc.or.jp/patients/diagnosis/orthopedic/


【3位】雑誌「致知」への掲載

「致知」

という人間学が学べる素晴しい雑誌があります。
10万人の以上の読者がいますが、本屋さんでは買うことができないので、
知る人ぞ知る雑誌かもしれません。

私自身との出会いは12年前になりますが、この雑誌から学んだことは計り知れません。
ですので、この雑誌を広めるのが私のささやかな恩返しでもあったのですが、
今年は図らずも登場させて頂く機会を得ました。内容は

「20・30代のための人間力養成講座in福岡」

1000人以上の読者の皆さんの前でスピーチをさせて頂いたものの報告記事になります。

http://www.chichi.co.jp/kiji/2016_20_30/result/

スピーチ内容については、以下にアップしていますが、色んな意味で意義深い機会となりました。

http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/e122414.html


【2位】恩師の逝去

今年9月24日に人生の師との悲しい別れがありました。

私にとっては、実の父を亡くした時と同じくらいのショックで、
悲しみにくれました。

2位としていますが、順位は付けられない、というのが本当の気持ちです。

想いは以下に記しました。

http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/e122294.html


【1位】福知山公立大学への移籍、福知山市への移住

縁があり、5年間務めた公立大学(京都府立大学)から公立大学(福知山公立大学)に本務校が変わりました。

と同時に、住居も京都市から府北部(福知山)へと家族で移住しました。

想いは下記に記しましたが、毎日が地域創生、本気で地域創生の日々です。

http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/e122347.html


というわけで、本年も大変お世話になりました。

来年もどうぞよろしくお願いします。


平成28年12月31日

杉岡 秀紀 記  

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2016年12月04日

【書評】『人生の「ねじ」を巻く77の教え』

日東精工株式会社企画室『人生の「ねじ」を巻く77の教え』ポプラ社、2014。

https://www.amazon.co.jp/人生の「ねじ」を巻く77の教え-一般書-日東精工株式会社-企画室/dp/4591140059

「ねじとはモノとモノをつなぐもの。ねじによってモノがつくられ、モノを介して人と人とはつながります。私たちがつくるねじは、心と心を締結する、そんな役割を担っています」

こんな書き出しから本が始まります。

著者は個人ではなく日東精工株式会社企画室。
初めて耳にする人も多いと思いますが、この会社のお世話にならなかった方はおそらくいないと思います。
というのも、日東精工は世の中に流通する様々なねじ、自動ねじ締め機、ねじ締めロボット、計測制御機器の会社であり、
特に精密ねじ、極小ねじの分野ではわが国ナンバーワンのシェアを誇るからです。
つまり、自動車や家電、デジカメ、パソコン、携帯電話、医療器具を使っている人なら、
意識するしないに関わらず日東精工のねじを手にしているのです。

確かにねじから教わることは本当に多い。
ねじは緩むことがないようにするのが基本ですが、外したい時に外れないと困る。
一見矛盾している2つのことを両立させる必要があるわけです。
これは仕事に相通じますね。
また強く締め過ぎれば良いとういことでもないく、加減が大事です。
これも仕事や人生に相通じる部分がありますね。

加えて、ねじとはそもそも実に目立たない存在で、空気のような存在ですよね。
「ない」と困るのですが、なかなか「ある」ことそのものの価値を感じる機会が少ない。
これって家族や友人など身近な人にも同じことが言えるかもしれません。
『星の王子様』よろしく

「大事なものは目に見えない(見えにくい)」

ということですね。

だからこそ、ねじの会社で大事にしている哲学(研修資料)はもしかしたら会社以外の人に言えることも多いのではないか、
そのような声に応えて出来たのが本書ということです。

以下、私が印象に残った箇所を抜粋して紹介します。

日東精工「似ているようでまったく深さの違う言葉。「磨く」と「拭く」。拭くだけでは光らないが、磨けば光る」
日東精工「サラリーマンという仕事の種類はない。あなたの仕事にキャッチフレーズを」
日東精工「言葉を濁らせると「くち」は「愚痴」に、「とく」は「どく」になる。濁点を取って明瞭に」
日東精工「チャンスとオポチュニティは違う。チャンスは棚からぼた餅。オポチュニティは意図して生み出す機会」
ウィルファード・アラン・ピーターソン(米国作家)「寛容とは、暖かさのことである。それは、あらゆる相場を越えて友情の手を差し伸べることである。寛容とは、フェア・プレイすることである。それは、むりやり自分の考えを人に押しつけない。寛容な人は、自分自身の立場は決めていても、人に対しても同じ自由を求める。寛容とは、人を見下げず、人を見上げることである」
湯川秀樹(日本人初のノーベル受賞者)「長い夜を泣き明かしたことのない人間に、人生を語る資格はない」
ブルータス(『ジュリアス・シーザー』)「目は己を見ることができぬ。何か他のものに映してはじめて見えるのだ」
デットマール・クラマー(日本サッカー界生みの親)「好きというだけでは一流になれない。愛することによって始めて一流への道が開かれる」


こんなことを研修で確認されているなんて素敵な会社ですね。
ちなみに日東精工は京都は府北部の綾部に本社を置く会社で、地域貢献、社会貢献に社員を挙げて力を入れておられます。
(本書の売り上げも地域のために寄付されているとか)

http://www.nittoseiko.co.jp/news/books-presentation.html

心のねじが締まり過ぎたり、緩み過ぎたりしたりと感じた時にぜひ一読したい一冊です。


平成28年12月4日
結婚記念日に自戒を込めて
杉岡 秀紀


  

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2016年11月26日

京都・あやべスタイルと地方創生

いま綾部に良い風が吹いている。
もちろん風にも「追い風」と「逆風」があり、ただ吹いていれば良いというものでない。
ご多分に漏れず綾部も人口減少の波にさらされている。人口は35,000人を切った(11月1日現在で34,586人)。
その意味においては「追い風」とともに「逆風」も吹いている、というのが正確だろうか。
しかし、明らかに逆風よりも強い「追い風」が吹いているのが私の実感である。

その最新の「追い風」となったのが今月発刊された

『驚きの地方創生〜京都・あやべスタイル』(蒲田正樹、扶桑社新書、2016)

サブタイトルは

「上場企業と半農半Xが共存する魅力」

本からも抜粋しつつ、少し綾部の魅力をフレーズ的に記してみる(本にはないことも記載)。

①京都府最大級の古墳(私市円山古墳)がある(しかも古墳の下に高速が通っている)。
②国宝(聖徳太子開創の光明寺仁王門)がある。
③足利尊氏の産湯に使った井戸がある。
④平家の落人が隠れ住んだと言われる地域(黒谷)があり、和紙が有名である(地元学校の卒業証書も黒谷和紙)。
⑤大本教や合気道の発祥の地であり、精神性が高い。
⑥お茶,お米、イノシシ・鹿などのジビエ、栗や黒豆、北大路魯山人が絶賛した鮎など美味しい食がある。
⑦グンゼの発祥の地であり、現在綾部本社やバラ園、記念苑がある。また、精密ねじのトップメーカー日東精工の本社があるなど上場企業の本社がある。
⑧京セラ、カルビー、住友理工などの全国的にも有名な企業が入る工業団地がある。
⑨FMいかる、あやべ市民新聞など地域に溶け込み、信頼されているローカルメディアがある。
⑩星がきれい。スターウォッチングができる天文館(パオ)もある。
⑪全国に先駆けて「世界連邦都市宣言」をし、現在234都市に広がっている。
⑫2006年に水源の里条例を制定し、日本で一番少ない水源の里4人の古屋の地域づくりは全国的に注目される
(住民現在170自治体が参加する連絡協議会の事務局も担っている)
⑬半農半Xという生き方を提唱した塩見直紀さんがおられ、全国、世界に半農半Xのコンセプトを発信
⑭若い世代や手に職を持ったIターン者がどんどんと転入しながら、新しい地域づくりに励む地域(志賀郷)がある。
⑮「森の京都」の地域として、木材市場や加工場、また小学校の空き校舎を活用した里山交流センターがある。


といった具合である。まだまだあるが、これくらいで十分すごさは伝わると思う。

とかくこうした魅力を全国に発信してくれたのが鎌田さんの綾部本であった。


さて、そんな綾部を舞台に今月23〜25日に総務省の外郭である(一社)地域活性化センターと一緒に

「地方創生実践塾」

https://www.jcrd.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=1394:平成28年度第8回地方創生実践塾_京都府綾部市「地域資源を最大限生かした企業・npo・市民・行政協働のまちづくり」&catid=87:practice&Itemid=609

を企画させて頂いた。

主任講師は私が務め、これまでの綾部での演習経験をベースに全国の自治体職員向けにアレンジを加えて、
とかく綾部を5感で触れられる機会をつくらせてもらった(上記で言うと⑥⑦⑨⑫⑬⑮)。

その名(タイトル)も

「地域資源を最大限活かした企業・NPO・市民・行政のまちづくり」

幸いすぐに定員(36名)が埋まり、キャンセル待ちも出た。概要は以下のとおり。

【11月23日(祝・水)】
12:30~13:00 受付(グンゼ記念館)
13:00~13:05 開講式
13:05~13:50 講義1 松原哲也 氏 / 朝子直樹 氏(綾部市職員)
           「綾部の地域振興施策~定住促進と水源の里」
13:50~14:50 フィールドワーク1 グンゼ㈱ 「グンゼ記念館の見学」
14:50~16:00 講義2 塩見直紀 氏(半農半X研究所代表)
           「地域資源の見つけ方/新しいコンセプトのつくり方/情報発信方法について」
16:00~16:45 講義3 杉岡秀紀(福知山公立大学准教授) 「フィールドワークとソーシャルデザイン」
17:30~19:30 交流会 ※山﨑市長も参加

【11月24日(木)】
8:30~ 9:00 講義4 朝倉 聡 氏 「綾部市里山交流研修センターでの校舎活用」
9:15~10:00 講義5 伊東宏一 氏(京都丹州木材協同組合理事長) 「京都丹州木材市場について」
10:00~10:10 フィールドワーク2 同上 「木材せり市(秋の特別市)の見学」
10:50~11:50 フィールドワーク3 山城睦子 氏(黒谷和紙協同組合専務理事) 「『黒谷和紙工芸の里』の見学」
12:10~13:30 昼食
14:00~17:00 フィールドワーク4 渡邉和重 氏(古屋自治会長) 「『水源の里・古屋』の見学と交流」
18:00~19:00 夕食

【11月25日(金)】
8:30~ 9:00 講義6 村上 正 氏(空山の里理事長) 「地域の売店を守る~『空山の里』の取り組み」
9:00~ 9:45 講義7 長島啓子 氏 (京都府立大学助教)「GISを活用した森林・林業の新たな情報戦略」
9:45~10:30 講義8 宮藤久士 氏 (京都府立大学教授)「新たな木材・木質バイオマス利活用の活性化策」
10:30~12:00 ワークショップ 青山公三 氏(京都府立大学京都政策研究センター長) & 中越 豊 氏(京都府) 「森の京都のさらなる活性化策」
12:00~12:05 閉講式
12:05~12:15 フィールドワーク5 「『空山の里』見学」

3日間で出たキーワードをざっと記してみよう。

・水源の里 
・上流・下流 
・郡是 
・日東精工 
・世界平和宣言 
・波多野鶴吉
・前田正名
・川合信水 
・半農半X 
・コンセプト 
・フィールドワーク 
・ソーシャルデザイン 
・小学校活用 
・丹州材 
・海は森の恋人 
・黒谷和紙 
・限界集落 
・とちの実 
・先人の知恵 
・諦めない 
・極楽 
・空山の里 
・GIS
・森林情報 
・適地適材 
・バイオマス 
・CLT 
・森の京都
・空山の里
・フューチャーデザイン


これらの多くは本来一つ一つを丁寧に掘り下げるべきくらいの大きなキーワードであろう。
しかし、バラバラに感じるのではなく、シャワーのようにキーワ―ドのシャワーを浴びることで
初めて見えてくるものもある。

それがまさに冒頭で述べた

「綾部に吹く風」

というものなのである。


ここで全体をコーディネートさせて頂いた立場から3日間の学びを私なりに3点ほど整理してみたい。

①お腹と背中、表裏、陰陽

1点目は地域は常に「お腹と背中(表裏、陰陽)を見ないといけない」ということである。

たとえば、綾部にはこんな言葉がある

「上流は下流を想い、下流は上流に感謝する」

これがまさに水源の里の語源にもなっている。

この哲学は宮城から生まれた

「森は海の恋人」

とも通底するものがある。とかく片方だけから見るのは危険であるという警鐘でもある。

このことは地方創生とて同じことで、東京から見れば「地方創生」かもしれないが、
地方から見れば「地域創生」「地域づくり」、もっといえば「日常」に過ぎない。

限界集落や人口も同じである。数だけでれば限界に見えるかもしれないが、
綾部の古屋の渡辺さんのお話は平均80歳を越え、働き続けるおばあちゃんたちの背中を見ると、
そこには

「可能性集落」

と呼びたくなるヒントがたくさんある。

つまり、人口も数だけで見るのではなく、

「人生の数」

と見なくてはいけないのである。


②ビスマルク名言の修正

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

この言葉は宰相ビスマルクの言葉であるが、綾部というまちはまさに
歴史に学び、歴史を活かし、歴史をつくっている。

しかし、綾部では、過去から現在のベクトルだけに留まらない。

グンゼ博物苑に行くと、そこには50年後の綾部を描いた素晴しい絵を見ることができる。
すなわち、単に過去だけでなく未来、換言すれば

「フューチャーデザイン(7世代後の社会を考える)」

もかいま見ることもできるのである。

その意味ではビスマルクの言葉も

「愚者は経験に学び未来をつくれず、賢者は歴史に学び未来をつくる」

と言葉を補った方が良いのかもしれない。


③最後はひと、最後は気

「まちづくりはひとづくり、まちづくりはファンづくり」

と昔から言われる。その通りである。

先ほどのキーワードの中にも多くの人物名が出てきているのはその証左であろう。

しかし、もう一歩踏み込むならば、

「最後は気」

ということも言えるのではないだろうか。どれだけ素晴しい能力をもった人や条件が揃っていても、

「やる気、勇気、元気、根気、負けん気」

がなければ資源も人も活かしきれない。京セラ創業者の稲盛和夫氏もかつて

「情熱×能力×考え方が重要」

と言ったが、この考え方がまさに「気」に通ずる。

この点については、古屋自治会長の渡辺和重さんが実に面白いことを仰っている。

「限界をアルファベットで書くとGENKAIですよね。このA、すなわち「諦め」を取ったらどうなりますか?GENKI(元気)になるでしょう」

ウィットにも富み、至言である。

まさに実践者、現場ならではの実感が込められていると思う。


言うまでもなく、この研修だけだけで、参加者のマインドが全て変わる訳でないし、
またただちにその地域が180度変わるわけではない。そんな打ち出の小槌はこの世に存在しないし、
存在すべきでもない。

しかし、何かしらの「次に一歩踏み出すための気づき」が提供できたのであれば、企画者冥利に尽きるというものである。
何よりそのような資源(たから)で綾部はじめ府北部は溢れている。


最後に冒頭のあやべ本の帯に寄せた藻谷浩介氏のコメントで締めくくるとしよう。
これが今回の綾部における研修、そして綾部の魅力を一言で言い当てている。

「綾部は世界のどこに出しても胸を張れる、全国でも数少ない街。ここに日本と世界の先端があります」


追伸

企画段階からお世話になった地域活性化センターの皆さん、地元のコーディネートと会場提供を頂いた里山ねっと・あやべさん、
講師役をお務め頂いた皆さんにこの場をお借りして、改めて感謝申しあげます。

平成28年11月26日
杉岡 秀紀 記

  

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2016年11月20日

【書評】『未来につなげる地方創生〜23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ〜』

内閣府地方創生人材支援支援制度車編集チ–ム編『未来につなげる地方創生〜23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ〜』日経BP、2016 読了。

いわゆる「日本版シティマネージャー」として昨年度実施された地方創生性政策の成果と課題をとりまとめた書。

横浜や氷見市、うきは市のように、これまで国家公務員や民間人材が自治体職員になった例はないことはないのだが、

①人口5万人未満(全国に約1200)の自治体に派遣
②国家公務員や民間企業だけでなく大学教員も含めて派遣
③副市長からアドバイザーまで多様なポストで派遣

という例はなかった。

その数127自治体(事例)。

これを多いと見るか、少ないと見るかは評価が分かれるだろう。また、そもそも1年という短いタームかつ、戦略づくりが中心であり、実施部分が手薄であるとの指摘は免れないだろう。

しかし、本書を拝読すると、少なくとも紹介されている23の自治体では「よそ者」ならではの活躍があり、何かしらの良い変化(成果)が起きているようだ。

残り100ちょっとの成否も気になるところであるが、ともあれ「まちづくりはひとづくり」「まちづくりはファンづくり」の立場から見れば、人に投資をした政策的意義は一定合ったのだと思う。

あとはこうした点を線にすべく、国側も地域側も単発で終わらせない工夫が必要である。

むしろ試されるのはこれから、と言えるだろうか。

https://www.amazon.co.jp/未来につなげる地方創生-23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ-内閣府-地方創生人材支援制度-派遣者編集チーム/dp/4822235726/


  

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2016年11月19日

みんな×みらい×みえるまち

ロボット職員 
庁舎不要 
バーチャル授業 
自動運転による
泳げる川
イルカが見える海
草刈りルンバ
芸能人に人気の豆ッコ米 
制服が着物
みんなで子育て・孫育て
高齢者・障がい者という言葉を無くす 
高齢者シェアハウス


これらは全て一つの自治体の職員から出てきた

「24年後のまちの未来像」

である。非常に創造的な視点、アイディアばかりである。

現在、京都府与謝野町では未来思考の面白い動きが起きている。

対象は行政の最上位計画に位置づけられる総合計画づくり。
与謝野町は3町の合併で出来たまちであるが、来年度に第一次総計が終了することを受け、第二次総計では、

①みえるまちのためにつくる(創造的計画)
②みらい志向でつくる(長期的計画)
③みんなでつくる(総合的計画)


という3つのコンセプトで総計づくりを始めているのだ。
(私は総合計画策定アドバイザーとして伴走している)

今年度は③みんなでつくるを実践するために、まずは職員のコアチームをつくるべく、
約30名の若手職員に集まって頂き(町長から正式に委嘱)、

①(自治や最近の手法を)学ぶ
②(未来思考を)体感する
③(当事者意識や能力を)高める


をキーワードに月一回のペースで職員研修を進めている。

①については、先月、市長経験もある福知山公立大学の富野暉一郎副学長から「総合計画と職員参加、住民参加」について、
高知工科大学教授の西條辰義教授から「フューチャーデザインとは何か」について、そして、
issue+designの白木彩智さんから「高知県佐川町におけるみんなでつくる総合計画」の取組みについて学べる場をつくり、
基礎的な情報や方向付けを確認した(私も総合計画と人材育成について少しだけレクチャー)。
佐川町については担当職員のお二人と一緒に現地にも話を伺いに行った。

②については、地元のNPOやファシリテーションに定評がある企業のお力も借りながら、
今月から

「第一次総計の未来志向で棚卸し」

を実践している。

原課かどうかよりも、職員一人ひとりの関心に沿って、そして未来思考で
前期計画、後期計画の全30施策を検証するのが最大のポイントである。
言うまでもなく、未来を構想するためにも、まずは過去から現在をしっかりと見る必要がある。

また、③については年が明けてからファシリテーション研修を組み込んでいる。
これは来年度から、住民参加、協働による計画づくりに進めるために
自治体職員自らのファシリテート能力を高める必要があるからである。

さて、そんな枠組みで進む中で、昨日の研修後の交流会で、職人の何名の方から実に嬉しいコメントを聞くことができた。

「未来思考で議論するのはとにかく楽しい、ワクワクした」
「入庁してからこんな本気でまちのことについて語り合ったことはなかった」
「今の仕事を越えて、自分の想いや考え、アイディアを言える場があって嬉しい」


中には涙目で感想を訴えてくれる職員の姿も。

ここで考えたいのは、この感想が意味することは何かということである。
すなわちそれは、

①職員の多くは自分なりの様々な思いや考え、アイディアがあるにも関わらず、それを表現したり、伝えたりする場が少ないのではないか?
②職員の多くは自らの業務に忙殺され、また目の前の住民の対応、目の前の課題解決をすることだけで妥協的満足しているのでないか?
③職員の多くは志や想いを同じくする仲間が庁内外にいるにも関わらず、課や組織を越えて、つながる機会が少ないのではないか?


とのシンプルな問い、それでいて本質的な問題意識である。

もしそれが現実とするならば、本当にもったいないことだと思う。

職員の人材育成は人事課や職員課マター、またOJTこそが最大の人材育成である、との声が聞こえて来そうであるが、
それはそれで必要として、私言いたいのは、

「まち全体のことを構想するまちづくり条例や総合計画、総合戦略づくりこそ人材育成の最大のチャンス」

ということである。

なぜなら、この計画(条例)づくりこそ、立場や年齢を越えて、対等に議論できる最大のチャンスであるからである。

さらに言えば、過去から現在の時間軸だけで議論すると、どうしても人生の先輩の方が発言力が大きくなりそうであるが、
未来思考の視点を入れることが出来れば、むしろ若い人ほど未来に責任を持って議論でき、全体としてもバランスがよくなる。

そして何より、実践してみて初めて実感できることであるが、

「未来を語ることは楽しく、議論は実に創造的になる」

何事も楽しくないと続かない。
これは趣味でも仕事でも同じである。

ぜひこれからの総合計画等を作られる自治体においては、
楽しい未来をつくるためにも、計画づくりに未来思考と人材育成の視点を入れることをお薦めしたい。

最後にこれは与謝野町だからできるのでは?という質問が聞こえてきそうなので、一言付言をしておきたい。

確かに与謝野町では私よりも若い町長(山添藤真町長)が誕生し、新しい風が吹き始めている。
しかし、私が感じるのは、それはあくまできっかけであり、職員の皆さんこそが
その新町長の志に共感し、むしろ新しい風を吹かしているのではということである。
そして、徐々にだがその風に共感する住民の皆さんの輪も広がりつつある。

こうした動きを1自治体で終わらせるのはもったいない。

すべてはみんなのまち、みらいのまち、みえるまちのために。

平成28年11月18日

杉岡 秀紀




  

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2016年11月14日

ルポ「合併しなかった自治体の将来を考えるシンポジウム@産山村」

全体コーディネーターであった故今川晃先生に生前中にグループ討論のファシリテーターを依頼されたご縁で、
去る11月13日に熊本県産山村で開催された「合併しなかった自治体の将来を考えるシンポジウム」に参加してきた。
テーマに興味があることはもちろん、今川先生との約束を果たす意味もある。
ここではそこでの議論を少し紹介したい(14日も開催されたが参加できなかったため一日目のみ)。

13日は市原正文村長による開催の挨拶の後、実行委員長であり、九州大学名誉教授の木佐茂男氏から趣旨説明があった。
木佐教授によれば「合併したまちについてはいくつか論文があるが、合併しなかったまちの検証論文は殆どない。
したがって、その部分を検証する必要がある」という。いわずもがなこれが今回の開催主旨である。

周知のとおり、平成11年4月から平成22年3月までの時限法として施行された「市町村の合併の特例等に関する法律」
に基づき、国は合併特例債や地方交付税の合併算定替えなどの財政支援策をはじめとするさまざまな優遇措置を示した。

この「平成の大合併」により、平成11年には3232あったわが国の市町村の総数は、平成28年現在で1718にまで大幅に減少した。
他方、他市町村との合併を選ばず単独で生きていくことをきめた自治体も多かった。
今回訪れた熊本県産山村も平成15年に単独で生きていくことを決断している。

合併を選ばなければ地方交付税の減少により生き残りは難しいとまでいわれた小規模自治体。
産山村の場合はここにさらに「非合併」という修飾語がつくのだが、合併から13年。
本当に自治体としての生き残りは難しくなったのであろうか?

事実は想定より奇なりである。

産山村村議会議員の渡辺裕文氏及び地元熊本県立大学の小泉和重教授の報告によれば、
産山村におけるこの10数年の財政状況は、歳出規模=拡大、積立金=増加、地方債残高=現象、という結果であった。
つまり、当初の国(総務省)のねらいや懸念と現実は全く違う結果になったのである。
このことは県内の近隣市町村にも同様のことが言え、しかも、合併・非合併の差もほぼなかったという。
あの合併とは一体何だったのだろうか?まさに狐につままれた気分になる。

この後も貴重な報告が続いた。
小泉教授と同じく、地元熊本の大学教員である原島良成准教授からは行政法の専門家の立場からの報告があった。
中でも印象的だったのは、「自治体はつまるところ権力(機構)。その意味で行政と住民は本来距離を置くべき」、
「小さい自治体では職員だけでなく、議員の役割がより重要になる。村民自治の第一義は議会が担うべき」という提案。
確かに地方自治は二元代表制であるので、この議論は理論的、理念的にはよく理解できる。
しかし、実際の住民参加や市民参加の多くは行政が仕掛けるものが多いわけで、翻って、
「行政<議会」で住民参加を進めているという事例はあまり聞いたことがない。
その意味である種で盲点をつかれる問題提起であった。

前半最後は、立教大学の原田晃樹教授からの「コミュニティ・地域活性化の面」からの報告。ここでは「地域活性化は大事。しかし、飽和状態にあるコミュニティの活動にさらにがんばりを強いると悪循環に陥り、
取り組めば取り組むほど疲弊する面にも目を向けないといけない」「リーダー待望論は理解するが、俗人的リーダーは持続可能でない」との指摘があった。
今回のシンポジウムの開催にあたり、先の渡辺議員が取った村民アンケートにも「このまちにはリーダーいない」「産山村の再生にはリーダーが必要」
との意見が多く散見されただけにこの指摘はまさに今後の地域再生、地域づくりの警鐘となりそうだ。

最後はこれらの報告を受け、5グループ(1グループ10人前後)に分かれてのグループ討論を行った。
グループ討論テーマ及びファシリテーターは以下のとおり(筆者はCグループを担当)。

A:合併しなかったちいさな自治体の財政・財務上の課題・悩みは
(増田知也・同志社大学政策学部 助教)
B:ちいさな自治体のよいところを徹底的に洗い出そう
(高木正三・ふるさと食農ほんわかネット・『ドリーム』編集長)
C:地域の暮らしと文化を支える地域共同体をこれからどうするか
(杉岡秀紀・福知山公立大学地域経営学部 准教授)
D:地方創生・ちいさくてもみんながイキイキと暮らせる村づくり
(堀田和之・岐阜県土岐市職員、同志社大学博士課程)
E:震災復旧・復興にかかる連携と課題
(木ノ下勝矢・特定非営利活動法人 レスキュー・サポート九州代表理事)
各グループ報告…16:40~17:05

対話の時間が1時間前後しかなかったため、十分な対話までは至らなかった面もあるが、
最後の全体共有では以下のような意見、提言がなされた。

いずれも重要な視点で、産山村に限らず、1万人未満の小規模自治体、
とりわけ非合併の自治体には通底する内容と言えるのではないだろうか。

(1)産山ではこれからも合併を前提とせず、「小規模自治体」である強みを活かしながら、
  健全な行政運営を維持継続することはもとより、県や他市町村とも連携しながら村民自治、団体自治
  を進化、深化させていくべきではないか?【グループA】。

(2)産山村ならではの良いところである、山、森林、牧場を代表とする「豊かな自然」や、赤牛に代表される「豊かな食」、
 そして何より「豊かな人間関係(村民同士との距離の近さ、役場職員や議員と村民との距離の近さなど)」の価値を再認識し、
 これら地域の宝により磨きをかけていくべきではないか?【グループB】。

(3)がんばる特定の個人や地域、自治体の努力が徒労に終わらないように、地域の課題解決を担うNPOや若者による住民団体と
  積極的に連携しながら新しいスモールビジネスを創出し、まちに雇用と人財を呼び込む仕掛けづくりに励むべき。
  また住民同士が未来を語り合える場をつくり、村民主導により持続可能な地域共同体のあり方も模索し続けるべきではないか?【グループC】。

(4)生き生きとした地域づくりのために、行政は政策づくりのプロセスに必ず「村民参加」の視点を入れ、村民の代表である議
  会とも連携しつつ、「村民ファースト」の政策づくり、そして、人材育成に努めていくべきではないか?【グループD】

(5)先の熊本地震や阿蘇山噴火で培った防災や減災についての教訓やノウハウを日常の生活に活かすとともに、自助・共助・公助の役割分担に
  基づいたコミュ二ティづくりに励むべきではないか?また、この防災、減災の重要性を次代に継承する必要があるのではないか?【グループE】。

ともあれ、合併、非合併にかかわらず、人口減少や少子高齢化、地域産業の衰退、公共施設マネジメントなど、
地域課題は年々多様化、複雑化の様相を呈しており、ここ産山村も例外でない。

ひるがえって、地域の宝をいかして活力のある魅力的な村づくりをいかにして実現していくかを、
地方創生ともからめて「官・学・民」の知識と知恵と体験とを総合して、はばひろく展望する時が来ているとも言える。

その意味で、市町村合併や地域自治に関心を持つ産山村の村民、役場(職員)、議会(議員)、そして全国から研究者が集い、
2日間に渡り、様々な報告や討議、また多様な意見交換が出来た点は有意義であった。

明日はこれらの問題意識を元にさらなる議論が交わされ、最終的には「産山村宣言」としてまとめられた後、
村内外に発信されると聞く。

「スモール(ヴィレッジ)・イズ・ビューティフル」という本を著したのはシューマッハであっただろうか。
まさにこの言葉は産山村にお似合いのスローガンである。

最後になるがこうした概念や価値観、様々な気づきやヒントを教えてくれた産山村の皆さん、参加者の皆さん
そして、何より実行委員長の木佐先生、紹介くださった故今川晃先生に心から感謝申し上げたい。


平成28年11月14日

杉岡 秀紀


(参考)
当日のプログラム
【11月13日(日)】
(1)受 付 13:30~14:00
(2)主催者挨拶 14:00~14:05
(3)シンポジウム開催
① 趣旨説明…木佐茂男(ふるさと食農ほんわかネット・九州大学名誉教授)14:05~14:10
 
② パネルディスカッション…14:10~15:30
ア、 コーディネーター:今川晃(同志社大学教授)
(今川教授が9月24日急逝されたため、実行委員会代表または他の研究者が代行)
イ、 シンポジスト
小泉和重(熊本県立大学教授)…自治体財政からの面
原島良成(熊本大学准教授)…地方政府の自律の面
原田晃樹(立教大学教授)…コミュニティ・地域活性化の面
渡辺裕文(産山村村議会議員)…合併しなかった満足と不満

③ グループ意見交換会
(ファシリテーター=議論を進行・充実させる係を置きます。カッコ内は各グループのファシリテーター)
A:合併しなかったちいさな自治体の財政・財務上の課題・悩みは
(増田知也・同志社大学政策学部 助教)
B:ちいさな自治体のよいところを徹底的に洗い出そう
(高木正三・ふるさと食農ほんわかネット・『ドリーム』編集長)
C:地域の暮らしと文化を支える地域共同体をこれからどうするか
(杉岡秀紀・福知山公立大学地域経営学部 准教授)
D:地方創生・ちいさくてもみんながイキイキと暮らせる村づくり
(堀田和之・岐阜県土岐市職員、同志社大学博士課程)
E:震災復旧・復興にかかる連携と課題
(木ノ下勝矢・特定非営利活動法人 レスキュー・サポート九州代表理事)
各グループ報告…16:40~17:05
 
④ まとめ(総括)…原田晃樹 17:05~17:15

【11月14日(月)】
(1) みんなで語ろう…9:00~10:00
(2) 産山宣言
*11時解散の後、地元ならではのエクスカーション企画。




  

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2016年11月13日

「職業=公務員+◯○」を標準モデルに

去る11月11日、長野県塩尻市から塩尻市の職員である

「山田崇さん」

に舞鶴にお出で頂きました。

山田さんはこの業界では有名人で、

「元ナンパ師発の地域に飛び出す公務員」

として全国的に名を馳せた方です。

具体的には、商店街再生のために自らが空き店舗を6つ借り(もちろん私費)、
行政としての商店街政策を有効なものにするために、そのヒントやエビデンスを直接集めつつ、
そこで、市民としての顔で直接実践もしている地域に飛び出す公務員です。
(現在は政府の地域活性化伝道師にも認定)




山田さんとの出会いは今から3年前、2013年の

「日本協働政策学会」
http://www.kyodoseisaku.jp/02/kenkyu.html

でした。私もパネラーとして登壇していたのですが、
確か2日目に講演をされ、その時に

「世の中にはここまで出来る地方公務員がいるんだ」

と衝撃的な出会いをしたことを昨日のことのように思い出します。

そのご縁から翌年2014年には前任校の講師としてお招きし、

「地域に飛び出す公務員セミナー」

http://www.kpu.ac.jp/contents_detail.php?co=ser&frmId=4379

という、京都でも山田さんのような働き方を追求する人を
広めたい、応援したい、という特別企画を作りました。

そして、今年2016年は

「ソーシャルイノベーションサミットー人を巻き込むモテる公務員と未来を創る–」

http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000198/198015/SILK_summit_160716.pdf

ではたまた京都でご一緒させてもらいました。
(良いタイトル付けられましたよね〜)

さて、そんな山田さんをぜひ京都「市」ではなく、京都「府」に呼びたい、いや、呼ぼう!、
というのが11月11日のイベントの概要になります。

「まちづくり=ひとづくり」

と言われて久しいですよね。

だからこそこれまで京都市内で留まっていた超一流の方をお呼びしての企画を府北部で構想し、

「本物に直接触れる、交流する、価値を交換する」

きっかけを創る、というのが私の役割と認識しています。
(山田さんには「こんなに遠いと思わなかった」と言われてしまいましたが笑)

というわけで、ようやく講演内容ですが、山田さん講演から響いた至言は以下のようなものでした。
(中には山田さんが言われた言葉もあります)

「行政をまたない」
「小さいことから始める」
「まずやってみる」
「時間外の意味を考える」
「大事なことは全てナンパから学んだ」
「モテたいから始める」
「目的はあえて決めない」
「一人で円陣は組めない」
「手柄は全部山田くんのもの。失敗したら私のせいにしなさい」
「公務員が元気になれば、地域に元気になる」


これだけ見ても伝わりませんよね?雰囲気を味わいたい方はぜひ下記をご覧ください。
また会う度ごとに進化されていますので、最新の山田さんはぜひ直接お会いしてみてください。

http://logmi.jp/23372

ここで一番注目したいのは

「時間外の使い方」

です。

というのは、ややもすると公務員の世界は

「職務専念義務=兼業禁止」

の思い込み、刷り込みで

「公務員としての自分」

に拘泥し過ぎ、

「二枚目の名刺」

を持つ第一歩を踏み出せていない方があまりにも多いからです。

はたしてこれは政府の

「働き方改革」

や、民間ベースで出てきた

「パラレルキャリア」

の時代にマッチしていると言えるのでしょうか?
公共の世界で言えばこれこそが、これこそが

「地方創生、地域創生」

への最大の一歩になるのではないでしょうか?
このメッセージを山田さんは発しているのです。

しかし、これは実は決して新しい話ではありません。
公務員には3つの顔があると言われますよね?

①公務員
②労働者
③市民

実は、山田さんの活動はこの全ての顔をフルに活用しているだけ、とも言えます。
すなわち、実は

「山田さんこそが標準モデルと見るべきで、山田さんを先進モデルとして見てはいけない」

というのが私の考えです。

というのも、先進モデルと見ている限りは

「あれは彼だからできること」「あれは塩尻だからできること」

と矮小化してしまい、出来ない理由(やらなくても良い)を作ってしまうからです。

事実は逆だと思います。

最小の費用で最大の効果を挙げるためにも、全体の奉仕者として、住民福祉の向上に資するためにも、

「①〜③を意識し、アクションする公務員こそが標準」

と理解すべきと思うのです。

確かに府北部をはじめ、私の周りの公務員の方は

「2枚目の名刺を持った公務員」

が実に多いです。しかし、こういう皆さんは実は役所では変人扱いされたり、
時には冷遇されることもあると聞きます。

ここに風穴を開け、むしろこういう意識を持った方々を標準と捉えられる社会を創りたい。
これが私の今回山田さんを招聘した最大の理由であり、ねらいです。

こういう話をすると、

「自分はPTAや消防団など地域の仕事もしてすでに2枚目、3枚目の名刺を持っている」

と仰る方も多いと思います。それはそれで当然でして、ここでいう2枚目の意味は、
これまでの伝統的な役割や地域の役割に加え、

「その活動を公言し、職場から認められ、まち政策にいかす」
「自治体やまちの枠を越えた活動につなげ、新しいネットワークや風をまちに持ち込む」
「それを匿名ではなく、積極的に名前と顔を出して発信する」

という性格、性質までを帯びたものです。

ともあれ、まだまだ琵琶湖に小石を投げているくらいの取組みですが、
ぜひこの輪を拡げたい、拡げなければ、地方自治の明るい未来はないと思います。

「職業=公務員+◯○」

全国がこんな公務員で溢れれば地域は必ず変わりますよね。

「昔は山田さんとか少数の人の独占物だったけど、今じゃ当たり前だよね」

という台詞であふれる時代が来る日を信じてます。

平成28年11月12日

杉岡 秀紀 拝  

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2016年11月07日

政策コンペの効用

昨日は「日本地方政治学会・日本地域政治学会」(2つの学会のように見えるが、これで1学会)の
2日目に実施された学生による政策コンペ

「現代政治コンペ」

に審査委員長として参加してきた。

より正確には、元々「司会」として参加するだけの手はずだったのだが、審査委員長であった私の恩師の急逝を受け、
はからずも司会だけでなく、「審査委員長」という大役も兼任することになったのである。

私ではどう考えても恩師の代わりは務まらないのであるが、恩師への孝行ということで、
恩師になり代わり何とか務め上げることができ、安堵している。


それはさておき、今回のコンペも実に面白かった。

実は私も政策コンペと名のつくものは、これまで4つくらい関わって来ており、

①日本公共政策学会学生政策コンペ
http://ppsa.jp/prize_2.html
②全国大学まちづくり政策フォーラムin京田辺
http://www.kyotanabe.jp/soshiki/4-10-0-0-0_9.html
③京都から発信する政策研究交流大会
http://www.consortium.or.jp/project/seisaku/conference/2014-1
④京都丹波観光プランコンテスト
http://www.kpu.ac.jp/contents_detail.php?frmId=4576

などに学生と一緒に出場し、賞もいくつか頂いてきた。
なので、「出場する側」「引率する側」としての楽しみと苦しみは痛いほど分かっている。

また、この9月に恩師や研究仲間と一緒に

『自治体政策への提言〜学生参加の意義と現実〜』
http://www.hokuju.jp/books/view.cgi?cmd=dp&num=995&Tfile=Data

という政策コンペを主題にした本を共著で上梓させて頂き、学生による政策コンペの実際を客観的にもまとめさせてもらった。

その意味においては、教育ツールとしても、研究テーマとしても個人的に関心が高いのであるが、
今回の「現代政治コンペ」もこれまでの政策コンペに負けじと劣らぬ面白さがあった。

今年のテーマは「18歳選挙権と主権者教育」の1テーマであったのが、それでも10者10様のプレゼンが聞かれた。

ここでせっかくの機会なのっで、改めて今回の現代政治コンペから抽出できる「政策コンペ」の効用を考えてみると、
大体以下の7つに収斂するのではないだろうか。

①共通テーマがあることで、プレゼンする方も聞く側も論点がシャープになり、展開しやすい。
②同じ学会であったとしても指導教員の専門はバラバラであり、それぞれ多様なアプローチがあることを確認できる。
③全国から複数の大学(生)が参加し、コンペ中は競争関係にあるが、終わればノーサイドで大学を越えた友人を得る機会となる
④自分のゼミを越えた教員や学生から助言や感想をもらうことにより、いつもと違う角度からのフィードバックを得られる。
⑤聞いている教員や学生自身も、「なるほど、その切り口(アイディア、アプローチ等)があったか」とのアイディア発見の場となる。
⑥学生にとっては、政策コンペに参加する過程で、調査研究力を向上させられ、卒論などの予行練習になる。
⑦チームとして参加することで、調整力や対人コミュニケーション力やプレゼン力も向上する。

これ以外にももちろん突き詰めて考えればまだ他にもあると思うが、主だったものはこれぐらいであろう。

ともあれ、今回は審査側のみで引率がなかった分、緊張はなかったが、
逆の(審査される)立場だと、教員サイドも審査発表の瞬間はドキドキとなる。

今度関わる政策コンペはどういう形で関わるか分からないが、関わるからにはトップを目指して
学生たちと汗をかきたいと思う。

以上、少しだけ高校野球やオリンピックの審査員や監督の気持ちを理解できた
杉岡による政策コンペレポートでした。


平成28年11月7日

杉岡 秀紀 記

  

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2016年10月17日

「みえるまちをつくる」ために

去る10月15日に勤務先の第2回開学記念講演企画として与謝野町は「野田川わーくぱる」で

・与謝野町クリエイティブディレクターでデザイナー田子學さん
・与謝野町の山添藤真さん


と鼎談させて頂きました。

私と与謝野町とは、昨年度、昨年度は地方版の地方創生の総合戦略

「まち・ひと・しごと創生有識者会議委員(座長)」
「リベラルアーツ事業(講師)」

に関わらせてもらったご縁で、今年は

「総合計画策定審議会委員(会長)」

としてまちの計画づくりに関わらせてもらっています。

ここでは前半部分の田子さんのレクチャーから「なるほど」と思ったことを
備忘録がてら収録しておきたいと思います。

(田子學氏)
・デザインとは「人間の行為をよりよい形でかなえるための創造的計画」。単なる「意匠」ではない。
・デザインと「システム」と「ブランド」は一体である。したがって、「マネジメント」の視点が重要になる。
・地域創生を「土産づくり」で終わらせてはいけない。「暮らしと産業の本質を見つけること」にいかに近づけるかが重要。
・「かっこいいまち」もその一つになり得るし、「衣食住」、とりわけ「6次産業」こそ本質。
・「みえるまち」とは、海がみえるまち、個性がみえるまち、安心安全がみえるまち、多様性・寛容性がみえるまち、おもてなしがみえるまちなど、様々なまちの資源がみえるまちのこと。
・デザインマネジメントにより「個別最適から全体最適へ」。
・「なぜ」「本質」を考え続けることが重要。


以上です。いずれもまちづくりの大事な視点ですね。

このレクチャーを受け、私が後半の鼎談でお聞きした最大の質問は

「では、誰のためのみえるまちか?そして、みえるまちの先にあるものは何か?」

ということでした。

答えは田子さんも町長も明快で

「みえるまちの対象は、町内だけでなく町外の皆さん、そして未来の町民である」
「みえるまちの先にあるものは、自分たちのまちを誇りに思う意識と文化づくり」


ということでした。

全く同感です。すなわち

「まちづくり=ひとづくり」

とよく言われますが、もう一つ大事な視点は

「まちづくり=ファンづくり」

であるということですね。

というのも、

「自分のまちを好きになることなしに、まちづくりはあり得ない」

ですから。


これからも「みえるまち」の見える化、魅せる化の挑戦は続きます。

私も微力ながら、その伴走、後方(広報)支援をさせて頂きます。

皆さん、ぜひ「みえるまち・与謝野町」に引き続きご期待ください。

(参考)与謝野町「みえるまち」特別サイト
http://yosano-branding.jp

平成28年10月17日
杉岡 秀紀 記


  

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2016年10月08日

『致知と私』

『致知と私』

杉岡 秀紀

 雑誌致知を教えてくれたのは2人の「父親」でした。1人目は実の父親。父親は私の最も尊敬する人であり、仕事も趣味も大事にし、家族思いで、何より私にとって見本となる「教師」でありました。そんな父親が何の前触れもなく私の目の前からいなくなったのは、今から17年前の1999年12月24日。忘れもしません、世間はクリスマスイブ。家族と一緒に過ごす特別な日でした。死因は急性心不全。皮肉にも知命の50歳。当時私は19歳でした。卒業式も、成人式も、結婚式も、孫の顔も見ないまま父親は突然天国へと旅立ちました。

 母にとってはさらに厳しい試練が待っていました。葬儀場の都合で葬式の日程がずれ、何と自分の「誕生日」が夫の葬式になってしまったのです。偶然か必然かは分かりません。とにかくあまりにも受け入れがたい神の仕業でした。そして、その後追い打ちをかけるように母は足を悪くし、仕事を辞めざるを得なくなり、気持ちもふさぎこみ、家に引きこもりがちになってしまいました。

 私はというと、これから家計を支えなければならないのにまだ大学1年生。すでに兄2人は社会人でしたが、この時ばかりは自分がお金を生み出せない存在であることを恨みました。しかし、私が入学した大学は亡き父親の憧れの大学であり、この入学が最後の父親との約束であり、数少ない恩返しでもありました。だからどうしても辞める訳にいかなかったのです。とはいえ、現実として、誰も学費を払ってくれません。そこから勉強の傍らで自ら学費を稼ぐための生活が始まりました。

 その後5年の歳月が経ち、父親のこともようやく整理がつき始めた2004年3月のこと。お世話になっていた知人から宮崎に面白い人がいるから一緒に逢いに行こうと誘われました。その面白い人とはコープ宮崎の亀田高秀専務理事(当時)。そう、この亀田さんこそ私に雑誌致知を教えてくれた恩人であり、その意味で2人目の父親と仰ぐべき人となります。コープ宮崎はすごい組織でした。役員の皆さんもレジのパートさんもそのご家族もみんなコープ宮崎の理念について日常から語るのです。その発信源が亀田さんであり、そのリソースの一つが雑誌致知ということでした。かくして私は致知という不思議な雑誌に釘付けになりました。その後雑誌致知を毎月読みふけるうちに、不思議と人間の死というものをポジティブに捉えられる瞬間(とき)がやって来ます。それが森信三先生の「人生二度なし」という言葉との出会いでした。まさにそれは言霊を感じた瞬間であり、その影響で父親の死というものを受け入れることができるに至りました。
 
 この時期辺りから私は自分にとって大事な人に機会を見つけては雑誌致知を伝えるというささやかなアクションを起こすようになりました。その一人が現在致知出版社にいる岡田直樹くんです。彼へのバトンは思わぬ形で実を結びます。何と彼は当時いた会社を辞め、致知出版社に転職することになったのです。そして、そこで人生最愛のパートナーとの出会いもあり、新しい命が今年授かったと聞きます。これほど嬉しいことはありません。というのも、まさにこれこそが父親の死というものが教えてくれた私へのメッセージであり、命のバトンであり、雑誌致知と出会った責任であり、ささやかな恩送りができた瞬間であり、とかく全て重なったからです。

 現在私も一児の父親であり、「教師」を仕事にしています。娘の名前は志を保ち、社会にために役立つ人間になって欲しいという思いを込めて「志保」と名付けました。彼女の19歳の誕生日が来たら、私はこのエピソードを彼女に伝え、自分を動かしてくれた森信三先生の次の言葉を贈りたいと思います。「人間は一生のうち逢うべく人には必ず逢える。しかも一瞬とも早過ぎず、一瞬遅すぎない時に」。                 

※ 本スピーチは、2016年10月8日にソラリア西鉄ホテルで開催された致知出版社主催「第5回の20代30代のための人間力養成講座」で報告したものです。


  

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2016年10月01日

北近畿の創生に向けて

本日より福知山公立大学の教員としての新生活が正式にスタートしました。公立大学から公立大学というのは比較的珍しいキャリアかもですが、地理的にはどんどん北上してますので、すごい変化です笑。

なお、一昨日には市役所で転入届も提出し、福知山市民にもすでになっています。これまでは通いでしたので、気持ちあっても部分的にしか関われませんでしたが、これで微力ながらも、腰を据えて府北部、そして兵庫県北部も含めた北近畿の創生に全力投球できる態勢が整いました。
(とりいそぎ福知山市の2016年度人口における社会増に3人分貢献ですね)

府大在職期間お世話になった皆さま、約5年間本当にありがとうございました。府大での思い出や感謝の気持ちについては書き出したらおそらく止まらないと思いますが、とりあえず別添(府大広報178号、京都政策研究センターニュースレター26号)に書き記しましたので、お時間があればご覧頂ければ幸いです。
とはいえ、は週2コマの非常勤講師と京都政策研究センター特任准教授として関わり続けることになりますので、むしろ引き続きよろしくお願いします、という方が正確かもしれません。

最後にまもなく公開となると思いますが、公立大着任のメッセージも書き記しました。こちらは下記に転載しておきたいと思います。

【転載(ココから)】
(その1)
私は、これまでNPO(きゅうたなべ俱楽部)→企業(株式会社GIZA)→行政(内閣官房)→財団法人(地域公共人材開発機構)→大学(京都府立大学)とセクターを越えて働いてきました(ひとり産学公NPO連携)。また奈良県(平城京)→東京都→京都市(平安京)と3つの都住まいを経て、福知山に移住してきました。これらの経験も踏まえ「周旋」「臨床政策」「地域の教育力と教育の地域力の交歓」という3つのキーワードを大切にしています。

(その2)
近年、地方公務員が主役となって地域を元気にしたり、地域住民が立ち上がって地域づくりを展開したりする映画やドラマが増えました。例えば『県庁おもてなし課(2013年)』『ナポレオンの村(2015年)』は前者の好例でありますし、後者であれば『人生いろどり(2012年)』『WOOD JOB(2014年)』『限界集落株式会社(2015年)』などがその好例です。また、『地域に飛び出す公務員ハンドブック』(椎川忍、今井書店、2012年)や『地域公務員になろう』(稲継裕昭、ぎょうせい、2012年)、『地域公共人材をつくる』(今川晃編著、法律文化社、2014年)など、今までの公務員の枠を越えて活躍する自治体職員を後押しする動きも相次いで登場しています。私の研究対象はまさにここです。すなわち一つは公務員を中心とする「ひと(地域公共人材)」に関する人材育成の研究であり、もう一つはそうした人材が活躍する「まち(自治体)」に関するまちづくり研究です。こうした中で最も重要なのは、やはり「ひと」です。というのも、その計画や戦略を作るのも「ひと」でありますし、また、どれだけ素晴しい計画や戦略を作ってもそれを実行するのは「ひと」であり、その影響を受けるのもやはり「ひと」だからです。では、そういう人材をつくることは可能でしょうか?答えは否です。翻って、できることはそうした人材が育つ環境を創造することに他なりません。ここに大学の重要な意味が出てきます。こうした人材育成、地域づくりのニーズがあればお気軽にご相談ください。ぜひ共に考え、良い汗をかきましょう!
【転載(ココまで)】

というわけで、府北部の皆さん、兵庫県北部の皆さん、そして、公立大の皆さん、これからお世話になりますが、どうぞ宜しくお願いします!

平成28年10月1日
杉岡 秀紀 拝





  

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2016年09月26日

哀悼:今川晃先生

私の恩師、今川晃先生(同志社大学政策学部教授)が2016年9月24日の未明に急性心筋梗塞で急逝されました。。
(ゼミの合宿中(琵琶湖リトリートセンター)で眠っている間に発作が起き、そのまま永眠されたとのことです…)

あまりの突然の知らせに言葉を失い、頭の中が真っ白になってしまっております。

19歳の時に実の父親を突然亡くした時に近い、頭をバットで急に殴られた、そんな感覚です。
しかも死因まで父と同じということで、2人の「父」「人生の師匠」の命を奪った急性心筋梗塞という病気を正直恨んでいます。

今川先生は私の心の底から恩師と呼べる先生でした。あれは確か大学院1年生後期の2004年だったと思います。
在学の途中から今川先生が来られたため、私はゼミ生という形で指導を受けた訳ではありません。
しかし先生はいつも私の京田辺のまちづくり活動を褒めて頂き、それ以降無償で京田辺での勉強会講師を何度も引き受けてくださいました。
何よりその後の私の節目節目にチャンスを与えてくださり、そのお陰で今の私があると言っても過言ではありません。

2007年には国(内閣官房行政改革推進本部)で働く機会をつないでくださりました。
2008年には学会発表や初めての学会誌投稿、2009年からは母校での嘱託講師のご縁も頂きました。
母校での最初の1年間は先生と一緒に講義も担当させてもらいました。
2010年には共著という形で初めて本を執筆する機会を与えてくださり、以降5冊もの共著を先生と執筆させて頂きました。
最近では2015年度にJST の共同研究にも誘って頂き、そこで出会った「フューチャーデザイン」は私の現在最も重視するテーマになっています。
2012年の大学への就職、そして、今年の2016年の大学移籍についても、自分のことのように喜んでくださいました。

プライベートでも大変お世話になりました。
ご自宅にお呼び頂いた際は奥様から過去の今川先生のエピソードを教えて頂きましたし、
昨年娘が誕生した際にも翌日にはお祝いを届けてくださいました。その時にかけて頂いた

「家族が一番身近な自治だから、家族との時間をこれから大事にしてください」

というメッセージは今私が一番大事にしている価値観です。
何より先生が実践されてきたことでもありました。

今川先生とは9月25日お会いする予定でした。7月10日の学会後の懇親会以来、2か月ぶりに飲めることを楽しみにしておりました。
まさ7月10日が最後になるとは到底思えず、この時にしっかりと感謝の思いを伝えられたか、自信がありません。
来月10月14日は先生と一緒に与謝野町で対談できる仕事も組んでおりました。
さ来月11月13日は大分の産山村で家族同士の交流しながらシンポジウムに参加することも決まっておりました。
来年度4月には福知山公立大学で日本オンブズマン学会を招致することも決まっておりました。

私は「誰と仕事をするか」を一番に考えて今まで仕事をしてきました。
ですので、先生との仕事は大学の枠を越えて、とにかく楽しく、光栄で、勉強になり、とかく再重要視してきました。
こうした楽しみや学びの場が、今日からなくなると思うと胸が張り裂けそうになるくらい悲しく、辛いです。。
 
25日にやむにやまれない思いで先生のご自宅で最期のお別れと12年間お世話になった感謝の思いを伝えさせて頂きましたが、
これから先、何を楽しみに大学人として、そして研究者のはしくれとして生きていけば良いか、正直分かりません。
それくらい偉大な師であり、研究者であり、教育者でした。

今できることは、今川先生が大事にしてこられた家族をまず大事にすることでしょうか。それとも
「住民自治を基点とする地方自治への思い」「個人の人権尊重へのまなざし」「佐藤竺先生など原点を大事にする姿勢」を継承することでしょうか。
今の私には優先順位すらつけられません。

ただ、先生に何一つ恩返しができなくなった分、先生から頂いたご恩を後進に送り続けないといけません。
これは「受け取った者の義務」として何とか果たして参りたいと思います。
いましばらく仕事が手につかない日々が続くと思いますが。。

今川先生、あまりにも早過ぎる別れで、まだ気持ちの整理もつきませんし、どのようなお言葉を用意すべきか分かりません。
とにかくこの12年間、ご指導頂き、本当にありがとうございました。深謝に耐えません。
先生から学んだ様々な教訓とご一緒できた思い出は絶対に忘れません。

今はどうか安らかにお眠りください。
そして、天国で私ども薫陶を受けたものたちを引き続きお見守り頂けますようお願い申し上げます。

平成28年9月26日
杉岡 秀紀 拝

追伸

以下は先生が好きだった歌です。

「あの日の空よ」

今となっては涙なしには聴けません。。

https://www.youtube.com/watch?v=SJZmuNCWxeI  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)杉岡日記より

2016年07月16日

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書、2008。

https://www.amazon.co.jp/ルポ-貧困大国アメリカ-岩波新書-堤-未果/dp/4004311128/

米国では共和党と民主党、英国では保守党と労働党では、掲げる政策や支持層が大きく違う。

米国の大統領候補でドラルド・トランプ氏が支持されているように(なぜか共和党からだが…)、
また英国において国民投票によりEUからの離脱を求める声が残留派を凌駕したように、
近年は特に所得水準の低い国民層や移民や難民の方々に仕事を奪われた層からの怒りに近い声が大きくなっている。

このようにこれまでの「貧困大国」というイメージは主に資本主義や民主主義、(新)自由主義の先進国の問題であった。

下記の目次をざっとご覧頂ければ分かるように、本書でも紹介される米国の事例はその象徴とも言うべき存在であろう。

【目次】
第1章 貧困が生み出す肥満国民
・新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭
・なぜ貧困児童に肥満児が多いのか
・フードスタンプで暮らす人々
・アメリカ国内の飢餓人口

第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
・人災だったハリケーン・カトリーナ
・「民営化」の罠
・棄民となった被災者たち
・「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域
・学校の民営化
・「自由競争」が生み出す経済難民たち

第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
・世界一高い医療費で破産する中間層
・日帰り出産する妊婦たち
・競争による効率主義に追いつめられる医師たち
・破綻していくアメリカの公的医療支援
・株式会社化する病院
・笑わない看護婦たち
・急増する医療過誤
・急増する無保険者たち

第4章 出口をふさがれる若者たち
・落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策
・経済的な徴兵制
・ノルマに圧迫されるリクルーターたち
・見えない高校生勧誘システム
・「JROTC」
・民営化される学資ローン
・軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生
・カード地獄に陥る学生たち
・学資ローン返済免除プログラム
・魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミー」
・入隊しても貧困から抜け出せない
・帰還後にはホームレスに

第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
・「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」
・「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」
・ターゲットは世界中の貧困層
・戦争で潤う民間戦争請負会社
・見えない「傭兵」
・一元化される個人情報と国民監視体制
・国民身分証法
・州兵としてイラク戦争を支えた日本人:「これは戦争だ」という実感)

しかし、本書が出た2008年あたりを節目にわが国でも

「子どもの貧困」「貧困の連鎖」「相対的貧困率」「高学歴女子の貧困」「女女格差」「下流老人」「貧困世代」

などの概念が注目され始め、今では6人に1人の子ども(とその親)が貧困状態にある。

つまり、本書の問題意識はもはや「対岸の火事」ではなく、日本そのものがそのような国家になろうとしている、
あるいはもうすでになりつつある

「近未来図」

とも見えなくない。

このことは決して、20世紀の国民総中流時代に戻ろうとか、共産主義を今更礼賛する訳でない。

しかし、自由主義・民主主義・自由主義をただ市場に任せるだけでは、どうしてもそこに乗り切れない層が出てしまう事実を
どう考え、どう乗り越えるのか、といういわば

「スタビライザー」

を本気で考えないと、まさに

「明日は我が身」

になりかねない(いや、残念ながらもう片足くらい突っ込んでしまっている)。

そして、そのことが国民を2分するような大きなうねりになる可能性も否定できない。

万能ではない自由主義・民主主義・自由主義を少しずつ修正し、誰もが安心して生きられる社会を日本は目指さないといけない。

その要が政治であり、それを決めるのは国民一人一人である。

18歳選挙権が実現した今だからこそ、わが国も若者からお年寄りまで、まさに国民がよってたかった智慧を絞り、
貧困大国にならないための方策を考える時期に来ている。

平成28年7月16日

杉岡 秀紀 拝



  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年07月07日

藤田孝典『貧困世代ー社会の監獄に閉じ込められた若者たちー』

藤田孝典『貧困世代ー社会の監獄に閉じ込められた若者たちー』講談社現代新書、2016。

https://www.amazon.co.jp/貧困世代-社会の監獄に閉じ込められた若者たち-講談社現代新書-藤田-孝典/dp/4062883589

2015年に『下流老人』を書いて20万部を越えるベストセラーになった藤田氏による書。ほぼ同年代ということもあり、一つひとつの言葉が響いた。

タイトルを見れば一目瞭然であるが、前著に引き続きショッキングなタイトル、また内容であった。

しかし、これが少数の人間の問題では済まなくなり、悲しいかな、もはや社会として多数の構造的な問題になってしまっているのが日本の現実である。

というのも、藤田氏が指摘するように、都市部の高齢者であれば、ヘルパー、デイサービス、デイケア、ショートステイ、緊急通報システム、訪問看護、特別擁護老人ホーム、有料老人ホームなど、福祉メニューは社会資源は豊富にある。

しかし、若者支援のメニューは本当に少ない。藤田氏が強調する

「監獄に閉じ込められた悲劇」
「結婚、子育てはぜいたくというのが貧困世代のホンネ」
「日本では若者を育てられない」

と評するのも決して大げさではなく、とにかく若者への福祉政策、支援は緊急度かつ重要度が高いテーマと言える。

また、その原因として「よく語られる5つの若者論の誤り」が紹介されていたが、
我々若い世代同士でももしかすると誤解している節があり、ぐさっとくる。

①働ければ収入を得られるという神話(労働万能説)
②家族が助けてくれているという神話(家族扶養論)
③元気で健康であるという神話(青年健康説)
④昔はもっと大変だったという時代錯誤的神話(時代比較説)
⑤若いうちは努力をするべきで、それは一時的な苦労だという神話(努力至上主義)

最近は18歳選挙権とか、シルバー民主主義是正の議論が喧しいが、
この現実を知れば、相対的にも絶対的にもこの問題を考える価値がいかに高いかが分かる。

このまま放置すれば、日本は

「子どもの貧困→貧困世代→下流老人」

という連鎖に陥る人が溢れ、国レベルでイギリスでいうEU脱退やアメリカでいうトランプ候補の台頭
といったことも起きかねない(実際もうそうなりつつあるかもしれないが…)。

災害と同じく起きてからでは遅い。

ぜひ後始末的な対応ではなく、始末的な対応が今必要である。


平成28年7月7日

杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年06月18日

【書評】藤山浩『田園回帰1%戦略』

藤山浩『田園回帰1%戦略』農文協、2015。

https://www.amazon.co.jp/田園回帰1%25戦略-地元に人と仕事を取り戻す-シリーズ田園回帰-藤山-浩/dp/4540142437/

「1年に1%の人と仕事を取り戻していけば、地域は安定的に持続しえる」

といういわゆる

「1%戦略」

で注目された書。

単なる地方創生の批判本ではなく、地方消滅可能性都市が限界集落、いな過疎と呼ばれた時代から
この問題に向き合い取り組んできた島根だからこそ説得力を持って編み出せたら理論と言える。

もう少し言葉を足せば、過疎の発祥地でもあり、課題先進県である島根だからこそ、先駆的な対策が取られ、
海士町然り、邑南町然り、津和野然り、全国的に注目される最先端の取組み先進地になりつつあるということである。

然るに、島根は課題先進県であると同時に課題解決先進県でもあるということ。

そして、私が一番感動したのは人口を単なる数ではなく、

「人口=人生の数」

と解釈した藤山さんのセンス。

このセンスを持つことが人口減少社会に一番重要なポイントだと思う。

目次は以下のとおり。

序章 「市町村消滅論」は本当か
第1章 「2015年危機」と「大規模・集中化」の半世紀――田園回帰という希望
第2章 田園回帰が始まった――島根からの報告
第3章 人口の1%取戻しビジョン
第4章 所得の1%取戻し戦略
第5章 田園回帰を支える社会システムの設計
第6章 求められる田園回帰に向けた条件整備

本書ではイタリアやイギリスがモデルとして紹介されているが、
わが国においては島根モデルに学ぶことが先ではないだろうか。


平成28年6月17日
杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:42Comments(0)大学生に薦めたい一冊