プロフィール
杉岡 秀紀
杉岡 秀紀
1980年、奈良県生まれ。2003年同志社大学経済学部卒業、2007年同大学大学院総合政策科学研究科博士前期課程修了。2009年同博士後期課程退学。臨床政策学者。周旋家。2016年から福知山に移住。

専門は、公共政策、地域政策、地域公共人材論、大学まちづり論、NPO論、大学評価論。

大学時代から環境問題、まちづくりに関心を持ち、2003年にまちづくりNPO「きゅうたなべ倶楽部」を主宰(発起人)。地域に開かれた大学祭の創造や商店街活性化、フリーペーパーの発行・産学連携ITプロジェクト・商品開発・リユースフェアなどのコミュニティビジネスを武器に京都府南部地域におけるまちづくりに取り組む。

2007年からは、いったん地域から離れ、霞ヶ関(内閣官房)へ。行政改革推進本務事務局にて、社会保険庁改革に従事する。

同志社大学政策学部嘱託講師(2009〜2014)、一般財団法人「地域公共人材開発機構」事務局総括(2009〜2012)、京都府立大学公共政策学部講師・地域連携センター副センター長(2012〜2016)を経て、2016年秋より福知山公立大学地域経営学部准教授。京都府立大学京都政策研究センター特任准教授。

社会貢献活動として、龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター 客員研究員、一般財団法人地域公共人材開発機構常任理事、一般社団法人社会的認証開発推進機構評議員、NPO法人グローカル人材開発センター理事、NPO法人京都子どもセンター監事、きゅうたなべ倶楽部アドバイザー、真庭市政策アドバイザーなどを務める。

主な著書は、『地域力再生の政策学』(ミネルヴァ書房、2010年、共著)、『地域貢献としての大学シンクタンク』(公人の友社、2013年、編著)、『地域公共人材をつくる』(法律文化社、2014年、共著)、『住民自治を問いなおす』(法律文化社、2014年、共著)、『もう一つの自治体行革』(公人の友社、2014年、編著)、『持続可能な地域実現と大学の役割』(日本評論社、2014年、共著)、『地域力再生とプロボノ』(公人の友社、2015年、編著)『地域創生の最前線』(公人の友社、2016年、編著)、『自治体政策への提言』(北樹出版、2016年、共著)など。

大学時代(2000年)に結成したバンド「シカゴプードル」では、2003年に京都学生祭典(KYOTO STUDENT MUSIC AWARD)でグランプリを受賞。2004年にCDデビューも果たした(2006年に卒業)。

【HP】 http://sugiokahidenori.jimdo.com
【ブログ】http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/
【facebook】http://www.facebook.com/hidenori.sugioka/

【主な受賞歴】
2002年 「REALIZE In Kyoto(京都府南部地域における学生による地域政策・ビジネスコンテスト)」グランプリ受賞
2003年 「京都学生祭典 全国学生音楽コンテスト(kyoto student music award)」グランプリ受賞(Chicago Poodle)
2003年 「同志社大学育英賞」受賞
2004年 「エコ京都21」認定(きゅうたなべ倶楽部)
2004年  関西文化学術研究都市「都市びらき10周年」感謝状授与(きゅうたなべ 倶楽部)
2005年  内閣府「生活達人」認定
2005年  京都人間力大賞ファイナリスト
2007年  日本都市計画家協会「全国都市再生まちづくり会議」奨励賞受賞(きゅうたなべ倶楽部)
2012年  京都府「明日の京都」推進特別賞(地域公共人材開発機構)
2013年 「第7回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2013年 「第9回京都から発信する政策研究交流大会」優秀賞(杉岡ゼミ)
2014年 「京都府立大学学長賞」受賞(杉岡ゼミ)
2014年 「第10回京都から発信する政策研究交流大会」京都市長賞、優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2014年  2013年度京都府創発事業認定(京都丹波・写ガール隊)
2015年 「第9回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所賞受賞(杉岡ゼミ)
2015年 「2015年京都丹波観光プランコンテスト」優秀賞受賞(杉岡ゼミ・京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第4回 京の公共人材大賞」奨励賞受賞(京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第10回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所奨励賞受賞(杉岡ゼミ)
2016年 「京都府公立大学法人 理事長表彰」(京都丹波・写ガール隊、地域連携センター学生部会かごら)
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2017年06月25日

石川善樹『友だちの数で寿命はきまる』

石川善樹『友だちの数で寿命はきまるー人との「つながり」が最高の健康法ー』マガジンハウス、2014年。

タイトルだけ見ると「えっ?」と思いますよね。
しかも最近はSNSの浸透により、

「実際は会ったことことがない「友達」」

も増えています。

つまり、友達の定義も広義化している中で、そんな友達も含むの?との疑問も聞こえて来そうです。
そんな問いにも答えてくれるなるほどの一冊なっていました。

著者は石川善樹さんという方。予防医学研究者で(株)Campus for Hの共同創業者。
1981年の早生まれなので私と同い年です。
東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学にて博士(医学)取得された、
肩書きだけ見ると超エリートですが、意外にも文章はやわらかく、何より分かりやすい仕上げになっています。
最近はダイエット本や脳に関する著作もあるようです。

さて、内容ですが、今回のタイトルの根拠になったのは、2010年にアメリカのブリガム・ヤング大学の
ホルトランスタッドとい研究者によるもののようです。
何でも20世紀と21世紀に行われた148の研究(総勢30万人)をメタアナリシスした結果、寿命に与える影響は

①つながりがある
②たばこを吸わない
③お酒を飲み過ぎない
④身体を動かす
⑤太り過ぎない

という順位が明らかになったようです。

なぜつながりが健康(寿命)につながるのか?これについても様々な研究報告が紹介されます。
たとえば、シカゴ大学のカーマイン博士によって230人野球選手を対象に行われた笑顔に関する研究では、

「作り笑いでも寿命は2年延びる」

ということが分かったとか。この他にもアメラダ研究のバークマン教授の研究によれば

「お見舞いに来てくれる人が2人以上であれば6か月以内の死亡率は26%と低いが、0人だと69%まであがる」

という結果も出ているようです。

社会学で有名なグラノヴェッター教授の「weak tie(弱い絆)の強み」の話を思い出しますね。

また、SNSでのつながりついては、コーネル大学のジェフ・ハンコック教授らの研究が紹介され、

「ポイジティブな投稿を多くみた被験者は、ポジティブな投稿をする(その逆も然り)」

ということが明らかになっています。


では、ここまでは科学である程度証明されたとして、関心は、

「で、どうすればつながりを大事にして、寿命を伸ばせるの?」

という点だと思います。この点についても著者は具体的にアイディアを記しています。たとえば

①瞑想をする。
②弱さをさらけ出す。
③寄付をする。誰かのためにお金を使う。
④誰か(相手)を思いやる。
⑤妻(夫)に言葉と笑顔で表現する
⑥職場では、飲み会よりも雑談を重視する
⑦複数のコミュニティを属する。またその中で責任ある立場につく。

この他にもまだ色々とありますが、私が明日から出来そうでいいなと思ったものは以上になります。


最後にこの本の著者のご専門は予防医学でした。

病気にならないことは難しいですが、なるべく発症の確立を減らし、遅らせるためにも
つながりを大切にしたいですね。

(参考)目次

はじめに~「つながり」の世界へようこそ~

第1章 健康と寿命を決めるのは「つながり」だ。

私たちは病気を起こす大きな何かを見逃している。
孤独は喫煙よりも身体に悪い。
モーリス博士が発見した意外な事実
高血圧もタバコも健康に良いと考えられていた。
遺伝子では病気のリスクはあまり説明できない。
日本人は健康診断が大好き。
作り笑いでも寿命は2年延びる。
アカデミー賞を獲ると寿命が4年延びる。
ポジティブ思考は長生きである。
日本人は真面目だから長生き?
孤独な人は死亡率が2倍になる。
男子校の出身者は未婚率が高く、短命である。
「つながり」を拒む、孤独遺伝子の発見。
一方「つながり」遺伝子もある。
脳は「つながり」によって進化した。
「つながり」はなぜ健康に良いのか?
友達がもたらす、最大の効用。
中長期的展望がないと、生きる意欲が湧かない。

コラム 予防医学が教える最新健康常識1健康作りの目標設定のコツ


第2章 日本人の「つながり」の意外な問題点。

日本人は「つながり」が少なく、孤独死が多い。
汚いだけではないゴミ屋敷の怖さ。
お見舞に来てくれる人の数で死亡率が変わる。
弱い「つながり」がスネップ、ニートを救う。
男性は息子の嫁に介護されると長生き。
日本の高齢者は幸せ度が低い。
日本人男性特有の、宴会効果にご用心。
女性の方が男性よりも「つながり」を作るのがうまい。
女性は「つながり」をメンテナンスするのも得意。
妻は“定年後"に備えて「つながり」を再構築する。
夫は、犬の散歩で地域コミュニティ・デビュー。
男性にとっての戦略的老後の生き方とは。
日本人は休養の取り方を知らない。
積極的休養で「つながり」を作る。
「攻めの休暇」で仕事の能率も上がる。
低成長時代には仕事以外のアイデンティティを持つ。
日本人は4段階にわけて健康をデザインすべき。
76歳以上は毎日やっても飽きないルーティンを持つ。

コラム 予防医学が教える最新健康常識2サプリメントは健康作りに有効か

第3章 健康に効く「つながり」の作り方

「つながり」、その作り方がわからない人へ。
世界は6次の「つながり」でできている。
感情や行動は3次まで影響している。
「つながり」は質よりも量を追求した方がいい。
良い「つながり」、悪い「つながり」。
家庭での「つながり」の作り方ー「亭主関白」と感謝の言葉で夫婦関係を見直す。
妻に言葉と笑顔で感謝を表現する。
職場での「つながり」の作り方ー若い世代が職場で「つながり」を持とうとしない。
職場の同僚があなたの寿命を左右する。
鍛えるべきは、同僚との雑談力。
雑談が多いほど、生産効率も上がる。
社会的地位と寿命の関係。
地域でのつながりの作り方ー複数のコミュニティに属する。
コミュニティには責任ある立場で属した方が長生きする。
友人が増えると健康への意欲が高まり、親密度も上がる。
自身でのつながりの作り方ー瞑想で「つながり」を作る
姿勢、呼吸、心を順番に整える。
ポジティブになれるSNSは良い「つながり」である。
私は「つながり」を作るのがヘタだった。
弱さをさらけ出すと「つながり」が生まれる。

コラム 予防医学が教える最新健康常識3脂肪をめぐるウソとホント

第4章 「つながり」は心を健康にし、幸せを作る。

東洋と西洋とでは健康の定義が違った。
WHOの定義で健康の概念が変わった。
これからは心の健康の時代である。
ポジティブ心理学でわかった「幸せ」と「つながり」の大切さ。
人が幸せを感じる3つのパターン。
年収700万円を超えると幸せ感に差がない。
愚痴るとストレスが倍増して老ける。
世界のトップ企業が愚痴らない教育をしている。
思考と感情は変えられない。だから行動を変える。
イギリスで行なわれている「感謝の訪問」の効能。
寄付によって幸せ感は高まる。
ビル・ゲイツが寄付をする理由。
相手を思いやると幸福度が高くなる。
誰かのためにお金を使うと脳は幸せを感じる。

コラム 予防医学が教える最新健康常識4間違いだらけのダイエット法

おわりに~これから病気と元気を共存させる時代が始まる~


平成29年6月25日
杉岡 秀紀 拝


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年05月17日

【書評】『先生は教えてくれない大学のトリセツ』

田中 研之輔 『先生は教えてくれない大学のトリセツ』 ちくまプリマー新書、2017。

「大講義は聞きっぱなしでいいの?発表が苦手なのはなぜ?レポートはコピペじゃもったいない。
平凡なんてヤダと思う君へ」

「大学を卒業するとみんな就職するのに、大学では「その先のこと」は教えてくれない。
ただ漠然と4年間を過ごすのではなく、より良い未来を自らの学びで手に入れるのです」


これが帯や背表紙に書かれたメッセ―ジです。

事実、本書では、第1章から第3章にかかけて、講義やプレゼン、論文の書き方について
コンパクトにポイントがまとめられています。

(参考)目次
プロローグ 学費四三〇万円を無駄にしない
第1章 三〇分に一つの質問メモで講義を楽しむ
第2章 プレゼンは三回やれば好きになる
第3章 論文を磨く秘訣はチームワーク
第4章 バイトするならダブルワーク
第5章 白熱しない講義の裏事情
エピローグ 生き方をデザインする学び


その意味においては本書はトリセツ、すなわち「取り扱い説明書」にふさわしい内容となっていますね。

プロローグでも述べられているように、ぜひ現役の大学生はもとより、高校生、親御さん、大学関係者に加え、
筆者が強調されている「中2」の皆さんに読んでもらったら面白いと思います。

ただ、私が読んでいて一番共感したのは、

①米国の大学と日本の大学の違い
②昔の大学と今の大学の違い
③高校までの教員に求められる資質と大学教員に求められるそれの違い


でした。

①③はこれまでの色んな方が指摘されているので、割愛しますが、
②については、スマホ、いな、携帯がまだ普及時代に大学で学んだ経験がある者として、
本当になるほどな〜と考えさせられました。

つまり、

「昔の大学講義は回数も少なく、また板書型であったため、手を動かしながら学んでいたが、
現在は出欠が半ば強制され、ICTの普及もあり、手を動かさずになった」


という指摘です。

筆者はこの結果、ゆえに私語が増えたと論を展開しますが、私が感じたのは、
今後AIやIoTが進めば進むほど、私語の問題に留まらず、

「知識(記憶)の定着」

の観点から人間(脳)が退化するのでは、という危惧。

実際に我々20世紀に生まれた者の脳と21世紀のスマホネイティブの皆さんの脳では
使っている(発達している)箇所が違う、という指摘を聞いたことがあります。

哲学的なまとめになっちゃいますが、やはり

「何かを得ることは何かを失う」

ということですかね〜(その逆も然り)

ともあれ、時代の変化は早く、大学(教員も学生も)も常に変化(対応)が求められます。

「適者生存」

を肝に銘じつつ、明日からもがんばろうと思えた一冊となりました。

ちゃんちゃん。


平成29年5月17日
杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 18:59Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年05月08日

【書評】荻原浩『メリーゴーランド』


荻原浩『メリーゴーランド』新潮文庫、2006 読了。

タイトルからは想像出来ないと思うが、赤字の公共施設の立て直しを命じられた民間出身の自治体職員の奮闘記小説である。

本は毎日読むが、小説はあまり読まない私。だが、テーマが面白そうだったのでGWの一冊で読んでみた。

感想は小説として面白かったのは言うまでもなく、よく取材されててすごい、の一言。

公務員の体質、決裁文化、予算制度、出向制度、市長と議会との関係性、市長の権限と選挙、など教科書を読む前に副読本としても良いかもしれない。

また公務員を目指す人にも自治体職員のイメージを掴むためにオススメ。

もちろん普通の小説として楽しむのも問題ありません。

最後にメリーゴーランドとあるため、市営か三セクの遊園地かな、と思われた方はするどい(蛇足ですが、私も昔『メリーゴーランド』という曲をデビューアルバムに書いたことがあり、その曲が読書中、BGMとして頭の中をグルグル回り続けていました笑)

https://www.amazon.co.jp/dp/4101230331/  

Posted by 杉岡 秀紀 at 08:12Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年04月29日

【書評】観光立国の正体

藻谷浩介・山田桂一郎『観光立国の正体』新潮社、2016 読了。







まさに『デフレの正体』の藻谷浩介さんと「観光カリスマ」の山田桂一郎さんとのコラボならではのタイトル、そして内容であった。

本書のキーワードは

「ブルガーゲマインデ」と「感幸地」

である。

ブルガーとはドイツ語で「市民/住民」のことで、

「住民自治経営組織(役所や役場のような行政機関とは違う住民主体の独自組織)」

の意味とのである。

ともあれ、これまで観光というのは、ややもすると、観光協会や旅行代理店、行政が主導しがちであったが、これからの観光というのはそうではなく、スイスのツェルマットのようにブルガーゲマインデが中核となり、持続可能で自律的な「感幸」を作ることが重要であるという。

確かに日本では基本的に

「訪れたいまちと住みたいまち」

が別個に議論されているきらいがある。

その証拠に、いわゆる観光地であるにも関わらず、人口減少が止まらず、賛否はともかくとして「消滅可能性都市」にノミネートされているまちなどはその典型なのだろう。

本書ではそうではなく、まさにリピーターをどのように作るか、すなわち

「訪れたいまち=住みたいまち」

にすべきではないか、と投げ掛ける。

色々と新しい気づきがあったのだが、詳細は読んで頂くとして、ここでは私が響いた言葉だけを列挙しておきたい。いずれも至言ですね。
(藻谷さんは基本的に対談しか登場しないので、表記がなければすべて山田さんの発言)

・「住民の生活満足度を満たすことを最優先して地域を育てていくと、住民の表情や態度はごく自然に生き生きとしてくるもの」(p.26)
・「高品質・高付加価値体質と共に質的向上を続ける経営体質」(p.39)
・「リピーターあってのサービス業」(p.45)
・「観光だけではまちおこしはできない」(p.47)
・「観光は世界のGDPの約1割を占める」(p.51)
・「ヨーロッパを始め世界の観光統計は全て「延べ泊数」」(p.53)
・「地域のやる気の人々が少人数でも良いので団結し、目先の利益を超えて「一緒に稼ぐ」ことを前提に、地域内利潤を最大化させる」(p.60)
・「お客様一人一人の消費額を高めるためには、(中略)むしろ一分一秒でも長く「時間を作ってもらう」発想が重要」(p.68)
・「住民参加ではなく、行政参加」(p.82)
・「一期一会は一語一笑」(p.105)
・「地産地消より地消地産」(p127)
・「地域経営を担う自治体の多くは、理念がないか、不明瞭の状態のまま」(p.130)
・「マーケティングとは、顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動の全て」
(p.158)
・「今、国内旅行は個人客が中心で、周遊よりも一箇所で連泊を選ぶ方が多くなっています」(p.161)
・「デスティネーションキャンペーン(中略)はドーピングキャンペーンと呼ばれています」(p.163)
・「マーケティング4.0(自己実現満足)では、顧客が享受する商品・製品・サービスにより要望、欲求が達成されたかどうかの結果が重視される」(p.167)
・「ヤクゾンビ(役職だけを欲しがる役害)」(p.179)
・(藻谷)「経営学では、SWOT分析が流行っている(中略)けど、これは観光業の分析ではワークしない。なぜか。SWOTはお客は誰かによって変わるから」(p.205)
・「一度外に出るのは良いと思うのですが、二度と帰ってこないことが問題」(p.240)



最後に目次は以下のとおりである。

(参考)『観光立国の正体』目次
はじめに 観光業界の「ルパン」 藻谷浩介

I 観光立国のあるべき姿 山田桂一郎

第1章 ロールモデルとしての観光立国スイス
「非日常」よりも「異日常」を/リピーターを獲得せよ/常に生き残るために必死な国/英国富裕層によって「発見」されたアルプスの山々/目前の利益を追わず、「ハコモノ」を作らない/国そのものをブランド化/日本の観光地がダメになった理由/寂れた観光地に君臨する「頭の硬いエライ人」/「観光でまちおこし」の勘違い/「人手がかかる産業」を大事にせよ

第2章 地域全体の価値向上を目指せ
キャパシティを増やさず、消費額を引き上げる/ブルガーゲマインデという地域経営組織/足の引っ張り合いを避け、地域全体の価値向上を/地元で買う、地元を使う/スイスの観光局は自主財源を持った独立組織/自然と調和した景観を保持/馬車と電気自動車がもたらす「異日常」/「時間消費」を促すことが「地域内消費額」をアップさせる/ガイド・インストラクターは憧れの職業/最も重要なのは人財

第3章 観光地を再生する──弟子屈町、飛騨市古川、富山県の実例から
地域振興に必要な住民主体の活動/忘れ去られた「高度成長期型」の観光地/「住民主体、行政参加」の組織に一本化/住民ならだれでも参加OK/株式会社を設立、初年度から黒字に/エコロジーとエコノミー/外国人旅行客に大人気の「里山体験」/「なんにもない」から「クールな田舎」へ/とやま観光未来創造塾/「新幹線効果」の誤解/国際水準とユニバーサルツーリズム

第4章 観光地再生の処方箋
「ピラミッド型のマーケット」を構築せよ/富裕層を取りはぐれている日本/北海道の「一万円ランチ」に人気が殺到した理由/負のスパイラルを防げ/格安ホテルチェーンが地域を壊す/近隣のライバルと協力した方が儲かる/休日分散化を真剣に考えよう/社会全体に「観光」を位置づける重要性/「地産地消」より「地消地産」/高野山が外国人に高評価のワケ/明確な将来像を描け

II 観光立国の裏側 藻谷浩介×山田桂一郎

第5章 エゴと利害が値域をダメにする
「地域ゾンビ」の跋扈/間違った首長が選ばれ続けている/「改革派」にも要注意/行政が手がける「劣化版コピー」の事業/補助金の正しい使い方/ボランティアガイドは「ストーカー」と一緒/観光業界のアンシャンレジーム/JRの「ドーピングキャンペーン」/顧客フィードバックの不在/竹富町の革新的試み/自治体の「旅行会社依存体質」/有名観光地でゾンビたちが大復活! /観光庁の構造的問題

第6章 「本当の金持ち」は日本に来られない
世界一の酒がたったの五〇〇〇円/「アラブの大富豪」が来られるか/近鉄とJR東海という「問題企業」/「ポジショニング」を理解せよ/野沢温泉と白馬/悩ましい大手旅行会社との関係/玉石混淆のリクルート

第7章 「おもてなし」は日本人の都合のおしつけである
北海道ガーデン街道/「熱海」という反面教師/せっかく好循環が生まれても……/大河ドラマに出たって効果なし! /戦術の成功、戦略の不在/頑張っても大変な佐世保/「爆買い」に期待するなかれ/「おもてなし」は日本人の都合の押しつけである/医療ツーリズムでも「マーケットイン」が不在/カジノが儲かるという幻想/それでも日本の観光には無限の可能性

おわりに 山田桂一郎


平成29年4月29日

杉岡 秀紀 拝  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2017年01月09日

【書評】高野誠鮮『頭を下げない仕事術』(宝島社、2016)

高野誠鮮『頭を下げない仕事術』宝島社、2016。

https://www.amazon.co.jp/頭を下げない仕事術-高野-誠鮮/dp/4800231477/

「ローマ法王に米を食べさせた男」。



「スーパー公務員」

この言葉で高野さんの顔が浮かんだ人は、地域通、公共通(こんな言葉あるかな笑)の方だと思います。
また、

「ん?何かドラマで見たぞ」

と思った方は情報通ですね。というのも、東京都職員扮する唐沢寿明が過疎地域に出向し、
地域づくりを展開するドラマ

「ナポレオンの村」

のモデルが、言わずもがな、高野さんでしたから。


本書のはじめに(p.5)にもあるのですが、高野さんのデビュー作であり、代表作となった

『ローマ法王に米を食べさせた男』(講談社α新書、2015)

は高野さんの仕事において

「何をやったか」

をまとめた本でした。それに対して本書は、

「どうやったのか」

の本と言えます。
(補足をすれば、ローマ法王に留まらず、「一地方公務員」という立場でありながら、
NASAやロシア宇宙局、石破元大臣などトップを動かしてきた)

目次は下記のとおりです。

はじめに 仕事でやってはいけない、あること
序 わたしが「ローマ法王に米を食べさせる」まで

◆第1章 仕事以前のこころ構え
仕事術1 「やろうと思う」を「やってみる」に
仕事術2 目標を周囲に宣言する

◆第2章 「情報」と「人脈」の生かし方
仕事術3 すべての「情報」は「発信源」にあたる
仕事術4 「好奇心」を情報収集に生かす
仕事術5 「大きな人」とつながる

◆第3章 成功への「戦略」
仕事術6 「戦略」は立てても「計画」はしない
仕事術7 戦略はアメリカを参考にする

◆第4章 相手のこころを動かす
仕事術8 交渉では「お願い」しない
仕事術9 はじめに「相手の喜び」を考える
仕事術10 「条件」をつきつけない

◆第5章 価値を高めて売る
仕事術11 売りたい時ほど、売らない
仕事術12 大々的に宣伝しない
仕事術13 情報は「遠方」から流す

◆第6章 仕事をつぶす「余計なもの」
仕事術14 「金色夜叉」にとらわれない
仕事術15 「嫌われる覚悟」をもつ
仕事術16 「セクショナリズム」に呑まれない
仕事術17 「余計なもの」を入れない

◆第7章 挫折を乗り越える
仕事術18 挫折のときには「雑草の根」を見る
仕事術19 ピンチを「チャンス」と考える
仕事術20 「頭」ではなく「身体」で考える
仕事術21 「肩書き」がないことを「強み」にする

◆第8章 大きな仕事をするために
仕事術22 大きな視点をもつ
仕事術23 敵を味方にする
仕事術24 神仏を敵にしない

この中で私が特に勉強になったのは、

「頭を下げないことで、利他の心で仕事ができる」

という一見矛盾しそうな、それでいて言われてみれば納得する至言でした。

すなわち、仕事を進める上で最も重要なのは、「利他のこころ」であり、
相手のためを思い、提案を持ちかけるのであれば、頭は下げようがない。
頭を下げるのは「利己」だからだと。

じゃあ頭を下げる代わりにどうするか。

「利他の心で行動し、協力をしてほしい人には良い質問をすればいい」

と高野さんは喝破します。

そして、もう1つ重要な学びがありました。それはこうした言わば

「高野哲学(「人体主義」とも説きます)」

はどこから生まれたのかのルーツについて。

その1つが仏教であり、いま1つはコールマンという米国の元将校、そして最後は元職場の直属上司の一声
ということが本書から分かりました。

高野さんにはつい先月、府北部は京丹後市に講演のためにお越し頂き、ランチもご一緒させて頂きましたが、
講演の中でも、書物の中でも、また日常会話の中でもぶれない軸というものも感じざるを得ません。

本書では強調されていませんが、この高野哲学を作ったのも頭ではなく、人体主義そのものだったのですね。


というわけで、最後に本書の至言をご紹介しておきます。

・どんなに仕事ができる人でも、いつも鉄仮面のような表情で冷めてばかりいては、周囲に人はついてこない。涼しい顔をして、適当に流して、何か大きなことをなした人にはあったことがない。何か大きなことを成そうと思ったら、「熱量」が必要不可欠。

・知っていることは、体を駆使し、体にしみ込ませて初めて使えるようになる。これが識(し)るということ。

・人脈を生かすというのは、人を利用することではなく、相手が喜び、自分も喜び、相手が喜んで協力してくれること。ウィウィンの関係にしないと人は動いてくれない。利他の気持ちを持つこと。ただひたすら頭を上げるのではなく、相手の喜びを考え、行動する。

・戦略を立てる際に気をつけなくてはならないことがある。それはやったことがない人=「予言者」の言葉に惑わされないこと。「予言者」の言うことは耳は貸さない。

・コミュニティの中にいると内部の悪いことしか見えてこず、なかなか良いところには気づかない。日本人は特にその傾向が強い。自分の子どもは悪いところがよく見えて叱るけれど、他人の子って、良いところがよく見える。それと同じ。

・情報は遠くから、多くの場所を通過して発信元に戻ってくることで、その価値があがる。(中略)情報を流すなら、今いる場所からできるだけ距離が離れた遠方に飛ばした方が勢いをもって戻ってくる。

・仕事をしていくうえで、あまり関わらない方が良いというタイプの人。①失敗の心配ばかりする人、②「知」を「識」にしていない人、③私心(金色夜叉=金欲+権力欲)だけの人。

・様々な問題を考えていくうえで「人体」を用いて考える「人体主義」を意識するよう心がけている。村を人にたとえて考えることで様々な道が開け、それまで思いつかなかった解決策がみつかる。村はいくつもの家族から構成されている。家族は人の集まり。結局村というのは人の集合体

・会社のためを考え、相手が喜ぶようなことを考え仕事に取りくんできた人は、みんな惜しまれながら退職する。これが「枯れる」姿。我欲という余計なものこころにいれず滅私奉公で勤め上げてきた人間というのは枯れる。しかし、自らの金欲や出世欲のためだけに働いていた人間は決して枯れない。余計なものでこころが満たされるので腐る。

・視野が狭い人間というのは、「立場が違う」「言っても無駄だ」「どうせ認めてくれない」などとやってものないくせに「出来ない理由」ばかりを並べ立てる。否定から入るので努力もしない。視野の狭さは愚痴につながる。(逆に)視野が広がると行動につながる

・騙さない。ごまかさない。卑怯な真似をしない。偽善を行わない。他人を蹴落とさない。自分の利益だけを追求しない。神仏を敵に回さない生き方をしよう。


平成29年1月9日
杉岡 秀紀 記


  

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2016年12月04日

【書評】『人生の「ねじ」を巻く77の教え』

日東精工株式会社企画室『人生の「ねじ」を巻く77の教え』ポプラ社、2014。

https://www.amazon.co.jp/人生の「ねじ」を巻く77の教え-一般書-日東精工株式会社-企画室/dp/4591140059

「ねじとはモノとモノをつなぐもの。ねじによってモノがつくられ、モノを介して人と人とはつながります。私たちがつくるねじは、心と心を締結する、そんな役割を担っています」

こんな書き出しから本が始まります。

著者は個人ではなく日東精工株式会社企画室。
初めて耳にする人も多いと思いますが、この会社のお世話にならなかった方はおそらくいないと思います。
というのも、日東精工は世の中に流通する様々なねじ、自動ねじ締め機、ねじ締めロボット、計測制御機器の会社であり、
特に精密ねじ、極小ねじの分野ではわが国ナンバーワンのシェアを誇るからです。
つまり、自動車や家電、デジカメ、パソコン、携帯電話、医療器具を使っている人なら、
意識するしないに関わらず日東精工のねじを手にしているのです。

確かにねじから教わることは本当に多い。
ねじは緩むことがないようにするのが基本ですが、外したい時に外れないと困る。
一見矛盾している2つのことを両立させる必要があるわけです。
これは仕事に相通じますね。
また強く締め過ぎれば良いとういことでもないく、加減が大事です。
これも仕事や人生に相通じる部分がありますね。

加えて、ねじとはそもそも実に目立たない存在で、空気のような存在ですよね。
「ない」と困るのですが、なかなか「ある」ことそのものの価値を感じる機会が少ない。
これって家族や友人など身近な人にも同じことが言えるかもしれません。
『星の王子様』よろしく

「大事なものは目に見えない(見えにくい)」

ということですね。

だからこそ、ねじの会社で大事にしている哲学(研修資料)はもしかしたら会社以外の人に言えることも多いのではないか、
そのような声に応えて出来たのが本書ということです。

以下、私が印象に残った箇所を抜粋して紹介します。

日東精工「似ているようでまったく深さの違う言葉。「磨く」と「拭く」。拭くだけでは光らないが、磨けば光る」
日東精工「サラリーマンという仕事の種類はない。あなたの仕事にキャッチフレーズを」
日東精工「言葉を濁らせると「くち」は「愚痴」に、「とく」は「どく」になる。濁点を取って明瞭に」
日東精工「チャンスとオポチュニティは違う。チャンスは棚からぼた餅。オポチュニティは意図して生み出す機会」
ウィルファード・アラン・ピーターソン(米国作家)「寛容とは、暖かさのことである。それは、あらゆる相場を越えて友情の手を差し伸べることである。寛容とは、フェア・プレイすることである。それは、むりやり自分の考えを人に押しつけない。寛容な人は、自分自身の立場は決めていても、人に対しても同じ自由を求める。寛容とは、人を見下げず、人を見上げることである」
湯川秀樹(日本人初のノーベル受賞者)「長い夜を泣き明かしたことのない人間に、人生を語る資格はない」
ブルータス(『ジュリアス・シーザー』)「目は己を見ることができぬ。何か他のものに映してはじめて見えるのだ」
デットマール・クラマー(日本サッカー界生みの親)「好きというだけでは一流になれない。愛することによって始めて一流への道が開かれる」


こんなことを研修で確認されているなんて素敵な会社ですね。
ちなみに日東精工は京都は府北部の綾部に本社を置く会社で、地域貢献、社会貢献に社員を挙げて力を入れておられます。
(本書の売り上げも地域のために寄付されているとか)

http://www.nittoseiko.co.jp/news/books-presentation.html

心のねじが締まり過ぎたり、緩み過ぎたりしたりと感じた時にぜひ一読したい一冊です。


平成28年12月4日
結婚記念日に自戒を込めて
杉岡 秀紀


  

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2016年07月16日

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』

堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書、2008。

https://www.amazon.co.jp/ルポ-貧困大国アメリカ-岩波新書-堤-未果/dp/4004311128/

米国では共和党と民主党、英国では保守党と労働党では、掲げる政策や支持層が大きく違う。

米国の大統領候補でドラルド・トランプ氏が支持されているように(なぜか共和党からだが…)、
また英国において国民投票によりEUからの離脱を求める声が残留派を凌駕したように、
近年は特に所得水準の低い国民層や移民や難民の方々に仕事を奪われた層からの怒りに近い声が大きくなっている。

このようにこれまでの「貧困大国」というイメージは主に資本主義や民主主義、(新)自由主義の先進国の問題であった。

下記の目次をざっとご覧頂ければ分かるように、本書でも紹介される米国の事例はその象徴とも言うべき存在であろう。

【目次】
第1章 貧困が生み出す肥満国民
・新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭
・なぜ貧困児童に肥満児が多いのか
・フードスタンプで暮らす人々
・アメリカ国内の飢餓人口

第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
・人災だったハリケーン・カトリーナ
・「民営化」の罠
・棄民となった被災者たち
・「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域
・学校の民営化
・「自由競争」が生み出す経済難民たち

第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
・世界一高い医療費で破産する中間層
・日帰り出産する妊婦たち
・競争による効率主義に追いつめられる医師たち
・破綻していくアメリカの公的医療支援
・株式会社化する病院
・笑わない看護婦たち
・急増する医療過誤
・急増する無保険者たち

第4章 出口をふさがれる若者たち
・落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策
・経済的な徴兵制
・ノルマに圧迫されるリクルーターたち
・見えない高校生勧誘システム
・「JROTC」
・民営化される学資ローン
・軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生
・カード地獄に陥る学生たち
・学資ローン返済免除プログラム
・魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミー」
・入隊しても貧困から抜け出せない
・帰還後にはホームレスに

第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
・「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」
・「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」
・ターゲットは世界中の貧困層
・戦争で潤う民間戦争請負会社
・見えない「傭兵」
・一元化される個人情報と国民監視体制
・国民身分証法
・州兵としてイラク戦争を支えた日本人:「これは戦争だ」という実感)

しかし、本書が出た2008年あたりを節目にわが国でも

「子どもの貧困」「貧困の連鎖」「相対的貧困率」「高学歴女子の貧困」「女女格差」「下流老人」「貧困世代」

などの概念が注目され始め、今では6人に1人の子ども(とその親)が貧困状態にある。

つまり、本書の問題意識はもはや「対岸の火事」ではなく、日本そのものがそのような国家になろうとしている、
あるいはもうすでになりつつある

「近未来図」

とも見えなくない。

このことは決して、20世紀の国民総中流時代に戻ろうとか、共産主義を今更礼賛する訳でない。

しかし、自由主義・民主主義・自由主義をただ市場に任せるだけでは、どうしてもそこに乗り切れない層が出てしまう事実を
どう考え、どう乗り越えるのか、といういわば

「スタビライザー」

を本気で考えないと、まさに

「明日は我が身」

になりかねない(いや、残念ながらもう片足くらい突っ込んでしまっている)。

そして、そのことが国民を2分するような大きなうねりになる可能性も否定できない。

万能ではない自由主義・民主主義・自由主義を少しずつ修正し、誰もが安心して生きられる社会を日本は目指さないといけない。

その要が政治であり、それを決めるのは国民一人一人である。

18歳選挙権が実現した今だからこそ、わが国も若者からお年寄りまで、まさに国民がよってたかった智慧を絞り、
貧困大国にならないための方策を考える時期に来ている。

平成28年7月16日

杉岡 秀紀 拝



  

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2016年07月07日

藤田孝典『貧困世代ー社会の監獄に閉じ込められた若者たちー』

藤田孝典『貧困世代ー社会の監獄に閉じ込められた若者たちー』講談社現代新書、2016。

https://www.amazon.co.jp/貧困世代-社会の監獄に閉じ込められた若者たち-講談社現代新書-藤田-孝典/dp/4062883589

2015年に『下流老人』を書いて20万部を越えるベストセラーになった藤田氏による書。ほぼ同年代ということもあり、一つひとつの言葉が響いた。

タイトルを見れば一目瞭然であるが、前著に引き続きショッキングなタイトル、また内容であった。

しかし、これが少数の人間の問題では済まなくなり、悲しいかな、もはや社会として多数の構造的な問題になってしまっているのが日本の現実である。

というのも、藤田氏が指摘するように、都市部の高齢者であれば、ヘルパー、デイサービス、デイケア、ショートステイ、緊急通報システム、訪問看護、特別擁護老人ホーム、有料老人ホームなど、福祉メニューは社会資源は豊富にある。

しかし、若者支援のメニューは本当に少ない。藤田氏が強調する

「監獄に閉じ込められた悲劇」
「結婚、子育てはぜいたくというのが貧困世代のホンネ」
「日本では若者を育てられない」

と評するのも決して大げさではなく、とにかく若者への福祉政策、支援は緊急度かつ重要度が高いテーマと言える。

また、その原因として「よく語られる5つの若者論の誤り」が紹介されていたが、
我々若い世代同士でももしかすると誤解している節があり、ぐさっとくる。

①働ければ収入を得られるという神話(労働万能説)
②家族が助けてくれているという神話(家族扶養論)
③元気で健康であるという神話(青年健康説)
④昔はもっと大変だったという時代錯誤的神話(時代比較説)
⑤若いうちは努力をするべきで、それは一時的な苦労だという神話(努力至上主義)

最近は18歳選挙権とか、シルバー民主主義是正の議論が喧しいが、
この現実を知れば、相対的にも絶対的にもこの問題を考える価値がいかに高いかが分かる。

このまま放置すれば、日本は

「子どもの貧困→貧困世代→下流老人」

という連鎖に陥る人が溢れ、国レベルでイギリスでいうEU脱退やアメリカでいうトランプ候補の台頭
といったことも起きかねない(実際もうそうなりつつあるかもしれないが…)。

災害と同じく起きてからでは遅い。

ぜひ後始末的な対応ではなく、始末的な対応が今必要である。


平成28年7月7日

杉岡 秀紀 記


  

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2016年06月18日

【書評】藤山浩『田園回帰1%戦略』

藤山浩『田園回帰1%戦略』農文協、2015。

https://www.amazon.co.jp/田園回帰1%25戦略-地元に人と仕事を取り戻す-シリーズ田園回帰-藤山-浩/dp/4540142437/

「1年に1%の人と仕事を取り戻していけば、地域は安定的に持続しえる」

といういわゆる

「1%戦略」

で注目された書。

単なる地方創生の批判本ではなく、地方消滅可能性都市が限界集落、いな過疎と呼ばれた時代から
この問題に向き合い取り組んできた島根だからこそ説得力を持って編み出せたら理論と言える。

もう少し言葉を足せば、過疎の発祥地でもあり、課題先進県である島根だからこそ、先駆的な対策が取られ、
海士町然り、邑南町然り、津和野然り、全国的に注目される最先端の取組み先進地になりつつあるということである。

然るに、島根は課題先進県であると同時に課題解決先進県でもあるということ。

そして、私が一番感動したのは人口を単なる数ではなく、

「人口=人生の数」

と解釈した藤山さんのセンス。

このセンスを持つことが人口減少社会に一番重要なポイントだと思う。

目次は以下のとおり。

序章 「市町村消滅論」は本当か
第1章 「2015年危機」と「大規模・集中化」の半世紀――田園回帰という希望
第2章 田園回帰が始まった――島根からの報告
第3章 人口の1%取戻しビジョン
第4章 所得の1%取戻し戦略
第5章 田園回帰を支える社会システムの設計
第6章 求められる田園回帰に向けた条件整備

本書ではイタリアやイギリスがモデルとして紹介されているが、
わが国においては島根モデルに学ぶことが先ではないだろうか。


平成28年6月17日
杉岡 秀紀 記


  

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2016年06月14日

【書評】吉見俊哉『「文系学部」廃止の衝撃』

吉見俊哉『「文系学部」廃止の衝撃』集英社新書、2016。

https://www.amazon.co.jp/「文系学部廃止」の衝撃-集英社新書-吉見-俊哉/dp/4087208230/

最近こそ議論が下火になったものの、昨年度はこの話題で持ち切りだったテーマ。

筆者の吉見氏は、この騒動の原因はマスコミの誤解に起因するとばっさり。
たとえば「文系=教養、理系=専門」「教養=リベラルアーツ」「文系科目=役に立たない、理系科目=役に立つ」のような誤解もその一つ。

逆に「役に立つ」とはどういうことか、ということについて延々と喝破する。

とはいえ、これだけ議論が盛り上がったのは、文科省の大学改革への現場(教職員)の怒りがあったのでは、とのちくり。この見方は卓見である。

個人的には学生から論文を批判させる「アタックミー」という取組みが面白かった。

また「人生3回大学入学」という提案は私も兼ねてより現場で感じてきたことなので賛成。

こうなると、ますます最終学歴よりも最終学習歴が問われる時代が近づきそうですね。

今後の議論に期待。


最後に同じようなタイトルで

「文系学部解体」

という本もあります。合わせて読むと理解がさらに進むと思います。

https://www.amazon.co.jp/文系学部解体-角川新書-室井-尚/dp/4040820517/

平成28年6月14日 
杉岡 秀紀 記

  

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2016年06月12日

【書評】木下斉『まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし』

木下斉『まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし』学芸出版社、2016

https://www.amazon.co.jp/まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし-木下-斉/dp/4761513594/" target="_blank">https://www.amazon.co.jp/まちで闘う方法論-自己成長なくして、地域再生なし-木下-斉/dp/4761513594/

最近まちづくりや商店街界隈で注目されている木下斉氏によるまちづくりのための思考・実践・技術の紹介本。
(こういう本を書きたいな〜と思ってたら、やはり誰かが書いちゃうんですよね〜)

彼の原点は早稲田商店街での失敗経験。しかし

「失敗=経験(これがまた早稲田商店街の元会頭の安井潤一郎氏の言葉なのも何かの縁ですね)」

ですので、熊本城東マネジメント株式会社での成功事例はじめそこからのレバレッジは素晴らしいと思います。

そして、その過程でポイントとなったのが

「大学院(一橋大学大学院商学研究科)」

で学ばれた点。
(本の中でコラム的に木下氏が読んだ文献が多く紹介されているのもその影響でしょう)

ともあれ、一言で言えば、大学(院)が再チャレンジのための場として機能した訳ですね。

しかし、実はこれは大学の本来のあるべき姿でもあるのです。

18歳人口だけを対象にするのではなく、一度社会に出て、壁にぶつかり、課題意識を持って大学に入る。
それを家族も企業も行政も応援する。
そんな大学、大学生のあり方が日本の普遍モデルになって欲しいものです。

そうすれば今のような奨学金問題も大学の経営問題も、企業の就活一括採用問題もミスマッチ問題も女性のM字型カーブ問題も、
そして学びと働きの接続問題も大きく解決の方向に向かうと思われます。

というわけで、内容は以下の目次も参照頂き、ぜひ直接ご覧ください。

【目次】
はじめに
第1章 思考編
1.自分から始める時に必要な思考
(1)受け身にならない。常に対案を作る
(2)みんなではなく、自分がどうしたいのか
(3)準備病から脱却し、まずはやってみる
(4)「悩むこと」と「考えること」は違う

2.グループで取り組む時に必要な思考
(1)「自分たちでやる」から、「人に任せる」へ
(2)説得ではなく、結果で見せる
(3)「ないもの」で諦めず「あるもの」で勝負する

3.革新的な事業に地域で取り組む時に必要な思考
(1)いい人になることは二の次にする
(2)再挑戦こそ本当の挑戦
(3)稼ぐことと向き合う

第2章 実践編
1.成長プロセスのイメージ
2.成長プロセスの基本ステップ
3.ステップ別解説
1 単発活動メンバー:自分のウリを持って取り組みに貢献しよう
2 単発活動マネージャー:面白い企画を立てて参加者を率いよう
3 継続活動メンバー:自己管理しながら要領よく動こう
4 継続活動マネージャー:変化にも対応できる継続力を養おう
5 単発事業メンバー:稼ぐための営業力を身につけよう
6 単発事業マネージャー:複数事業を展開し、新たな事業モデルを創り出そう
7 継続事業メンバー:事業の連鎖を生み、構造問題の解決を図ろう
8 継続事業マネージャー:事業手法を体系化し、外とのネットワークを広げよう

第3章 技術編
1.基本的な技術を身につける
2.情報力 情報を集め、検証する
3.情報力 複眼的に分析する
4.論理力 因果関係を整理する
5.論理力 複数の要素を構造化する
6.構想力 自分のビジョンを描く
7.構想力 絞った戦略を立てる
8.実現力 プロジェクトを効率的に管理する
9.実現力 やる気を引き出し、良い結果を導く
10.組織力 みんなで取り組むからこそ失敗する
11.営業力 対象を絞り逆算で開発する
12.数字力 経営に関わる数字を見分ける

おわりに


平成28年6月11日
杉岡 秀紀 拝



  

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2016年05月27日

【書評】竹本遼太『コンビニ難民-小売店から「ライフライン」へ–』

竹本遼太『コンビニ難民-小売店から「ライフライン」へ–』中公新書ラクレ、2016。

「民による公共」

という言葉がある。

2010年に経済産業省の研究会が出した「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会報告書」に出てくる概念で、
地域社会のインフラをめぐる課題解決策の一つのと注目されている。

介護や福祉など混合経済と呼ばれる領域は一番分かりやすいが、近年注目されているのが、

「コンビニ」

の存在である。

というのも、コンビニを数値面から見ただけでも、

・総店舗数:約5.5万店 (参考)郵便局は2.5万店
・年間売り上げ:約10兆円 (参考)日本の総予算約90兆円
・1か月の来店者数:約14億人

ともはや日本の経済や生活には無くてはならない存在になりつつあるし、
一番の注目は、近年

・行政サービス(住民票や印鑑証明書の発行、税金の振込、マイナンバーサービス)
・雇用(アルバイトや高齢のパート中心であるが、推定80万人が働いている)
・防災(都道府県や市町村と協定を締結し、有事の際は食糧や水道、トイレなどを開放)
・物流(郵便局やヤマト、アマゾンと連携したサービス)
・金融(ATM機能)

などさまざまな面で非常に

「公共的側面」

が高まって来ており、もはやライフラインと同義になりつつあるからである。

最近はさらに健康、食、不動産、エネルギーなどへの展開も一部見られる。

そんななか、タイトルにもあるが、本書は、これからの超高齢化、人口減少の中で
コンビニの利便性、サービスを享受できない人、すなわち

「コンビニ難民」

が沢山発生するのでは、と警鐘を鳴らす。

その数実に868万人、全高齢者の6割とされる。

実際、現在でも

北海道4、東北23、北関東・甲信越22、南関東11、北陸2、東海2、近畿18、中国11、四国10、九州・沖縄38

が「コンビニ0」である。

もちろん全体のコンビニの数は右肩上がりで増えており、今後もまだ増加が予想される。
しかし、それはあくまでビジネスとして見込みのあるところであり、実際に撤退を余儀なくされるコンビニも後を絶たない。

消滅可能性自治体の議論もある中で、コンビニだけに任せれば、この偏差は埋まるまい。

今後の買い物弱者対策、シニア層の雇用、健康や介護との連携、すなわち「民による公共性」の重要性を鑑みれば、
ここはやはり行政や地域とのより緻密な戦略が求められるのではないだろうか。

「官から民へ」

といういうのは実は乱暴なスローガンである。これからの時代はむしろ

「官と民で」

ではないだろうか。

今日もコンビニに出入りしながら、そんなことを思う今日この頃である。


平成28年5月28日

杉岡 秀紀 記






http://www.amazon.co.jp/コンビニ難民-小売店から「ライフライン」へ-中公新書ラクレ-竹本-遼太/dp/4121505506/

  

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2016年05月03日

【書評】西村幸夫ほか編『まちの見方・調べ方』

西村幸夫ほか編『まちの見方・調べ方―地域づくりのための調査法入門』朝倉書店、2010。

http://www.amazon.co.jp/まちの見方・調べ方―地域づくりのための調査法入門-西村-幸夫/dp/4254266375/

まちづくりには様々な分野からのアプローチがある。

それはまちづくりそのものが広い概念であるからである。

たとえば、市役所や政治家、公務員中心にアプローチするなら行政学や政治学、財政学、経営学が王道であるし、
文学や歴史からのアプローチであれば、文学・歴史学、また考古学が王道だろう。
教育問題に特化して、教育学からのアプローチも多い。
また、建築や都市計画、デザイン系分野からのアプローチであれば、建築学、都市工学や環境デザインが王道となるだろうか。
ともあれ、人文科学、社会科学、自然科学どのウイングからでもアプローチ可能である。

そんな中本書はまちづくり分野の中でも最も分厚い層の一つ、建築学、都市計画分野からのアプローチである。
(きっかけはたまたま舞鶴の研究をしている時に本書の編著である西村先生のお名前と出会ったため)

目次を見てもらえれば分かるが、①先行研究(予備調査)→②現状分析(本調査)→③分析という一連の流れがカバーされており、
分野を横断しての標準(共通)モデルになり得る章立てである。

(参考)目次
はじめに

第I部 事実を知る
第1章 歴史を知る
第2章 地形を知る
第3章 空間を知る
第4章 生活を知る
第5章 計画・事業の履歴を知る

第II部 現場に立つ・考える
第6章 現場で「見る」「歩く」
第7章 現場で「聞く」
第8章 ワークショップをひらく
第9章 地域資源・課題の抽出

第III部 現象を解釈する
第10章 統計分析のための手法と道具
第11章 住環境・景観を分析する
第12章 地域の価値を分析する
第13章 GISを用いた分析

おわりに:「さあ,地域づくりをはじめよう! 」

その意味では、特に新しい発見こそなかったが、まちづくり(とりわけ都市計画分野)の入門書としては最良の書の一つと言えるのでは、
というのが小生の感想である(敢えて欲を言えば、分析で留まっているところにやや物足りなさが残るくらい。。)

ともあれ、現代は地域創生の時代である。

こうした入門書は大学をはじめとする若い学生だけでなく、広く地域、市民にも読まれるようになることが肝要である。

その意味でも本書は研究書としても教養書としても良い刺激を頂く一冊であった。


平成28年5月3日

杉岡 秀紀 記

  

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2016年05月01日

小林美希『ルポ 保育崩壊』

小林美希『ルポ 保育崩壊』岩波新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/ルポ-保育崩壊-岩波新書-小林-美希/dp/4004315425

「保育園落ちた 日本死ね」

というセンセーショナルな匿名ブログ(はてな匿名ダイアリー)が投稿されたのは、
今年2016年2月16日であった。

通常であればこれだけ奇抜な切り口であれば、ワイドショーや週刊誌で終わりそうな印象だが、
国会で野党議員が大きく取り上げたこともあり、それ以降、待機児童問題のみならず、
保育園を巡る様々な課題がクローズアップされ、テレビや新聞でこの問題を見ない日はなくなった。

それでは、何が問題なのか。どうすれば良いのか。

そのヒントを与えてくれるのがこのルポタージュである。

本書のタイトルもかなりセンセーショナルである。
これまで小生が読んできた本の中でも

岩瀬達也「年金大崩壊」講談社、2003
増田寛也「地方消滅」中央公論、2014

にも相通じるものがあった。

しかし、まさにそれだけ大げさに考える必要があるし、
また事態は想像以上に深刻であることが分かった。

自身は保育園は利用していないが、いつ利用するかは分からない。

ただ、娘を持つ一親としてこの本の内容はとにかく胸が痛くなり、
他人事では済ませられない思いでいっぱいになった。

目次は以下のとおりであった。

第1章 保育の現場は、今(地獄地図のような光景エプロン・テーブルクロス ほか)
第2章 保育士が足りない!?(いきなり一歳児の担任にひたすら慌ただしい毎日 ほか)
第3章 経営は成り立つのか(徹底したコスト削減狙われる人件費 ほか)
第4章 共働き時代の保育(共働き世帯が増加するなかで「働かなければ育てられない」のループ ほか)
第5章 改めて保育の意味を考える(人気取りの待機児童解消消費税バーターというやり方 ほか)

つまり、今回の匿名ブログで現出した待機児童問題はある意味「氷山の一角」に過ぎず、
保育園を取り巻く課題は非常に多岐に渡っている。

より正確には何が原因で何が結果なのか、という因果関係が分からないくらい
複雑に課題が絡みあっている。

少し挙げるだけでも

・保育士不足問題と潜在保育士の現状
・保育士の給与問題(公立と民間の給与格差)
・保育士の長時間労働問題
・認可保育園における保育士資格の割合のあり方
・無認可保育問題
・育児休暇、育児給付金、育児手当のあり方
・幼保一元化(認定こども園)問題etc…

とどれ一つとっても難しい課題山積である。

しかし、匿名ブログにもあったとおり、本当の意味で女性活躍,一億総活躍社会を目指すのであれば、
「待機児童問題は横浜を見習え」といった短絡的な思考、取組みでは全く本質的な課題解決には向かわないだろう。
(匿名ブログの言葉づかいや匿名という立ち位置、またブログという方法論については必ずしも賛同出来ない点が多いが…)

ともあれ、重要なことは、子どもの人権、子を持つ親の人権の立場から現実を直視し、原因を分析し、
行政(国・地方自治体)・企業・NPO、地域、家庭それぞれで何をすべきなのか、何が出来るのかを未来志向で考え、
そして、具体的に動くことではないだろうか。

本書でも紹介されていたが、

「どの保育園に入るかで、その子の将来は決まると言っても過言ではない」(多田裕・東邦大学名誉教授)

のである。

また、この問題は「子どもの貧困」(阿部彩、2008・2014)とも切っても切り離せない問題でもあろう。
そう考えると事態は本当に深刻で待ったなしである。

小生自身の専門テーマではないが、講義やゼミでも取り上げつつ、当事者感覚を持って考え続けていきたい。


平成28年5月1日

杉岡 秀紀 記


  

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2016年04月30日

【書評】藻谷浩介『和の国富論』

藻谷浩介『和の国富論』新潮社、2016。

http://www.amazon.co.jp/和の国富論-藻谷-浩介/dp/4103353724

誰もが知っているアダム・スミスの『国富論』と神の見えざる手。

しかし、彼がその前提として、公正な市場が形成されておらねばならず、そのためには市場の参加者に、
「他者に同感する能力」と「自己の感情や行為を他人の目で見て規制する習慣」が求められることを指摘していたことは
あまり知られていない。

本書の「和」の部分にはそこを強調するメッセージが込められている。すなわち経済の本義に立ち返り、

「生存のための知恵・工夫・身のこなし方」

とは何かを求める探索活動である。

その手法として、本書では6人の

『現智(原文まま)』

との対談がなされた。その分野と対談者の選定が面白い。
下記の目次を見て頂ければ明らかであるが、

「林業、漁業、建築、教育、福祉、大学(身体知)」

とまさに藻谷氏が全国の市町村を訪ねる中で、おそらく最も地域活性化に必要と思う
エッセンス、あるいは「智」慧を抽出したと思われる。

(参考)『和の国富論』目次
第1章 「林業」に学ぶ超長期思考…速水亨(速水林業代表)
第2章 「漁業」は豊かさを測るモノサシである…濱田武士(漁業経済学者)
第3章 「空き家」活用で日本中が甦る…清水義次(都市・建築再生プロデューサー)
第4章 「崩壊学級」でリーダーが育つ…菊池省三(元小学校教師)
第5章 「超高齢社会」は怖くない…水田惠(株式会社ふるさと代表取締役社長)
第6章 「参勤交代」で身体性を取り戻す…養老孟司(解剖学者)

この中で勉強になったこと、引用したい箇所は色々あるが、
一番腑に落ちた箇所、あるいは結論(仮説)だけをここでは記しておきたい。

・企業統治は「ガバナンス強化」よりも、「家業化(+個業化)」かせよ。
・農林漁業は「効率化」よりも、「需要高度化(+長期視点)」を目指せ。
・地方創生は「雇用」よりも「営業生活権(本当の意味でのコンパクトシティ)」を確保せよ。
・リーダーは「進学校」よりも「崩壊学級(スーパーA育成)」で錬成せよ。
・老後不安は「特養増設」よりも「(高齢者同士の助け合いによる)看取り合い」で解消へ
・日本国民は「参勤交代(+身体知)」で都会と田舎を往還せよ


とりわけ、括弧部分で書いたことが、私が特に重要と思った部分である。

藻谷氏は昨年度本学に来て頂き、講演をお願いしたところだが、
本当に1.5歩先で社会問題を捉え、発信していると思う。

ぜひ、続き(中身)は本書を入手頂き、直接感じて頂ければ幸いである。


平成28年4月30日

杉岡 秀紀 記

  

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2016年04月07日

【書評】佐藤智恵『ハーバードでいちばん人気の国・日本』

佐藤智恵『ハーバードでいちばん人気の国・日本』PHP新書、2016

http://www.amazon.co.jp/ハーバードでいちばん人気の国・日本-PHP新書-佐藤-智恵/dp/4569827276/

4年前に出版された北川智子氏の『ハーバード白熱教室』にも重なる内容であったが、北川本が文学あるいは人文社会科学からの日本アプローチとすれば、
今回の佐藤本は経営学、社会科学からの日本アプローチであった。

http://www.amazon.co.jp/ハーバード白熱日本史教室-新潮新書-北川-智子/dp/4106104695/

より正確に言えば、北川本では「KYOTO」という講義への注目であったが、佐藤本は様々な「日本企業」あるいは経営者への注目と注目点は全然違う。
しかし、不思議にも通底する共通性の方が多く感じた。

いずれにしても、古くは松下・ソニー・ホンダ・トヨタ、近年ではテッセイ・楽天・グリーなどハーバードの先生方の関心が尽きないことは良いことです。


ま、結論としては、筆者である佐藤氏の主張は終章にある

「日本人が気づかない「日本の強み」を自覚せよ」

この一言に尽きるのだろう。


最後に、筆者である佐藤氏自身のキャリアも

「大学卒業後、マスコミ→米国の大学院→外資権コンサル→独立」

とかなり異色で面白い。

こういう面白いキャリアの方なので、また面白い人が芋づる方式につながるのでしょう!


(参考)目次
序章 なぜハーバードはいま日本に学ぶのか
第1章 オペレーション―世界が絶賛した奇跡のマネジメント
第2章 歴史―最古の国に金融と起業の本質を学ぶ
第3章 政治・経済―「東洋の奇跡」はなぜ起きたのか
第4章 戦略・マーケティング―日本を代表する製造業からIT企業まで
第5章 リーダーシップ―日本人リーダーのすごさに世界が驚いた
終章 日本人が気づかない「日本の強み」を自覚せよ

平成28年4月6日
杉岡 秀紀


  

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2016年03月08日

【書評】井内良三『日本一の学習プログラム 天神式家庭教育メソッド』

井内良三『日本一の学習プログラム 天神式家庭教育メソッド』ごま書房新社、2015。

http://www.amazon.co.jp/日本一の学習プログラム「天神」式家庭教育メソッド%7Eなぜ「天神」を使っている子どもたちは“勉強好き-になるのか-%7E-井内良三/dp/4341086286/

ある新聞の社説で知り、ちょうどe-learningについて調査していたこともあり購入した一冊。

タイトルにあるとおり、学校教育でも地域教育でもなく、家庭教育に焦点を当てた書である。

説明を先にしておくと、「天神」というのは、このe-learningソフトの名称のことであり、
「日本一」というのは、このソフトが日本e‐Learningアワードで日本一の賞を受賞した、という意味である。

私が子どもの頃は、e-learningなどはもちろん存在しなかったので、半信半疑で読み始めた訳だが、
読んでみると、なるほどという発見がたくさんあった。

「早朝に勉強をする子は伸びる」

など学習方法というより、学習時間に関するものや

「自信を持った子は伸びる 」

など精神的な面に着目した言及も多かったが、一番印象に残ったのは、

「子どもを主役にする仕組み、子どもに達成感を与える仕組み」

というところ。

すなわち、減点主義ではなく、加点主義でとことん伴走してくるパートナーに
この天神というソフトがなっている点であった。

確かにいわゆる学校教育(試験)の現場でも、家庭教育でも基本的には減点方式で採点がなされがちであるし、
これは社会に出ても同じである。仕事は出来て当たり前であり、ほとんど褒められる機会はない。

そんな中このソフトでは

「できるを見える化し、かつそれを褒める」

仕組みがビルトインされており、徹底的に寄り添っている。

ここが利用者のハートを掴んだのだろう。

システムというより心理学の勝利かもしれない。

昔の進研ゼミの赤ペン先生のAI版とも言えないことがないが、
デジタルでここまで伴走できるのであれば、あっぱれである。

ともあれ、私の教育者の端くれとして、娘には自ら教育を、と思っていたが、
こんな良い仕組みがあるなら、一度は試してみようかしらん。

また、こうしたシステムの大学生版や社会人版があっても面白いかも。

(参考)目次
第1章 なぜ『天神』は子どもの力を引き出すのか―『天神』に秘めた五つのヒミツ
第2章 『天神』で「伸びる子」8つの共通点―こんな子は伸びる。こんな家は伸びる。
第3章 「勉強嫌いの子」を「勉強好き」にさせる―井内式・家庭学習法
第4章 大人になったときに活躍できる「学ぶ力」を身に付けさせる―子どもの本当の幸せのために大人たちがするべきこと
特別対談 ヨコミネ式教育法理事長横峯吉文氏&著者井内良三―子どもが伸びるきっかけづくりとは


平成28年3月9日
杉岡 秀紀 拝

  

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2016年03月04日

太刀川瑛弼『デザインと革新』

太刀川瑛弼『デザインと革新』パイインターナショナル、2016

http://www.amazon.co.jp/デザインと革新-太刀川-瑛弼/dp/4756247156/

太刀川氏は私と同じ年である。

ミラツクというダイアログを武器にソーシャルイノベーションを生み出すNPO代表の西村勇也氏からのご縁で、
かれこれ3回くらい立ち話をさせてもらったが、まさにソーシャルイノベーターと思うお一人である。

最近は京都との関わりも増えているが、一番驚いたのは彼が手がけた政府の

「クールジャパンの提言書」

http://greenz.jp/2014/12/17/nosigner_cool_japan/

私も公務員の端くれとして、この手の提言書に10年前関わらせてもらったことがあるが、
これだけ分かりやすく、おシャレで、それでいてメッセージ性が強い行政発行文書を見たことがない。

度肝を抜かれる、とはこういうことを言うのだろうな、としみじみ思った次第である。


さて、そんな太刀川氏が初めて著書を出したのが今回の書。

読み方(楽しみ方)としては3通りある、というのが私の感想である。

1つ目は

「太刀川氏のポートフォリオ(作品集)」

として。

本書にはカラーの見開きで彼が今まで手がけてきた作品が写真付きで紹介されている。
これをたった10年で制作したというのだから、ただただ凄い。

たとえれば美術館の展覧会で買うガイドブックのようなイメージ、
と言えば伝わるだろうか。

2つ目は

「太刀川氏の仕事論(哲学)」

として。

たとえば、以下のようなメッセージが50続く。

「経験なんか気にしない まずやってみる」
「素直に失敗し 素直に聞く」
「美しい理由を 考える 」
「形はつくるものではない 見つけるものだ 」
「原点には 強い答えがある」
「斬新さと普遍性を 同時に満たす」
「いい答えを出すより いい問いを生み出すこと」
「問われた問いを 拡大する」
「運は 縁によって鍛える」
「文脈から学び 創造の歴史に貢献する」

どれもが彼の経験に裏打ちされた言葉で、一つひとつが重い。
もちろんこれらはデザイナーという職種以外にも応用できるものがたくさんあると思う。

最後3つ目は

「太刀川氏の自伝」

として。

本書では、彼が小学生の頃からパソコンを操っていた話から、大学時代はコンペに出さなかった話、
徳島のクライアントからボロクソに言われた話や大学院時代の恩師である隈健吾氏の話など、
さまざまなエピソードが紹介されている。

ここから彼の生い立ちやフィロソフィーの源泉を知ることが出来る。
とはいえ彼はまだ30代なので、日経の「私の履歴書」のような年輪から出る厚みはない。
ただ、30代で振り返るからこそのエネルギッシュと言えば良いのだろうか。
そのような別の意味での味わい深いものがある。

いずれにせよ、本書は今後また出されるだろう3部作の「1部」という感じである。

以上である。

もうしかしたら、4通り目、5通り目の楽しみ方もあるかもしれないが、
それは皆さんの方でぜひ見つけてほしい。

いずれにせよ、そのような様々な楽しみ方を読者に投げ掛ける本に仕上がっている。

これもきっと彼の本というものに対するデザインの一つなのだろう。

デザイナーを目指す人はもとより、デザイナー以外の方にもお薦めのデザイン本である。


(参考)目次
1章 仕事をはじめる
2章 いいデザインを創る
3章 イノベーションを起こす
4章 集合知を生み出す
5章 未来の価値をつくる

平成28年3月4日

杉岡 秀紀 記

  

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2016年02月27日

【書評】筒井洋一ほか『CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業』

筒井洋一ほか『CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業―新たな協働空間は学生をどう変えるのか-』東信社、2015。

http://www.amazon.co.jp/CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業―新たな協働空間は学生をどう変えるのか-筒井-洋一/dp/4798913251/

「CT」

と聞いたら何を思い浮かべるだろうか?

普通は、病院の検査で使われる断層撮影の

「CT(Computed Tomography)スキャン」

だろう。答えは当然違う。

本書で言うCTとは

「Creative Team」

の略で、タイトルにあるとおり「授業協力者」のことである。

しかし、CTスキャンは全く関係ないと言えば、そうではない。

もし

「外見上見えなかったものをCTスキャンすれば見えるようになる」

のであれば、この言い回しに主語として

「大学の専任教員が」

を足せば、意味としては決して遠くないのである。

偶然ではあるが面白いコトバの一致である。


本書の解説に戻ろう。

本書のタイトルにはもう一つ聞き慣れない単語が出てくる。それは

「劇場型授業」。

劇場型と言えば、小泉政権時代の政治手法で有名になった言葉である。

この解説は辞めておくが、確かににこれに近い部分もあり、他方違う面もある。

ともあれ

「通常の講義とは違う」

という含意が大切である。



「教員一人で授業を創るのではなく、学生を含めて他の人と一緒に創ればいい授業が創れるのではないか」(p.11)

これがこのCTと共に創る劇場型授業が生まれるきっかけとなった筒井氏の仮説である。

その背景には一方通行で教員のためにも、学生のためにもなると思えない講義への不満や
アクティブラーニングを取り入れても学生による出欠のまばらさにより前後の学びがつながらないジレンマがあった。
そして、

「今日、知は大学に限らず、企業、NPO、市民などへと広がり、知の提供者はかつてと全く異なって来ている。
大学の教育や研究に貢献する非常勤講師や研究員などを見れば分かるように、研究者以外、企業、NPO、市民などが
大学の知の一翼を担っており、教員のみが教育、研究を担う訳ではない」(p.13)


これが筒井氏がCTと共に創る劇場型授業を実施した意義である。
一言で言えば、昨今よく聞くようになった

「ティーチング(教授)からラーニング(学習)へ」

という時代に流れにぴったり重なる。

しかしである。今回の筒井氏らの実践が他のいわゆるアクティブラーニングとは、

・科目責任教員はほとんど講義をしない。
・金銭関係でもなく、上下関係でもない、ボランティアがCT(授業協力者)となっている。
・そのCTは大学教員ではなく、大学生や大学院生、社会人などいわゆる大学教員ではない人たちである。
 またそのCTは固定メンバーではなく、半期ごとに変わる。
・講義は完全公開であり、CT以外に授業見学者が毎回存在する。またその中には講義にも参加する者もいる。
・講義の終わりには必ずFB(フィードバック)会が開かれ、すぐに軌道修正がなされる。

の5つの点において少し違う。いわゆる普通のアクティブラーニンングは
「アクティビティ・ラーニング」になりがちな中、全く別のベクトルでのアクティブ・ラーニングに挑戦しているのである。

つまり、そこには通常のTA(ティーチングアシスタント)やSA(スチューデントアシスタント)
とも全く違う授業協力(参加)のあり方が成立している。

あえて、本書の言葉も使いながらまとめるならば、

①(講義)時間
②(講義)空間
③(講義)主体
④(講義)手法

を180度変え、全く予想もつかないような講義を展開していると言えるだろうか。

筒井氏は言う。

「教育の未来を考えた場合、これまで常識だった基本要素がすべて変容していく」(p.191)

と。

詳しい方法論や実際にCT・授業見学者の声は本書に譲るが、確かにこの方法には未来が見える。

あとは気づいた人がどれだけ現場で実践できるか、拡げるかである。

また、この波は大学に収まらず、早晩中等教育にも波及するだろう。

ともあれ、変わるなら今ではないだろうか。

時代の変化のうねりのタイミングに変わらなければ、あとは淘汰されるのみである。


(参考)目次
第1章 共感でつながるオープンな大学の教室(大学の教室(授業)の現状と課題とは何か?
   課題から見えてきた新たな授業スタイル)
第2章 学生が学びたくなる授業の工夫(授業の秘密を解き明かす
   授業に関わるステークホルダーの役割と機能)
第3章 アクティブ・ラーニングを促進する新しい学習評価(第三者による対話型リフレクション
   学びの意識と学びの場を改善するリフレクション
   次につながる主体的な学びを促すリフレクション)
第4章 劇場型授業スタイルと未来の教育への萌芽(劇場型授業スタイルの概念
   筒井実践の課題と可能性―大学教育のイノベーションに繋げるために
   劇場型授業の可能性とそれを支える枠組み)


平成28年2月27日
杉岡 秀紀 記

  

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2016年02月22日

【書評】『JAF Mate』一般社団法人日本自動車連盟

『JAF Mate』一般社団法人日本自動車連盟。

http://www.jafmate.co.jp

これは本というよりは雑誌、むしろ小冊子に近い。

しかし、以下3点の指標はいずれも実はすごい。

①昭和39年発刊であり、半世紀以上の歴史がある。
②発行部数が1,000万部を越えており、日本最大の新聞購読者並みである。
③内容が充実している割に販売価格は100円を切っており(86円+税)格安である。

なので読者からの支持を受け続けているのである

もちろんこれは、わが国が「一家に一台」から「一人一台」のモータリゼーションを迎えた一つの果実である。

また、JAFそのものが独占的地位にあり、ある意味「独占市場」となっている影響も大きい。

加えて、この小冊子は積極的に講読しているというよりは、JAFの会員に入ると自動的に送られてくるので、
購読者の数がすなわち積極的な読者ではない、との指摘も免れない。

しかし、私自身もうかれこれ20年近く読み続けているし、薄い割に面白く、
ある意味こうした一般向けの専門誌の魅力がぎゅっと詰まっている小冊子だと思う。

というわけで、その要因となっている魅力(コンテンツ)を今回改めて考察してみたい。
私の見立ては以下5つ点である。

①お国自慢ナビ(毎号2地域の観光資源を特集
②JAFストーリー(会員から投稿された、JAFに救援依頼したときの体験談を紹介)
③あったカー対談(車をテーマにした有名人2名による対談集)
④危険予知(事故回避トレーニング。危険の予知能力を養う)・事故ファイル(実際にあった事故を紹介。起きやすい事故が多い)
⑤おたより王国(テーマに沿った、読者の投稿を紹介 やくみつるが投稿を基にした4コママンガを連載)

ここにJAFの割引クーポンがついてくるのだからにくい。

つまり、小冊子でありながら、ミニ観光本であり、ミニインタビュー本であり、ミニ専門誌であり、お得なクーポン本の顔を持ち、
それでいて、読者参加型で制作されているである。

個人的には、④の特集も毎回頭の体操になり、勉強にもなるし、面白いと思う。

というのは運転技術に関することなどは免許の更新の時くらいしか意識しないからである。
(道路交通法の改正などにも即座に対応しているも好感を持てる)

ともあれ、こうしたある意味会報あるいはフリーペーパーのような小冊子であるが、
実は真剣に考えるととてもよく出来た冊子であることに気がつく。

やはり続くもの、広がるものには、それ相応の理由があるのだ。


平成28年2月22日

杉岡 秀紀 記

  

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