プロフィール
杉岡 秀紀
杉岡 秀紀
1980年、奈良県生まれ。2003年同志社大学経済学部卒業、2007年同大学大学院総合政策科学研究科博士前期課程修了。2009年同博士後期課程退学。臨床政策学者。周旋家。2016年から福知山に移住。

専門は、公共政策、地域政策、地域公共人材論、大学まちづり論、NPO論、大学評価論。

大学時代から環境問題、まちづくりに関心を持ち、2003年にまちづくりNPO「きゅうたなべ倶楽部」を主宰(発起人)。地域に開かれた大学祭の創造や商店街活性化、フリーペーパーの発行・産学連携ITプロジェクト・商品開発・リユースフェアなどのコミュニティビジネスを武器に京都府南部地域におけるまちづくりに取り組む。

2007年からは、いったん地域から離れ、霞ヶ関(内閣官房)へ。行政改革推進本務事務局にて、社会保険庁改革に従事する。

同志社大学政策学部嘱託講師(2009〜2014)、一般財団法人「地域公共人材開発機構」事務局総括(2009〜2012)、京都府立大学公共政策学部講師・地域連携センター副センター長(2012〜2016)を経て、2016年秋より福知山公立大学地域経営学部准教授。京都府立大学京都政策研究センター特任准教授。

社会貢献活動として、龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター 客員研究員、一般財団法人地域公共人材開発機構常任理事、一般社団法人社会的認証開発推進機構評議員、NPO法人グローカル人材開発センター理事、NPO法人京都子どもセンター監事、きゅうたなべ倶楽部アドバイザー、真庭市政策アドバイザーなどを務める。

主な著書は、『地域力再生の政策学』(ミネルヴァ書房、2010年、共著)、『地域貢献としての大学シンクタンク』(公人の友社、2013年、編著)、『地域公共人材をつくる』(法律文化社、2014年、共著)、『住民自治を問いなおす』(法律文化社、2014年、共著)、『もう一つの自治体行革』(公人の友社、2014年、編著)、『持続可能な地域実現と大学の役割』(日本評論社、2014年、共著)、『地域力再生とプロボノ』(公人の友社、2015年、編著)『地域創生の最前線』(公人の友社、2016年、編著)、『自治体政策への提言』(北樹出版、2016年、共著)など。

大学時代(2000年)に結成したバンド「シカゴプードル」では、2003年に京都学生祭典(KYOTO STUDENT MUSIC AWARD)でグランプリを受賞。2004年にCDデビューも果たした(2006年に卒業)。

【HP】 http://sugiokahidenori.jimdo.com
【ブログ】http://e013.dgblog.dreamgate.gr.jp/
【facebook】http://www.facebook.com/hidenori.sugioka/

【主な受賞歴】
2002年 「REALIZE In Kyoto(京都府南部地域における学生による地域政策・ビジネスコンテスト)」グランプリ受賞
2003年 「京都学生祭典 全国学生音楽コンテスト(kyoto student music award)」グランプリ受賞(Chicago Poodle)
2003年 「同志社大学育英賞」受賞
2004年 「エコ京都21」認定(きゅうたなべ倶楽部)
2004年  関西文化学術研究都市「都市びらき10周年」感謝状授与(きゅうたなべ 倶楽部)
2005年  内閣府「生活達人」認定
2005年  京都人間力大賞ファイナリスト
2007年  日本都市計画家協会「全国都市再生まちづくり会議」奨励賞受賞(きゅうたなべ倶楽部)
2012年  京都府「明日の京都」推進特別賞(地域公共人材開発機構)
2013年 「第7回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2013年 「第9回京都から発信する政策研究交流大会」優秀賞(杉岡ゼミ)
2014年 「京都府立大学学長賞」受賞(杉岡ゼミ)
2014年 「第10回京都から発信する政策研究交流大会」京都市長賞、優秀賞受賞(杉岡ゼミ)
2014年  2013年度京都府創発事業認定(京都丹波・写ガール隊)
2015年 「第9回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所賞受賞(杉岡ゼミ)
2015年 「2015年京都丹波観光プランコンテスト」優秀賞受賞(杉岡ゼミ・京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第4回 京の公共人材大賞」奨励賞受賞(京都丹波・写ガール隊)
2016年 「第10回全国大学まちづくり政策フォーラム」優秀賞、政策マネジメント研究所奨励賞受賞(杉岡ゼミ)
2016年 「京都府公立大学法人 理事長表彰」(京都丹波・写ガール隊、地域連携センター学生部会かごら)
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ

2016年02月27日

【書評】筒井洋一ほか『CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業』

筒井洋一ほか『CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業―新たな協働空間は学生をどう変えるのか-』東信社、2015。

http://www.amazon.co.jp/CT-授業協力者-と共に創る劇場型授業―新たな協働空間は学生をどう変えるのか-筒井-洋一/dp/4798913251/

「CT」

と聞いたら何を思い浮かべるだろうか?

普通は、病院の検査で使われる断層撮影の

「CT(Computed Tomography)スキャン」

だろう。答えは当然違う。

本書で言うCTとは

「Creative Team」

の略で、タイトルにあるとおり「授業協力者」のことである。

しかし、CTスキャンは全く関係ないと言えば、そうではない。

もし

「外見上見えなかったものをCTスキャンすれば見えるようになる」

のであれば、この言い回しに主語として

「大学の専任教員が」

を足せば、意味としては決して遠くないのである。

偶然ではあるが面白いコトバの一致である。


本書の解説に戻ろう。

本書のタイトルにはもう一つ聞き慣れない単語が出てくる。それは

「劇場型授業」。

劇場型と言えば、小泉政権時代の政治手法で有名になった言葉である。

この解説は辞めておくが、確かににこれに近い部分もあり、他方違う面もある。

ともあれ

「通常の講義とは違う」

という含意が大切である。



「教員一人で授業を創るのではなく、学生を含めて他の人と一緒に創ればいい授業が創れるのではないか」(p.11)

これがこのCTと共に創る劇場型授業が生まれるきっかけとなった筒井氏の仮説である。

その背景には一方通行で教員のためにも、学生のためにもなると思えない講義への不満や
アクティブラーニングを取り入れても学生による出欠のまばらさにより前後の学びがつながらないジレンマがあった。
そして、

「今日、知は大学に限らず、企業、NPO、市民などへと広がり、知の提供者はかつてと全く異なって来ている。
大学の教育や研究に貢献する非常勤講師や研究員などを見れば分かるように、研究者以外、企業、NPO、市民などが
大学の知の一翼を担っており、教員のみが教育、研究を担う訳ではない」(p.13)


これが筒井氏がCTと共に創る劇場型授業を実施した意義である。
一言で言えば、昨今よく聞くようになった

「ティーチング(教授)からラーニング(学習)へ」

という時代に流れにぴったり重なる。

しかしである。今回の筒井氏らの実践が他のいわゆるアクティブラーニングとは、

・科目責任教員はほとんど講義をしない。
・金銭関係でもなく、上下関係でもない、ボランティアがCT(授業協力者)となっている。
・そのCTは大学教員ではなく、大学生や大学院生、社会人などいわゆる大学教員ではない人たちである。
 またそのCTは固定メンバーではなく、半期ごとに変わる。
・講義は完全公開であり、CT以外に授業見学者が毎回存在する。またその中には講義にも参加する者もいる。
・講義の終わりには必ずFB(フィードバック)会が開かれ、すぐに軌道修正がなされる。

の5つの点において少し違う。いわゆる普通のアクティブラーニンングは
「アクティビティ・ラーニング」になりがちな中、全く別のベクトルでのアクティブ・ラーニングに挑戦しているのである。

つまり、そこには通常のTA(ティーチングアシスタント)やSA(スチューデントアシスタント)
とも全く違う授業協力(参加)のあり方が成立している。

あえて、本書の言葉も使いながらまとめるならば、

①(講義)時間
②(講義)空間
③(講義)主体
④(講義)手法

を180度変え、全く予想もつかないような講義を展開していると言えるだろうか。

筒井氏は言う。

「教育の未来を考えた場合、これまで常識だった基本要素がすべて変容していく」(p.191)

と。

詳しい方法論や実際にCT・授業見学者の声は本書に譲るが、確かにこの方法には未来が見える。

あとは気づいた人がどれだけ現場で実践できるか、拡げるかである。

また、この波は大学に収まらず、早晩中等教育にも波及するだろう。

ともあれ、変わるなら今ではないだろうか。

時代の変化のうねりのタイミングに変わらなければ、あとは淘汰されるのみである。


(参考)目次
第1章 共感でつながるオープンな大学の教室(大学の教室(授業)の現状と課題とは何か?
   課題から見えてきた新たな授業スタイル)
第2章 学生が学びたくなる授業の工夫(授業の秘密を解き明かす
   授業に関わるステークホルダーの役割と機能)
第3章 アクティブ・ラーニングを促進する新しい学習評価(第三者による対話型リフレクション
   学びの意識と学びの場を改善するリフレクション
   次につながる主体的な学びを促すリフレクション)
第4章 劇場型授業スタイルと未来の教育への萌芽(劇場型授業スタイルの概念
   筒井実践の課題と可能性―大学教育のイノベーションに繋げるために
   劇場型授業の可能性とそれを支える枠組み)


平成28年2月27日
杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月22日

【書評】『JAF Mate』一般社団法人日本自動車連盟

『JAF Mate』一般社団法人日本自動車連盟。

http://www.jafmate.co.jp

これは本というよりは雑誌、むしろ小冊子に近い。

しかし、以下3点の指標はいずれも実はすごい。

①昭和39年発刊であり、半世紀以上の歴史がある。
②発行部数が1,000万部を越えており、日本最大の新聞購読者並みである。
③内容が充実している割に販売価格は100円を切っており(86円+税)格安である。

なので読者からの支持を受け続けているのである

もちろんこれは、わが国が「一家に一台」から「一人一台」のモータリゼーションを迎えた一つの果実である。

また、JAFそのものが独占的地位にあり、ある意味「独占市場」となっている影響も大きい。

加えて、この小冊子は積極的に講読しているというよりは、JAFの会員に入ると自動的に送られてくるので、
購読者の数がすなわち積極的な読者ではない、との指摘も免れない。

しかし、私自身もうかれこれ20年近く読み続けているし、薄い割に面白く、
ある意味こうした一般向けの専門誌の魅力がぎゅっと詰まっている小冊子だと思う。

というわけで、その要因となっている魅力(コンテンツ)を今回改めて考察してみたい。
私の見立ては以下5つ点である。

①お国自慢ナビ(毎号2地域の観光資源を特集
②JAFストーリー(会員から投稿された、JAFに救援依頼したときの体験談を紹介)
③あったカー対談(車をテーマにした有名人2名による対談集)
④危険予知(事故回避トレーニング。危険の予知能力を養う)・事故ファイル(実際にあった事故を紹介。起きやすい事故が多い)
⑤おたより王国(テーマに沿った、読者の投稿を紹介 やくみつるが投稿を基にした4コママンガを連載)

ここにJAFの割引クーポンがついてくるのだからにくい。

つまり、小冊子でありながら、ミニ観光本であり、ミニインタビュー本であり、ミニ専門誌であり、お得なクーポン本の顔を持ち、
それでいて、読者参加型で制作されているである。

個人的には、④の特集も毎回頭の体操になり、勉強にもなるし、面白いと思う。

というのは運転技術に関することなどは免許の更新の時くらいしか意識しないからである。
(道路交通法の改正などにも即座に対応しているも好感を持てる)

ともあれ、こうしたある意味会報あるいはフリーペーパーのような小冊子であるが、
実は真剣に考えるととてもよく出来た冊子であることに気がつく。

やはり続くもの、広がるものには、それ相応の理由があるのだ。


平成28年2月22日

杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月21日

【書評】『WORKS』リクルートワークス研究所

『WORKS』リクルートワークス研究所、2016。

http://www.works-i.com/publication/

分かりやすい冊子名である。内容もズバリ

「働き」

で、毎月様々な切り口から特集が組まれている。

たとえば最新号(2月号)の目次はこんな感じ。

(目次)
はじめに:「転勤」の「これまで」と「これから」

第1章 これまで 転勤という施策の歴史、目的と効果を振り返る

第2章 これから 未来に機能する転勤の仕組みをつくるには

まとめ:「転勤はアリ」という基本前提を崩せるか/石原直子(本誌編集長)

■連載
・頂点からの視座 戸田奈津子氏(字幕翻訳家)
・人事のジレンマ 異能を活かしたい × 組織の風土を守りたい
・コミュニケーションの型知 反対者を説得し、合意を取り付ける
・人事が知っておくべき人体の秘密 なぜ、外国人の顔は見分けにくいのか
・フツウでないと戦力外? 家族の介護を担う社員
・ここは集中特区 立つ、座る、を選択する自由
・成功の本質 監修/野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授) 第82回 YKK
・人事プロフェッショナルへの道 人事制度のグローバル化とは

(ここまで)

面白いのは、この冊子はHP上で

「PDF」

でも読めるようにしていること。

紙好きの私は定期購読で「本」として読んでいるが、本をネットで読むのが好きな人は、
もしかしたら「電子書籍」のようなイメージがあるのかもしれない。


ところで、私の職場は大学であり、また研究対象は「公共人材」なのに、
なぜ「民間人材」の知見を求めるのか、と疑問があるかもしれない。

答えは簡単で、公共セクターであれ、民間セクターであれ、相通じる部分が多いからである。
もはや「そのような明確は線引きはない」時代に突入していると言って良い。

たとえば、最新号の特集テーマは「転勤のゆくえ」であったが、これは公共セクター、
とりわけ公務員の世界で言えば

「出向」「交流人事(研修)」

のイメージに近い。

しかし、本書でも述べられているように、もはや

「転勤と異動の効用に差はない」

時代になってきている。

たとえば、「10年に3回異動」という揶揄がある公務員の世界であるが、
これはまさに「10年で3回転勤」しているのと同様と捉えられるのである。
(成果主義の人事評価や非正規雇用、キャリア採用なども相通じる面がある)

ともあれ、NPMやプライベータリゼーションなどのコトバを出すまでもなく、

「一労働者」

と意味では、民間も公共もかなりの部分が通底する。

また、今月号で一番印象に残ったのは、大久保幸夫氏(リクルートワークス研究所)の

「雇用とは本来ローカルなものである。その地域における経済活動に必要な人材は、その地域で育てていく。
そして教育を受けた人は投資してもらった恩恵を地域で働くことによって返していくのが本来の姿」

という言及。

これなどはまさにこれからの地域創生や公立大学のあり方を再認識させられるドキッとするコトバでああった。

もちろん一方的に民間から学ぶという必要性も必然性もない。
しかし、やはり全体としては、民間の方が進んでいる面があるのではないだろうか(感覚としては0.5歩ほど)。


ともあれ、現在働いている方にもこれから働く人にも、また民間で働く人にも公共分野で働く人にもお薦めの一冊である。


平成28年2月21日 

杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月20日

【書評】大阪ボランティア協会『ウォロ』

大阪ボランティア協会『ウォロ』。

http://www.osakavol.org/volo/

「ウォロ」

はラテン語で、ボランティアの語源「ウォルンタス」の前半部分であり、英語で言えば「will」に当たる。

すなわち、①意思、②志願(する)という意味である。

ボランティアと奉仕活動との違いもこの言葉を理解できれば、似て非なるものであることがよく分かる。


1995年は「ボランティア元年」と言われる。
しかし実際にはボランティア発祥の元年ではない。

このウォロを発行する大阪ボランティア協会が出来たのは1965年であるし、
もっと時代をさかのぼれば、行基の功徳などもふくまれる。

つまり、今までは一部の人たちによって取り組まれてきたボランティアが、
1995年の阪神淡路大震災により、認知も活動も広く一般の方々まで広がった、
くらいに捉えた方が正確である。

ちなみに日本は、

2003年:CSR元年
2010年:プロボノ元年
2011年:寄付元年、ギャップイヤー元年

など「◯◯元年」と呼称するのが好きな民族あるいは国民性である。


話を戻そう。

「ウォロ」は、ボランティアの専門機関紙である。

しかし、時にはNPO、時にはCSRなど企業のことも扱うので、レイヤーはかなり広い。

そして、執筆者も大学教員、ボランティア団体スタッフ、記者、協会事務局と幅広い。

だからこそ、冊子の大きさが変わったり、発行頻度が変わったりと時々変化しながらも、
魅力を発し続けながら、半世紀の間ずっと継続できてているだろう。

創刊は1966年ということなので、今年でちょうど50周年になるだろうか。

まだ50年?もう50年?
たかが50年?されど50年?

評価は色々できるだろうが、継続していることそのものがまずすごいことである。

私はまだ15年くらいの若い読者だが、ボランティアが不必要になる時代はまずない。

これから50年も続くことを信じ、応援する次第である。


(参考)2・3月号の目次
【特集】 ・・・1
市民活動の「コトバ」を考える

【ソシオロジックフォーカス~社会学の視点 で世相を深読み】・・・11
音楽は関係性の中で響く
 岡崎 宏樹(神戸学院大学現代社会学部教授)

【実録・市民活動「私のいちばん長い日」】・・・12
子どもファシリテーター 被災地の未来を支援
 ちょん せいこ (株式会社ひとまち代表取締役)

【うぉろ君の気にな~るゼミナール】・・・13
「 食料自給率」って?

【中国・韓国! グローバルレポート~世界市民社会の動きから】・・・14
東アジア市民社会フォーラムで見えてきた 中国、韓国の市民社会
 村上 徹也(市民社会コンサルタント)

【V時評】・・・15
 1.3 畳より4畳半の方が「文化的」? ―生活保護の住宅扶助に思う
 2.「何のために」:立ち戻るは、原点。

【ウォロ‘sトピック】・・・17
 1.5歳児の沖縄平和キャンプ
 2.ふたつのグスク

【東日本大震災・福島発~現地から伝える「被災地の今」】・・・18
やさいのラボ 農と食を通して つながり支え合う
 掃部 郁子(フリーランスライター)

【現場は語る。~コーディネートの現場から】・・・19
「外国人ボランティア」をサポートする新たな仕組み
 椋木 美緒(大阪ボランティア協会)

【市民活動の暦(こよみ)~2月、3月にあったこと 】・・・22
20年前……柳谷集落で「奇跡の地域再生」スタート
70年前……「部落解放全国委員会」結成

【この人に】・・・25
 越前屋 俵太さん(関西大学総合情報学部非常勤講師、京都大学デザイン学ユニットアドバイザー、書動家)

【アゴラ/シネマ/ライブラリー】・・・27
「ぱれっと」/『水と風と生きものと 中村桂子・生命誌を紡ぐ』/書籍紹介


平成28年2月20日 
杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月19日

【書評】松永桂子『ローカル志向の時代 〜働き方、産業、経済を考えるヒント〜』

松永桂子『ローカル志向の時代 〜働き方、産業、経済を考えるヒント〜』光文社新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4334038913/

ローカル志向とは何だろうか。

以下の地域産業論を専門とする松永氏の言及を引くと、おぼろげながらその輪郭が見えてくる。

・「現代の消費は、匿名性の消費と顔の見える消費が複雑に組み合わさっているのです」(p.57)
・「最近目立つのは、職業が一言で言い表せないような人たちです。自営業やフリーランスでありながら、隣接する領域の仕事も柔軟に開拓しています。
女性、特に30代・40代の女性が目立ちます」(p.66)
・「今後は、環境変化に自体王して生き抜くためにも、専門化した仕事や領分ではない柔軟な「百姓ライフ」=「ひとりダイバーシティ」が強みになってくるのではないか」(p.68)
・「柔軟な専門化も海外から指摘された日本的特筆の一つというべきかもしれません」(p.93)
・「旅行者が「生活的景観」に何らかの意味を付与することによって、「風景」た立ち現れる」(p.149)
・「経済性に注目するならと、(中略)「規模の経済」「範囲の経済」と対比させるならば、いわばそれは「価値の経済」と形容できる」(p.167)
・「クラウンドファンディングや社会的投資は、(中略)「半匿名性」の領域と言えるのではないでしょうか」(p.176)
・「ポスト産業化により、個人は目的志向の「生産的人間」から、時間の変化とその過程を重視する「消費的人間」へ、同時に個人主義も「固い自我の個人主義」から「柔らかい自我の個人主義」へのと変容しつつある」(p.191)

ところで、これらをすでに言い当てた人がいた。

本書でもちらっと出てくるが、アメリカのジャーナリスト、ジェイン・ジェイコブズ女史である。彼女は

「地区は一つの要素だけでなく、2以上の機能を持つことが望ましい」

と半世紀前に指摘していた。

いわゆるインプロビゼーションなど創造都市論の源泉となる考えである。


ここから導き出せる含意とは、ローカル志向の働き方、産業、経済とはつまるところ

「創造的な生き方(働き方・産業・経済)」

とほぼ同義になってくるという見立てである。

付言すれば、ジェイコブズが見た社会で

「一部のクリエイティブ・クラス」

に留まっていたものが、特にリーマンショックや東日本大震災以降、
地方創生や地域創生の流れにも乗っかるかたちで、一部の動きでなく、
かなり広範に広がって来ていると見ることができるのではないだろうか。

いみじくも松永氏の前書は『創造的地域社会』であり、松永氏が勤務する大阪市立大学には「創造都市研究科」がある。
また本書の中にも「創造的過疎」を標榜する徳島県神山町への言及も出てくる。


地方創生に限らず、ダブルローカルとか地域移住とか田舎ぐらしとか、
ここ近年地域への注目がかまびすしい。

しかし、これは現政権による政策の成果という近視眼的な動きではなく、
働き方・産業・経済、そして、生き方の「ローカル志向」という、
それこそ大きな時代の流れやうねりとして現出していると見るべきではないだろうか。

そして、その働き方や生き方やというものは、人間にもう一度クリエイティブに生きるかどうかを
問うていると見ることも出来るのではないだろうか。

クリエイティブに生きるかどうか。
それはあなた次第である。

(参考)目次
まえがき
【第1章 場所のフラット化】
1-1 古くて新しい商店街
1-2 消費社会の変容と働き方の変化
【第2章 「新たな自営」とローカル性の深まり】
2-1 古くて新しい自営業
2-2 自営の人びとが集う場
2-3 経済性と互酬性のはざまで
【第3章 進化する都市のものづくり】
3-1 中小企業の連携の深まり
3-2 新たな協業のかたち
【第4章 変わる地場産業とまちづくり】
4-1 デザイン力を高める地場産業
4-2 ものづくりとまちづくり
4-3 外部者からみえる地域像
【第5章 センスが問われる地域経営】
5-1 小さな町の地域産業政策
5-2 「価値創造」の場としての地域
5-3 「共感」を価値化する社会的投資
【終 章 失われた20年と個人主義の時代】
あとがき

平成28年2月19日
杉岡 秀紀 記



  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月18日

【書評】金丸弘美『里山産業論-「食の戦略」が六次産業を超える』

金丸弘美『里山産業論-「食の戦略」が六次産業を超える』角川新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/里山産業論-「食の戦略」が六次産業を超える-角川新書-金丸-弘美/dp/4040820444/

金丸氏は食分野で多くの執筆をしている。

また、2009年に出版された『田舎力ーヒト・夢・カネが集まる5つの法則ー』は、食だけでなく、
広く地域づくり分野で読まれた書になったのではないだろうか。

http://www.amazon.co.jp/田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則-生活人新書-金丸-弘美/dp/4140882972/r

今回の書はある意味その続編である。

いみじくも地方創生にも「戦略」という言葉が使われているが、本書は前書に一歩踏み込んで
「戦略」という言葉が使われているのが特徴である。

具体的には、スローフード戦略で先をいくイタリアやフランスも事例も引きつつ、
わが国の戦略なき食×地域づくりを嘆いている。

しかし、この嘆きは裏を返せば、これからの食×地域づくりのチェックリストにもなり得るだろう。

列挙してみよう。

□空き家対策が地権者優先になっていないか?
□専門用語を使いすぎてないか?
□直接食したか?まちを足で歩いたか?
□文化財・地域資源を活かしているか?
□お土産に売れない伝統工芸品ばかり並べていないか?
□町の特産やグルメ、ホテルなどが平等主義だけで広報されてないか?
□地域内しか案内しないマップとなっていないか?
□外国人対応は出来ているか?
□企業がくればすべてうまくいくと思っていないか?
□観光人材の育成は大丈夫か?
□議員に若いヒトや女性はいるか?
□男性ばかりの会議になっていないか?
□農協頼り主義の農業になっていないか?
□補助金頼みの加工場となっていないか?
□マネジメント力のない3セクと指定管理者になっていないか?
□いまだに東京にばかり売り込んでないか・
□いまだにゆるキャラ・法被・B級グルメ・スタンプラリー・ご当地アイドル=成功と思っていないか?
□大手代理店やコンサルに丸投げになっていないか?
□うわべだけの視察をしていないか?
□高速道路=ヒトが来ると信じていないか?
□農業は集約すれば成功と思っていないか?
□特産品は食べ方提案まで出来ているか?

日本総研の藻谷氏もそうであるが、金丸氏も全国1,000以上のまちを直接巡って来られた方である。

その観点から以上のチェックリストは相当普遍的なものになっていると推察される。


ところで

「地域づくりや観光分野の3つの0」

という話がある。

・おししい
・おみやげ
・おもしろい

ここからも「食」を活かさない地域づくりや観光はないことが分かる。

食を観光や地域づくりにつなげるためには、セクターを越えて、やはり戦略的思考が必要なのである。


(参考)
目次(構成)

まえがき
第一章 日本の根強い誤解と失敗
第二章 「食の戦略」――イタリア編
第三章 「食の戦略」――フランス編
第四章 食文化を読ませる
第五章 食文化を仕掛ける
第六章 「食の戦略」が社会保障を変える
あとがき


平成28年2月18日

杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月17日

【書評】宇都宮浄人『地域再生の戦略-「交通まちづくり」というアプローチ-』

宇都宮浄人『地域再生の戦略-「交通まちづくり」というアプローチ-』ちくま新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/地域再生の戦略-「交通まちづくり」というアプローチ-ちくま新書-宇都宮-浄人/dp/4480068325/

「交通政策(公共交通の再生)なくして、まちづくりなし」

これが本書を読んでの一番の感想である。

現在、「地方創生」の動きが喧しいが、地方創生が叫ばれるより先に、公共交通については、
先駆的に色々な取り組みが行われてきた。

たとえば、富山で成功したLRT(ライト・レール・トランジット)、全国で広がるコミュニティバスや100円バス、
デマンドバス・タクシー、3セクによる地域鉄道の確保、コミュニティサイクルなど。

いずれにせよ、交通とまちづくりの関係は不可分で表裏一体である。

阪急の創業者小林一三による阪急沿線の開発やUR等によるニュータウンも、結果としてだが、
広い意味での交通まちづくりの一環に括ることが出来る。

しかし、モーダルシフトにより車社会が到来すると、民間主導の公共交通だけでは採算が取れなくなり、
どんどんと中心市街地が寂れて来た。

また、高齢化や人口減少、民間事業者の撤退により「交通弱者」がすなわち「買い物難民」になる時代となり、
まさに公共交通を改めて

「まちづくりのボトムライン」

に据える必要が出て来た。そこで出て来た概念が鉄道・バスといった「公共交通」の見直し、そこからコンパクトな街が再生する

「交通まちづくり」

という概念であろう。

小林一三等の時代からカウントするならば、

「交通まちづくり2.0」

と呼んだ方が正確かもしれない。


ところでこの分野で京都は課題も取り組み先進的としてよく注目される。

たとえば、京丹後市の200円バスはこの分野で必ず紹介される成功事例であるし、最近は市民タクシーの動きも出ている。
また、日本一の赤字鉄道から、鉄道デザイナー水戸岡さんの力を借りて再生をはかる「北近畿丹後鉄道」改め「丹鉄」の動きも近年注目株である。

また本書には出て来ないが、醍醐にあるコミュニティバスや、烏丸御池中心に展開されるベロタクシー、
梅小路近辺を走るシクロタクシーといのもある。

筆者はゼミで近年コミュニティサイクルの動きにも注目している。

ともあれ、

「交通政策(公共交通の再生)なくして、まちづくりなし」

であり、これは

「交通政策(公共交通の再生)なくして、地域創生なし」

とも言い換えられる。

今後も、地域のソーシャルキャピタルを高めるためにも、交通まちづくりの動きから目を離せない。


(参考)目次(構成)
第1章 地域と交通の負のスパイラル
第2章 政策の模索
第3章 「基本法」の成立
第4章 交通まちづくりとは何か
第5章 芽生える交通まちづくり
第6章 ドイツ・フランスの成果とその背景
第7章 費用対効果を考える
第8章 ソーシャル・キャピタルという新たな効果
第9章 これからの日本の課題


平成28年2月17日

杉岡 秀紀 記



  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月16日

【書評】「みやざき中央新聞」宮崎中央新聞社

「みやざき中央新聞」宮崎中央新聞社。

http://miya-chu.jp

「新聞」と聞けば、何をイメージするだろうか。

普通はまず5大紙(朝日・産経・日経・毎日・読売)を思い浮かべると思う。
次に出てくるのは、「京都新聞」「東京新聞」「中日新聞」など「地域新聞」だろうか。
そして「◯◯工業新聞」「◯◯産業新聞」「◯◯教育新聞」などいわゆる「業界新聞」を読んでいる人も多いだろう。
グローバルな人は「ワシントンポスト」や「ニューヨークタイムズ」など海外の新聞や英字新聞を読んでいるかもしれない。
さらに最近は新聞そのものを紙媒体ではなく、ネットのみで読むという人も増えている。

共通点は

「日々のニュースを発信している」

ということであろう。

それでは

「みやざき中央新聞」

と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

通常は

「宮崎のニュースを発信する地方新聞」

と思うだろう。しかし、実際宮崎のことはほとんど出てこない。さらに言えば、
日々のニュースも一切出てこない(そもそも週刊であるので日々のニュースを配信する意味がない)。

では、何が掲載されている新聞なのか。

答えは、

「社会で共感を得るだろう人の多様な生き様と哲学」

である。一言で言えば

「感動の発信」

である。より具体的には多様な分野の多才な方の

「講演録とエッセイ」

で構成されている。

逆に言えば、犯罪や事件などニュースは一切誌面から出て来ない。

これが新聞か?と思う人も多いと思う。

しかし、私も約15年講読しているが、一度として同じ記事はなく、その意味において立派な

「新聞(新しいことを聞かせる)」

である。

現在の発行部数は約1.7万部。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれであるが、
「地域」の冠で、ここまで全国に読者がいるのはすごいビジネスモデルだと思う。

情報社会になればなるほど、これからの時代は「読者」というよりも

「ファン(共感者)」

という考え方が重要なのかもしれない。


平成28年2月16日

杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月15日

【書評】馬場正尊『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた』

馬場正尊『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた』学芸出版社、2015

http://www.amazon.co.jp/PUBLIC-DESIGN-新しい公共空間のつくりかた-馬場-正尊/dp/4761513489/

「公共施設は誰のものか?」

こんな問いかけを昨年度職場のセミナーで発した。

http://www.kpu.ac.jp/cmsfiles/contents/0000003/3964/1022seminar.pdf

本書のタイトルは

「新しい公共空間のつくりかた」。

この「新しい」が意味するものは何だろうか。

そして、それは本当に新しいのであろうか。


本書は東京R不動産や公共R不動産を仕掛ける馬場さんによる、
新しい公共空間の仕掛人6人との対談集である。

1人目は木下斉氏(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)。1982年生まれで、高校時代より早稲田商店街の事業に参画。2009年一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。まちづくり会社の設立、自主財源事業による地域経営、公民連携事業を推進してる。最近は「BID」を日本に広めた一人である。

2人目は松本理寿輝氏(まちの保育園代表。ナチュラルスマイルジャパン株式会社代表取締役)。1980年生まれで私と同じ年。2010年ナチュラルスマイルジャパン株式会社を創業し、2011年に「まちの保育園 小竹向原」、2012年に「まちの保育園 六本木」、2014年に「まちの保育園 吉祥寺」を開園するなど、新しい保育園像を社会に提示している。

3人目は古田秘馬氏(プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)。2005年株式会社umari(ウマリ)設立。山梨県・八ヶ岳南麓「日本一の朝プロジェクト」や市民大学「丸の内朝大学」、農業実験レストラン「六本木農園」など数多くの地域プロデュース・企業ブランディングなどを手がけている。

4人目は小松真実氏(ミュージックセキュリティーズ株式会社代表取締役。1975年生まれで、2000年ミュージックセキュリティーズ株式会社を創業。元ミュージシャンというバックボーンを活かし、インディペンデントなアーティストの活動を支援するしくみとして音楽ファンド事業を開始し、現在は純米酒の酒蔵、スポーツチーム、地域再生、被災地支援等300本超のファンドを組成している。私もこの会社で1本地域資源再生案件に投資した。

5人目は田中陽明氏(co-labクリエイティブディレクター/春蒔プロジェクト株式会社代表取締役)。1970年生まれで、2003年よりクリエイター専用のシェアード・コラボレーション・スタジオ「co-lab(コーラボ)」を設立。2005年春蒔プロジェクト株式会社を設立。最近の大学で広がるラーニングコモンズにも影響を与えている。

最後6人目は樋渡啓祐氏(樋渡社中CEO/前佐賀県武雄市長)。1969年生まれで、元総務省のキャリア官僚。2006年佐賀県武雄市長選に立候補、当時史上最年少の36歳で当選。8年8カ月の在職中に、市民病院の民営化、TSUTAYA図書館、官民一体型の教育など、革新的な政策で注目を集める。私の勤務先にも講演に来て頂いた。

一見えバラバラに見えるこれらの事例あるいは人物だが、馬場氏のヒアリングによれば、共通点として以下6つのキーワードが見えてくるという。

①経営
②運営
③合意形成
④企画設計
⑤収益化
⑥情報発信

いずれも、今までの「公共(=官)施設」では弱かった視点である。

翻って、そこが「新しさ」なのである。


目次は以下のとおり。

【目次】
新しいパブリックをデザインするために。
馬場正尊
Chapter 01 行政に頼らず、まちを経営する
木下 斉
Chapter 02 子どももまちも豊かにする保育園
松本理寿輝
Chapter 03 新しい関係性をつくるプロジェクトデザイン
古田秘馬
Chapter 04 気持ちを投資する21世紀の資本主義
小松真実
Chapter 05 自由に形を変えるクリエイティブファーム
田中陽明
Chapter 06 行政は最大のサービス産業である
樋渡啓祐

馬場氏が言うようにこれらはいずれもこうき公共施設というより、タイトルどおり

「パブリック(公共)デザイン」

と呼んだ方がイメージがしやすい。

つまり、今後は管理の時代ではなく、公共部門でも「デザイン思考」が重要であり、
これこそが、ブレイクスルーあるいはイノベーションの源泉になるであろう。

コミュニティデザイン、ソーシャルデザインなど色々な切り口、また用語があるが、重要なのは

「パブリック=開かれている、みんなのもの」

これに尽きる。


公共施設は誰のものか。

今後も常に問い続けなければならない重要な問いである。

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月14日

【書評】若新雄純『創造的脱力ーかたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論ー』

若新雄純『創造的脱力ーかたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論ー』光文社新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/創造的脱力-かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論-光文社新書-若新-雄純/dp/4334038921/

養老孟司氏の『バカの壁』が出版されたのは2003年。

それからもう13年の月日が経ったが、相変わらず日本は様々な分野で「バカの壁」がはびこっている。

たとえば自治体、たとえば働き方、たとえば就活など。
挙げ出せばキリがない。

いつからこんなに多様性を失ってしまったんだろう。
ともかく惰性と慣性の法則でいわゆる「常識」がまだ幅を利かせる世の中である。

そんな中、一人の若者、より正確には自称「自意識過剰」で「ナルシスト」な男が、
こういう「カタい」世の中に少し風穴を開け始めている。

「JK課」
http://sabae-jk.jp

「NEET株式会社」
http://neet.co.jp

「アウトロー採用」
http://outlaw.so

これらは全て本書の筆者、若新雄純氏が仕掛けた仕組みであり、いずれも現在まで続いている。

若新氏は言う。

「なんでも過剰に白黒つけようとする勝負や答え探しはもいうやためた方がいい」(p.16)
「いろいろな選択肢を提案し、実験的にやってみることで、白か黒かだけではないグラデーションを社会につくる必要がある」’(p.31)
「自分たちで問題にした問題の解決を考えていく」(p.70)
「あやしそうだけど面白そうって重要なポイント」(p.102)
「(マッチングではなく)お互いが理解・共感し良好な関係がつくれるかどうかの関係づくり(リレーションシップが重要)」(p.180)
「ゆるいといい加減は違う」(p.224)

これらの考え方をもとに、彼は

「創造的脱力」

を標榜する。

もちろん、経済学者シュンペーターの「創造的破壊」のオマージュである。

しかし、

徳島県の神山町でも

「創造的過疎」

をスローガンに地域の創生が起きているし、アートも含め元来実際創造的なことは確かに

「力を抜いた時」

に閃いたりするものである。
私も音楽を昔やっていたので分かる。新しいものが生まれる瞬間はいつだって、ハンドルの「遊び」を意識(あるいは無意識)したような瞬間なのである。

「脱力」という言葉が気に食わなければ

「創造的深呼吸」「創造的一時停止」「創造的逆転(リバース)」

などと言い換えても良いかもしれない。含意は同じである。

ともあれ、右ならえ右、金太郎飴で成長する時代は過ぎた。

定常型社会、成熟社会のわが国に必要なのは、まさにこういう発想だと思う。


最後に目次を紹介する。

基本的にはゆるい本だが、彼が大学の特任助教をしていることもあり、ところどころカタい内容も出てくる。これも創造的であった。

〈序 章〉破壊しないで、「脱力」する
壊すのではなく、ゆるめる/「創造的脱力」の入り口/etc.

〈第一章〉「グラデーション」をつくる ―― 自意識過剰で偏屈な僕の、研究と実験
週休四日・月収一五万円の「ゆるい就職」/自分を明確にする、「余白」の時間/選択肢を提
案し、社会に「グラデーション」をつくる/「自分」を主体的に生きるとは/答えなんてない、
脱力的な実験/etc.

〈第二章〉JKが主役の、ゆるいまちづくり
JKが主役の、脱力的空間/「教えない」関係性/大人も一緒に悩む/ゆるい市民が教えてくれ
る、「日常」の感覚/「ゆるさ」をまちの魅力に/etc.
【特別鼎談】 鯖江市役所JK課・学校帰りに市役所へ行こう

〈第三章〉ニートだけの、ゆるすぎる会社
ニートは、救世主になれるのか?/問題を解決するのではなく、現象とただ付き合う/一六六
人のニートが取締役に/期待を裏切らない、クオリティの低いサービス/〝限りなく憎しみに
近い愛〞社精神/etc.
【特別対談】 NEET株式会社・まともな会社にはまねができない

〈第四章〉ズレた若者たちの、いろいろな就職
「あたりまえ」がおかしい/マッチングよりも、リレーションシップ/ナルシストは、グロー
バル人材なのか/「ゆるい就職」のその後/期待に制約を設けない/etc.
【特別対談】 就活アウトロー採用・誰かの役に立っているという自己満足

〈終 章〉かたい社会に変化をつくる

〈あとがき〉


追伸

実は12前に本書の著者、若新氏とは仙台のまちづくりイベントでお会いしたことがある。
その時から今の風貌、そしてナルシストであった笑

いつかまた再会できる日を今から楽しみにしている。



平成28年2月14日
杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月13日

【書評】駒崎弘樹『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』

駒崎弘樹『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』PHP新書、2015。

http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4569824080/

「NPO=儲けてはいけない」

これは半分正しいが、半分間違っている。

なぜか。

確かにNPOはNon profit、より正確には、Not for profitの組織であるため、
目的としての儲けとなるのはNPOとしては相応しくない。

さりとて、もしボランティアや低料金だけでサービスを展開したらどうなるか。
当然、組織や事業として持続可能性を失い、そこには雇用も生まれなくなる。

つまり、ここで「非営利」というのは利益を役員や会員に分配するのではなく、
「未来(次の事業)に投資する」という意味での非営利と理解しなければならない。
(実際は誤解や先入観、偏見が先行しているが…)

したがって、そこには「非営利マーケティング」、いな、本書の関心から言えば、

「ソーシャル(ビジネス)マーケティング」

というものが必要になってくる訳である。

しかし、わが国では、ボランティア元年とも言われる1995年の阪神淡路大震災からNPOが広がった
歴史的経緯もあり、NPOの多くがどちらかと言えば

「慈善型NPO」

であり、いわゆる

「事業型NPO=ソーシャルビジネス」

がまだまだ少ない状況にある。
(経産省の定義によれば、地域の範囲が狭ければソーシャルビジネスではなく、コミュニティビジネスと呼ぶ)

しかし、これを正面から捉え、また実体験を持って世に問うた本は一部の学術書を除けば少ない。

そのようなまだ黎明期、あるいは成長期のソーシャルビジネス界において、
異彩を放つのが本書の筆者、駒崎氏が展開する「フローレンス」である。

フローレンスは「病児保育」という公的サービスの落とし穴を見事に補完する事業体として
一気に全国区となった。
(ちなみに、本書にはないが、フローレンスというのはナイチンゲールのファーストネームである)

なにより、注目すべきはそのマニュアルやノウハウをとことんまでオープンにしようという姿勢である。

したがって、ソーシャルビジネスのモデルができれば、プレスリリースをぬかりなく実施し、
官公庁にもPRし、

「政策化(制度化)」

することが重要と筆者は説く。

ここに下請けになりがちな行政とNPOの関係とは全く違う、まさに

「本質的な協働」

の姿を見ることが出きると思うのは私だけだろうか。


本書の目次は以下のとおりである。

序章 なぜ、いまソーシャルビジネス入門なのか?
第1章 ソーシャルビジネス入門を始める前に考えておくべきこと
第2章 ソーシャルビジネス入門の「仕組みづくり」(事業プラン)をどうするか
第3章 さあ、ソーシャルビジネス入門を始動させよう
第4章 準備は整った。大海へ漕ぎ出そう!
第5章 事業を大きくし、より大きな社会変革を目指す
第6章 「制度化」という社会変革の方法


最後に本書でも出てくるが、米国の就職ランキングのベスト10に必ず入る

「Teach for America」

はNPOである。一位を取った年もあった。

日本でこのような状況が来ることは当面は期待できないが、可能性は0ではない。

本書に影響を受け、

「社会起業」

が就活やキャリア教育の中に組み込まれてくる日を望まんばかりである。


平成28年2月13日

杉岡 秀紀 記



  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月12日

【書評】山﨑亮+studio-L『山﨑亮とstudio-Lが作った 問題解決ノート』

山﨑亮+studio-L『山﨑亮とstudio-Lが作った 問題解決ノート』アスコム 2015

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4776207680/

「コミュニティデザイン」で一世風靡した山﨑氏率いるsudio+Lによる問題解決のためのハウツー本である。
(ただし、最終章は事例集)

まちづくりはもとより、会社や役所の現場でも応用できるしつらえになっているのが今までと違うアプローチであろう。

というのも、昔の「読み・書き・算盤」は今や

「読み・書き・プレゼン」あるいは「読み・書き・ワークショップ」

に変わりつつあり、誰もが、あるいはどんな職場でも規模や頻度の差こそあれ、

「プレゼンやワークショップなくして仕事なし」

な時代に突入しているからである。

そんな時にいわゆるプレゼンやワークショップのハウツー本を読むのももちろん正攻法である。

しかし、どちらかと言えば、それは「点」になりがちではないだろうか。
前後の点との関係性が不明瞭になり、いざ実践や応用ができないという落とし穴である。

そうした課題もきっと見越して、本書では前後の文脈が見える構成となっている。
つまり、なぜその手法が必要なのか、どのように使えるのか、という視点が明らかなのである。

具体的な方法論についての言及は避けるが、目次は以下のとおり。

STEP_01 情報を集める
STEP_02 信頼関係を構築する
STEP_03 みんなのことを知る
STEP_04 みんなで解決策を考える
STEP_05 みんなで問題解決に取り組む

ところで、「知らないで使えない」と「知ってて使わない」は全然違う。

こうしたハウツーをたとえ体得したとしても、全ての地域や団体に応用できるとは限らない。
この点には留意が必要である。TPOをわきまえながら、GoかStopの判断することが大事である。

そして、わが国には

「守破離」

という言葉が古来からあるように、ただコピーキャットのように展開するのではなく、
常に自分流に磨きをかけ、アレンジをしていく勇気が必要である。

そこにも常に解決すべき問題が存在し続けるのである。

平成28年2月12日 

杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月11日

【書評】『致知』

『致知』(致知出版社)。

http://www.chichi.co.jp

本はいつのまにかに本屋さんではなく、amazonで買うことが殆どとなった。
これは時代の流れであり、良い部分も多いが、寂しい気もする。

ただ、そんな時代でもamazonで買えない本の一つに

『致知』

という人間学を学ぶ月刊誌がある。

週刊誌は400円くらいだが、この本は1,050円。
しかも定期購読でしか買えない。

そんな雑誌だが、もうかれこれ15年読んでいる。

しかし、センテンススプリングも瞬間的には面白いが面白さの質が違う。
高くても断然こちらをお薦めする。


私の尊敬する人生の先達の一人、安岡正篤氏は人生で読むべき本として

①専門を学ぶ本
②時代を学ぶ本
③人間学を磨く本

の3種類をあげておられた。
全く同感するところで、私の本が読む本も基本的にこの3種類を軸にしている。


ところで、皆さんは

「本縁」

という言葉を信じるだろうか。

これは造語であるが、

血縁・良縁・地縁・好縁・事縁・志縁と並んで私は、
昔から本がつなぐ縁というものがあるように感じている。

私の読書好きは父の影響である。父はよく本を読み、
自分の部屋にたくさんの本を積んでいた。
またその本のエピソードをよく話してくれた。
なので、自然と自分も本好きになった。

そんな中ある人から紹介されたのがこの人間学を磨く、人間学を学ぶ雑誌であった。


『致知』をめぐっては1つ本縁を感じるエピソードがある。

私の大学のプロジェクトの後輩にたまたまこの本を薦めたところ、
私以上にはまり、なんと彼は数年後には転職して、致知出版社に入社したのである。

本縁はそれだけに留まらない。
その後、彼は致知出版社の社員さんとのご縁ができ、昨年結婚したのである。

まだ終わらない。
その結婚式に私はキューピットの一人として招待され、スピーチもさせてもらった。
その際、致知出版社の社長にも挨拶ができるというご縁につながったのである。

STAP細胞の有無は文系の私には分からないが、
本が創ってくれる縁「本縁」はきっとあると思う。


無人島にもし一冊だけ持っていくとしたら?皆さんは何を持っていくだろうか?

私はおそらく『致知』あるいは致知出版社が出している本を持っていくと思う。

そんな雑誌である。



平成28年2月11日 

杉岡秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月10日

【書評】井上章一『京都ぎらい』

井上章一『京都ぎらい』朝日選書、2015

http://www.amazon.co.jp/京都ぎらい-朝日新書-井上章一/dp/4022736313

Q.下線部の意味として同じものはいくつかあるか?
(1)そうだ、京都に行こう。
(2)日本に京都があってよかった。
(3)京都に行ってくる。
(4)もう一つの京都
(5)京都議定書。

【選択肢】
(1)すべて同じ
(2)4つ同じ
(3)3つ同じ
(4)2つ同じ
(5)全て違う

本書を読めば、回答は一目瞭然である。

ヒントは「京都」と記されているものの多くは、「京都府」ではなく、「京都市」を指すことが多いということである。

ただ、その理解だけだと、本書のタイトルの意味は半分しか理解出来ていないことになる。

たとえば、私は京都の左京区と右京区に住んで6年目になるが「京都人」ではない。これはまだ分かりやすい方である。

宇治に50年住んでも、伏見(区)や山科(区)、太秦や嵐山に100年住んでても「京都人」ではない。
これは理解できるだろうか?


ネタばらしをすると、本書でいう「京都ぎらい」の京都は「京都府」全体を指しているわけでなもく、
また、「京都市」全体を指している訳でもない。いわば

「京都の中の京都」

を指して、嫌いと言っているのである(これを「洛内」という)。

事実、筆者である井上氏は太秦生まれの宇治在住であるが、自身を

「京都人ではない(これを「洛外」という)」

と断言している。

他府県に行くとよく、

「京都って3代住まないと京都人と認められないんですよね?」

と聞かれる。これは半分正しいが、半分間違いである。
というのも、問題は年数だけでなく、

「京都の中でどこに住んでいるか(洛内か洛外か)」

がそれ以上に大事だからである。


本書の目次は以下のとおり。

【目次】
一. 洛外を生きる
・京都市か、京都府か
・さまざまな肥やし
・京都弁の「桃太朗」
・山科もきらわれて
・宇治もまた、ゆるされず
・首都のメディア、におだてられ
・山の彼方の空遠く
・ハゲとデブ
・京へいく老人たち
・KYOTOがしめすもの
・ブラジルの日本像

二. お坊さんと舞子さん
・芸者か、芸子か
・呉服と映画の時代は、すぎさって
・姫・坊主・姫・坊主
・ミニスカートにそそられる
・男を忘れた僧侶たち
・女色に食傷する、その日まで
・檜舞台の舞子たち

三. 仏教のある側面
・北山の大伽藍
・写真とイラスト
・ライトアップでカップルは
・「古都税」闘争
・庭園秘話
・「おもてなし」をさかのぼる

四. 歴史のなかから、見えること
・皇居という名の行在所
・京都で維新を考える
・落日の鞍馬山、そして嵐山
・京都をささえた江戸幕府
・江戸と京都の建設事情
・「五山の送り火」と言いなさい
・銀座のさきがけ

五. 平安京の副都心
・嵯峨、亀山、小倉山
・南朝の夢の跡
・南北朝と嵯峨室町
・鎮魂の寺
・天龍寺と法隆寺
・オカルトからは、ときはなたれて
・儒学者と講釈師
・日の丸、君が代そして靖国

目次を見るだけで何となく気づかれるだろうか。

そう、筆者である井上氏は本気で「洛内の京都」が嫌いなのである。
これだけの恨み本も珍しい。

後半のこの一言が何よりもその気持ちを代弁している。

「調子に乗っている京都(人)をつけあがらせないように出来るのは大阪人だけ」

いずれにしても、京都で生活(勉強・仕事・観光)するなら、この隠れた常識は知っておいた方が良いことは間違いない。

その上で、「京都」におこしやす。


平成28年2月10日

杉岡 秀紀 記








  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月09日

【書評】大正大学地域構想研究所『地域人』

大正大学地域構想研究所『地域人』第5号、2016。

http://www.amazon.co.jp/地域人-第5号-地域創生のための総合情報-大正大学地域構想研究所/dp/4924297844/

地方自治や地域づくりに関する雑誌(ジャーナル)はたくさんある。

たとえば『ガバナンス』『地方自治職員研修』『都市問題』『地域開発』『市政』『TURNS』『ソトコト』et…

私も「カタい」ものから「ヤワラかい」ものまで、両手くらいの定期購読をしている。

ただ、その多くはいわゆる専門分野の出版社かシンクタンクが出していることが多い。

その意味でこの『地域人』というのは面白い。通常「●●大学出版会」と言えば、
その大学の教員の本、すなわち学術本を出すための学内出版社である。

しかし、この本は学術書ではない。また、うち向けではなく完全に外(一般)向けである。
一言で言えば「やわらかい」。

今回はスポットで購入したのでバックナンバーはまだ読んでないが、特集は

第1号:佐渡、石破茂
第2号:延岡、千住博
第3号:奄美、清水槙一
第4号:豊島区、水野誠一

とある。この目次を読むだけで、学術書でもなく、大学内部向けではないことは明らかであろう。

しかし、何で一大学出版会がこのような雑誌を出すのか??

今回の5号の最後の方にあるこの広告で納得した。

「地域創生学部 2016年4月誕生」

http://kokokara.tais.ac.jp/faculty/e/index.html


つまり、今回の雑誌はその新しく出来る学部の広報戦略の1つであったのだ。

これはうまいの一言。

近年は「地域協働学部」「地域創生学群」「地域経営学部」など、全国の大学で、国公私に関わらず、

「地域(公共)人材」

の育成を打ち出す気風が高まって来ている。

そんな中受験生だけでなく、広く一般の方にもそのような動きを伝えるだけでなく、
「もっと勉強したければ大正大学に!」という宣伝をされているのだ。

いやはや、私も見事に大正大学の広報術にハマってしまいました笑。

しかし、確かに大正大学の客員教員の登場率はやや高いが(当然だが)、
例えば今回で言えば、全国47都道府県の知事が登場していたりと、
かなり一般向けを意識した誌面づくりをしている。

記事だけ読めば、特定の大学出版会が出しているとは到底思えない仕上りである。
しかも月刊誌ということらしいので、脱帽の勢いである。
(ちなみに次号は「岩手県」「氷見」「長岡」特集)

地域づくりに興味・関心のある市民の皆さんや大学生はもちろんのこと、
大学関係者もぜひ参考にされたい取り組みである。

色々な意味で勉強になりますよ。


平成28年2月9日

杉岡 秀紀 記
  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月08日

【書評】下村博文『世界を照らす日本のこころ』

下村博文『世界を照らす日本のこころ』IBCパブリッシング、2015。

http://www.amazon.co.jp/世界を照らす日本のこころ-下村-博文/dp/4794603215/

皆さんは伊勢・熊野・那智すべてに行かれただろうか?(私は恥ずかしながら熊野だけまだ未経験)

今年は周知のとおり、伊勢サミットが開催される年。
すなわち伊勢が世界から注目される一年である。

1995年に起こった地下鉄サリン事件含め一連のオウム真理教による数々の犯罪により、
わが国では宗教アレルギーが広がった。

しかし「私は無宗教です」という人でも、七五三や初詣含め神社には参拝に行ってたりする。
それだけ神道というものが日本人にとって、いわば「当たり前の存在」になり得ている証左である。
2011年の東日本大震災以降は、さらに自然への畏敬の思いからか、伊勢神宮への参拝客が増えているという。
20年に一度の遷宮もこれに拍車をかけた(ちなみに遷宮は京都の上賀茂神社や下鴨神社でも執り行われている)。
とかく、日本人にとってはお伊勢さんへの「お陰参り」はもはや「風習」に成り得ていると言ってよいだろう。

ところで本書は、時の文部科学大臣であった下村博文氏による

「伊勢・熊野・那智紀行記」

である。

しかし、単なる日記や体験記ではない。
どちらかと言えば、日本人としてのルーツ探し(確認)の旅本に近く、
教育政策に人生を捧げる下村氏ならではのいわば「日本人論」「教育論」にも見える。

当然、本人が自ら書いているように「国粋主義」的な日本の良さの押しつけ本では全くない。
また「日本に京都があってよかった」とか「クールジャパン」みたいな自らの価値自分で宣伝するようなものでもない。

章立ては以下のとおりである。

第1章 伊勢神宮〜自然との共生
第2章 熊野大社〜世界との共生
第3章 那智大社
第4章 21世紀を生きるすべての日本人へ

実にシンプルな構成である。

それぞれの訪問時の写真があるのも親しみやすい。

キーワードはたくさんあるが、「多様性の受容」と「共生の思想」この2つを紹介しておく。

いわずもがな、これこそがわが国、また日本人の強みでもあると言えよう。


いずれにせよ、こうした重要な視点を忘れがちになるからこそ、我々は時々神社に引きよせられ、
祈ったり、願ったり、感謝を捧げたりするのだろう。

「かがみ」から「我」を抜くと、「かみ」になるという説明には思わず納得である。

というわけで、内容はお読み頂いての楽しみとして、せっかくの機会なので、
本書をさらに面白く読むためにお薦めの書を以下に列挙しておきたい。

時間があれば、ぜひ併せ読みを!

①村田智明『ソーシャルデザインの教科書』生産性出版、2014
→ソーシャルザインとしての式年遷宮に注目した一冊。
target="_blank">http://www.amazon.co.jp/「ソーシャルデザイン」の教科書-村田-智明-ムラタ・チアキ/dp/4820120263/

②所功『伊勢神宮』講談社学術文庫、1993
→式年遷宮も含めお伊勢さんの歴史についてまとめられた一冊。
http://www.amazon.co.jp/伊勢神宮-講談社学術文庫-所-功/dp/4061590685/

③司馬遼太郎『対訳 21世紀を生きる君たちへ』朝日出版社、1999
→国語の教科書にも掲載された司馬遼太郎の遺書的メッセージを収録した一冊
http://www.amazon.co.jp/対訳%E3%80%8021世紀に生きる君たちへ-司馬%E3%80%80遼太郎/dp/4255990522/


下村大臣時代の政策で誤解(?)を生んだ「文系学部の廃止通知」だけは大学人としても残念だったが、
本書は素晴しい内容であった。日本語以外の言語に翻訳されているという意味も納得。

平成28年2月8日
杉岡 秀紀 記

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:00Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月07日

【書評】塚本亮『99%の人がしている悪い習慣を捨て、たった1%の成功者になれる本』

塚本亮『99%の人がしている悪い習慣を捨て、たった1%の成功者になれる本』アスカ出版、2015。

http://www.amazon.co.jp/99%25の人がしている悪い習慣を捨て、たった1%25の成功者になれる本-アスカビジネス-塚本-亮/dp/4756918085/

塚本君は大学の後輩で、現在日本とイギリスをつなぐ社会起業家である。

出会いは私がお世話になっている某商工会の方からの紹介で、彼がまだ英国から帰国して間もないころであったように思う。

塚本君は京都出身で、高校時代は少しヤンチャだったようで、当時の偏差値は30台。
つまり、今回の本で言えば「99%」の部類に入っていた。
(この当たりの話は彼の処女作で紹介されている)

しかし、そこから奮起して同志社大学経済学部に入り、さらに学びたい好奇心が高じ、
海を渡り、英国の最高峰の一つケンブリッジ大学に入学。

さらにそこでは心理学を学び、日本に帰国してから、就職ではなく「起業」という選択肢を彼は選んだ。

そして、瞬く間にその面白いキャリアや彼が持っている知識やノウハウと社会のニーズが合い、
本を出版するまでに至る。

つまり、本書でいう「1%」とはまさに自ら実践された塚本君自身でもある。
しかし、自らが実験台なだけにとてもリアルかつ説得力がある。

章立ては次のとおり。

・チャプター1:悩みから自由になるために捨てる12の悪い習慣
・チャプター2:強い自分になるために捨てる10の悪い習慣
・チャプター3:ラクな人間関係をつくるために捨てる11の悪い習慣
・チャプター4:もっと成長するために捨てる8の悪い習慣
・チャプター5:自分らしく活躍するために捨てる11の悪い習慣

基本的には本書は彼が心理学を通して学んだことや好きな言葉を紹介する形式を取っているが、
その背景には自らの体験や経験、あるいは自らの戒めというものがあり、J・デューイで言う

「経験による学び(Learning by Doing)」

が詰まった本と言える。
いわゆる自己啓発本とは似て非なるものである。
また、心理学の学術書のような研究本でもない。
(もちろん、心理学に興味のある方が入門書として読むのもあり)

しいて言えば「数学の公式集」のようなものであろうか。

ともあれ、こうしたいわば心理学を軸にした「ヒント」を活かすも殺すも自分次第である。

当然のことながら、「いま」読んでも響かないものある。

しかし、心の引き出しの奥の方に留めておくだけで、いつか使える「ノウハウ集」でもあると思う。

困った時はもちろん、まずは困る前に一読しておきたい、そんな一冊であった。


平成28年2月7日

杉岡 秀紀 記







  

2016年02月06日

【書評】山崎亮『ふるさとを元気にする仕事』

山崎亮『ふるさとを元気にする仕事』ちくまプリマー新書、2015。

本書は高校生や大学生を対象に書かれたコミュニティーデザインの入門書である。

出版社の特性もあると思うが、本書の175〜183頁に山崎氏の本音と言うか思いが綴られている。


「コミュニティデザイナーに資格はありません。なりたければ誰でもなれます」(175頁)
「社会人よりも学生のほうが、一からコミュニティーデザインを学ぶのには適した環境にあると言えるかもしれません」(183頁)


山崎亮氏の著作は沢山あるが、高校生や大学生にターゲットを絞って書かれたものはこれまでなかった。その意味でこれまでの著作と内容は重複する部分も多かったが、視点、切り口が新鮮であった。

本書の章立ては以下の通りである。

第1章 ふるさとは最前線
第2章 ふるさとを元気にする仕事
第3章 自分の未来をどう描くか
第4章 これからの働き方
第5章 ふるさとを元気にする人

本書のねらいから言えば第3章と第4章あたりから読むのも良いかもしれない。

また本書のタイトルに即したイメージをまず欲しければ、第5章から読むのもお勧めする。ちなみに第5章は京都府綾部市から半農半Xを提唱する塩見直紀さんや私が尊敬する徳島県神山町の大南信也氏が登場する。

という訳で内容を全て書いては、読んでもらう楽しみを奪ってしまうので、私が響いた言葉を下記に記し、書評に代えたい。

「ふるさとを変える、ではなく、ふるさとが変わる(ことが大事)」

「僕らが考えるべきは、資本主義的なシステムに振り回されない働き方と、個人主義的な価値観に惑わされない生き方の実践」

「スタジオという言葉は、イタリア式庭園に作られた、好きなものに囲まれて過ごす部屋のことを指す」

「レクリエーションはre-creation。創造性の再生」

「参加なくして未来なし、楽しさなくして参加なし」

最後に。

山崎氏も若い頃は読書が苦手であったことを本書で吐露している。と同時に読書の重要性についても強調している。

将来の夢や目標を定めるのは簡単ではないが、山崎氏のように楽しく、ワクワクして仕事をしたいと思ったら、まずは時間がある時に読書から入ったら良いと思う。

読書はきっと仕事を、人生を豊かにしてくれるはず。


平成28年2月5日
杉岡 秀紀 記


  

Posted by 杉岡 秀紀 at 14:30Comments(0)大学生に薦めたい一冊

2016年02月05日

【書評】円城寺雄介『県庁そろそろクビですか?ー「はみだし公務員」の挑戦ー』

円城寺雄介『県庁そろそろクビですか?ー「はみだし公務員」の挑戦ー』小学館新書、2016。

http://www.amazon.co.jp/県庁そろそろクビですか-「はみ出し公務員」の挑戦-小学館新書-円城寺-雄介/dp/4098252570/


「県庁」から始まる小説やドラマとしては、これまで『県庁の星』や『県庁おもてなし課』というのがあった。
その流れからすれば、ある意味で「3部作」に位置づけられるかもしれない。
しかし、一番の違いはその2つはいずれも「小説(フィクション)」が前提となっているのに対し、
今回の県庁シリーズは完全に「ノンフィクション」であること。したがって、リアリティが違う。
逆にその部分が本書の最大の魅力である。

サブタイトルは「はみだし公務員」。この文脈で言えば、今度は「スーパー公務員」や「地域に飛び出す公務員」「地域おこし協力隊」などを想起される方が多いだろう。
しかし、本作はそうした言わゆる「飛び抜けてすごい公務員」ともちょっとイメージが違う。

著者は私の2つ上でまだ37歳。役所の中では決して若くはないが、ベテランでもない中堅層。
退職までに平均10くらいの部署を経験すると言われる公務員の世界においてはまだ「4つ」しか部署を経験しておられない、
ある意味「これからの方」である。

しかし、本書を読んだらすぐに分かるが、円城寺氏のすごさは何と言っても

「現場力」。

この力は40年役所にいれば自然と身に付くものではなく、生まれもってのものではない。当然仕事へのポリシーみたいものも影響してくる。その意味にはおいては、土木部署然り、農林系部署然り、職員研修部署然り、そして医務部局然り、円城寺氏がこれまでの部署、すなわち現場で身につけた力というのは、たとえそれが

「これからの人のこれまで」

だけだとしても、いま本にするに値うる実績である。

具体的なエピソードについては、本書に譲るとして、ここでは円城寺氏のキラリと光る考え方やポリシーを紹介しておきたい。

・「従来の組織の中に取り込まれた個人」から「組織からはみ出し、主体性を持って行動し成長することで組織内外に貢献できる個人」へ」
・現場を必ず自分の目で見てから物事を進める。
・発想を変え、やり方を変えれば法律やルールを変えなくてもできることもある。
・リード・ザ・セルフ。他人をリードするのではなく、自分をリードする。
・小さなことから始める勇気。
・始めたことを大河にする根気。
・枠にとらわれずに考える。
・イノベーションに成功するには焦点を絞り、単純なものにしなくてはならない。
・人が本当に動くときは「共感」が動いた時。
・イノベ―ションは自ら起こしたイノベーションにより陳腐かする。
・アイディアのいい人は世の中たくさんいるが、いいと思ったアイディアを実行する勇気のある人は少ない。
・「通訳者」がいるかどうかは外部人財活用の大きな成否を分ける。
・大切なことは、知識ではなく、学ぶ地下来、自分を成長させる力。


ともあれ、円城寺氏のような公務員が増えれば、わが国の地域ももっと面白くなるであろう。もちろん同じことをやってもダメであるが、この考え方や熱意はぜひ感染して欲しい。

公務員を目指す人、公務員成り立ての人、公務員になったが少しくすぶっている人はもちろん、公務員と関係ない方でもイノーベーターに興味がある方にはぜひ読んで頂きたい一冊。

ちなみに表紙は、漫画家の江川達也氏。





平成28年2月4日

杉岡 秀紀 拝

  

Posted by 杉岡 秀紀 at 00:19Comments(0)大学生に薦めたい一冊